「無垢なる邪気が蔓延している怖さに大人はビビります。」イノセンツ 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
無垢なる邪気が蔓延している怖さに大人はビビります。
映画館で予告編やポスターを見てから興味が湧き、大友克洋のあの「童夢」からインスピレーションが湧いたとなれば俄然に観たくなるのは当然。
楽しみにしていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…ヤバい。こればヤバいぞ。
関西で観たから関西弁に直すとアカンやつですわ。
ポスターからして妖しさプンプン。
ノルウェーを舞台にしているだけで怪しい雰囲気が漂うのに終始ヒタヒタと妖しくもそこはかとない儚さが同居していてヒヤッとする。
サイキックスリラーと言う括りにはなるけどサイキックスリラーと言うとなんか薄っぺらく感じるけど、まさしくその通り。
大友作品には数多くのクリエイターが影響を受けてるがこの作品はきっちりとその感化を昇華している。
北欧のスリラー系作品と言えば、近年では「ミッドサマー」が代表格で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「ギルティ」なんかがありますが、怪しくも美しくそこはかとない冷たさが漂うようなイメージ。
決して派手ではないけど淡々と怖さを醸し出しているのが癖になるんですよね。
他の人の感想でも言われているが無邪気な悪意と言うか無垢なる邪気がある意味「無邪気」で物凄く怖い。
悪意無き悪意と言うのは大人の世界でよく言われる自身の正義を振りかざした行為になるが無垢なる邪気は純粋だけにタチが悪いし、ストレート。
この無垢なる邪気と言う表現がホントピッタリです。
またメインとなる子供達の演技も抜群で4人がそれぞれにキャラが確りと立っていて、配分も絶妙。
特に自閉症のアナ役の女の子の演技はめちゃくちゃ良い感じです♪
イーダ役の女の子を見たときに2000年に公開され話題となった「ロッタちゃん はじめてのおつかい」を思い出した。…あっ!?あの作品も北欧映画だわw
猫のシーンは正直踏み込み過ぎな感があるけど、ここから一気に無垢なる邪気感が浸透していく。
猫好きには目を(耳を)覆いたくなると思うけど、このシーンをよくぞ入れたと思います。
個人的には「異端の鳥」を思い出した。
あの作品も賛否両論があるけど、観る側を刺激するフックポイントが設けられていて、それだけにとどまらない映像美があるので物凄く印象に残っているんですよね。
終始目が離せない怖さがあるんですが、ラスト手前の髭の男性がイーダ達父娘の後に続いて団地の中に入ろうとしたのはベンに操られていたからかと思うんですが、その後の回収が無いのでちょっと?が付くのが惜しい。
子供達の中に蔓延る特異な力が蔓延していき、それによって起こる様々な事件に大人が誰も気付かない。
それがまた日常的になっているのが怖いんですよね。
作品的にはM・ナイト・シャマラン監督なんかの作品に雰囲気が似通ってますが個人的には数段上。
シャマラン監督もこれぐらい抑えるところは抑えて、踏み込むところは踏み込んで欲しいですw
無邪気とは「ねじけた所の無く、素直でなんの悪気もないこと。 また、そのさま」と書かれてますが、この作品にはその意味合いを真逆ですが、違う意味で無垢なる邪気=無邪気な作品。
「童夢」や「ミッドサマー」が大好きな人なら絶対ハマると思うし、とにかく妖しい作品好きにもピッタリw
派手な演出を抑えた寡黙な怖さが秀でた作品でめちゃくちゃお薦めです♪