「力技?大歓迎。」名探偵ポアロ ベネチアの亡霊 がばちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
力技?大歓迎。
ホラー映画が好きだ。しかし苦手だ。
好きだけど、怖いのは嫌だ。
物陰からワッと飛び出すと、心臓がギューッとなる。
それからミステリー映画も好きだ。
小学生の頃、図書室に通って夢中になって乱歩を読みあさった。明智探偵と小林少年の活躍に胸を躍らせ、各種孤島で繰り広げられる阿鼻叫喚にワクワクするピュアな子供だった。
だが、40年の歳月は、そんな純粋だった少年を、犯人や結論を邪推して、へん、どうせアレがこうなってああなるんでしょハイハイ、みたいな嫌な大人へと変えてしまった。
さあ、そこで前述のホラー要素だ。
この作品は、スプラッタ要素こそほぼない物の、ゴシック調の舞台装置に、びっくり箱的おどかしホラー要素が詰まった構成になっている。
つまり、物語が進行するとともに、いつ来るかわからない恐怖に身構える必要があり、そのため思考回路も著しく劣化、嫌な邪推をする暇なんてあるわけがないのだ。その時の私は、まさしくあの頃の純粋なドキドキ(というかバクバク)を胸に、作品を真正面から受け止め凝視していた。怖かったから薄目で。
こうなって来ると、時たま現れる力技な展開も、むしろありがたくなる。SNSなどで有り難がれる緻密な伏線や整合性を提示された所で、とてもじゃないが色々追いつかない。それを思えば、今シリーズのそれはなんとも絶妙ではないか。
40台半ばの少年の目に映るクライマックスのポアロさんは、カッコよくて痛快だったし、エンドロールに向かう際のBGMはこの上ない癒しとなって、張り詰めた心臓を解きほぐしてくれたのだった。
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