「東南アジアを舞台にした、近未来SF大作」ザ・クリエイター 創造者 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
東南アジアを舞台にした、近未来SF大作
監督は『モンスターズ/地球外生命体』『GODZILLA』のギャレス・エドワーズ。
音楽に『インターステラー』のハンス・ジマー。
【ストーリー】
2055年、AIの暴走により、ロサンゼルスで核兵器が使用された。
西側諸国はAIを脅威とみなし、すでに社会に広がり人類のパートナーとして存在していた彼らを、武力をもって排除に動く。
しかし太平洋〜インド洋のアジア地域は"ニューアジア"として、AIたちの巨大な生活圏となっていた。
ニューアジアには「ニルマータ」と呼ばれるAIの開発設計者がおり、高度なAIを生産していたのだ。
米軍はニルマータを排除すべく、周回軌道に巨大な攻撃基地NOMADを建設し、AIを発見しては攻撃して破壊——殺害していた。
10年の月日が経った。
アメリカ陸軍のジョシュア・テイラーは極秘作戦で、妻マヤとニューアジアに潜入していた。
彼女はテイラーの密命を知らず、二人は幸せな日々をすごしていたが、自宅が攻撃を受けた際に軍に連絡を取り、秘密を知ってしまう。
妊娠していたマヤは、テイラーを信じられなくなり、家を出たが、そこをNOMADに待ち伏せされて殺害されてしまう。
さらに5年が経った。
テイラーはマヤを喪った失意の中、核攻撃地点"グラウンドゼロ"で、清掃作業員としてはたらいていた。
そこに米軍アンドリュース将軍とパウエル大佐があらわれ、妻・マヤが生きている可能性を提示して、テイラーにニルマータが新たに生み出した兵器「アルファ・ゼロ」の捜索を提案する。
危険な敵地潜入任務となったが、テイラーはどうにか生きながらえる。
彼はそこで、一人のAIの少女と出会った。
それが、新兵器アルファ・ゼロ。
テイラーは任務のため、彼女に「アルフィー」と名づけ、ニューアジア脱出をこころみる。
だがどこにいっても二人は手配されていた。
どうにか現場指揮官に連絡をとるが、即座に受けた命令は、アルフィーの殺害だった。
「その兵器はNOMADを破壊する力がある。すぐに破壊しなさい」
近年、アジアのSFがアメリカで受けてまして、主要なSFの賞を獲ったりしてます。
その流れからか、この映画の舞台もタイやベトナム、そして本邦と、ハリウッドでは見かけないロケーションが用意されてます。
物語の構図自体は単純で、悪辣な政府組織 vs はみ出し者の現地工作員の反抗という、エンタメの基本テンプレをなぞったもの。
AIはデジタル的存在ではなく、人間型のボディに搭載された、感情移入しやすい外見。
ありがちですが、反面手がたいストーリー構造となってます。
この映画の売りは、斬新で創りこまれた世界観。
東南アジアの水耕地帯に、人間そっくりだけど、明らかに別物の存在AI、というかアンドロイドたちが住む地域があって、昔ながらの生活と超巨大建造物がそこに同居している、生活感とSFガジェットの融合。
かなり徹底して細部を詰めることで、物語の説得力を高めています。
そして軌道上から光学サーチしてくる、圧倒的な超超巨大攻撃兵器NOMAD。
見た瞬間から絶望しかない、恐怖の象徴として描かれています。
音楽はハンス・ジマー。
子供たちの乗るバスに同乗したシーンでは、逃亡の緊張のさなかなのに、ゆかいな曲が流れてて、全体おもしろい試みがされています。
ストーリーはツボをついていて、アクションもそつなく迫力があり、そして舞台背景は細かいところまで非常に凝った、作りのいいSFアクションスリラー。
田園地帯とメカのギャップも目に新しく、自信をもってオススメできる作品です。