「アジア色強めの「ブレードランナー」」ザ・クリエイター 創造者 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
アジア色強めの「ブレードランナー」
この様なオリジナルSFが世に放たれると嬉しく思う物だが、ギャレス・エドワーズ監督のこだわりが感じられるこの作風で更にテンションが上がる。「ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー」や2014年版の「GODZILLA ゴジラ」等の「金のかかった映画」でおなじみの監督だが、フランチャイズ化という縛りが無い本作は彼の真骨頂、節約映画製作が思う存分体験できる。それにはデビュー作、「モンスターズ 地球外生命体」が要チェックになってくるが、本作はその当時の面影と、ハリウッド大作で得た技術のハイブリッド版、何とも豪華な作品である。それでも本作の製作費は約80億円。桁1つ違うのではと思うほど破格の金額である。
AIが人を敵とみなす社会像は過去何度も描かれてきた為、設定自体に斬新さは無いが、良い意味で他作品のいいとこ取りな印象を受けた。どうしても「ブレードランナー」は避けて通れないし、人間が悪く描かれている点は「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の様だし、映像表現は「ローグ・ワン」の様であり、映画オタク臭プンプンの物語である。それは登場するガジェットの数々でも感じることができ、メカ好き、ロボ好きにはたまらないものがある。
テーマとしてはヘビーSFなのだが、心に傷を抱える主人公がターゲットとしていた兵器たるものが子どものAIであり、(男なのか女なのかが分からなかったが)徐々に情が湧いていつしか命を守る為に戦うという誰でも理解できる分かり易いものであり、SFに抵抗がある人でも観やすいのもポイントである。
日本好きの監督の計らいなのか、エンドクレジットにカタカナ表記があったりなど、アジア色が全面に押し出されているのも最近のハリウッド映画のあれこれを体現している様にも思う。ひと昔前はハリウッド映画にアジア要素を入れるとコケるというジンクスがあったが、近頃はまた変わってきているのだろう。リドリー・スコット監督の代表作で、今でこそSFを語る上では見逃しNGな「ブレードランナー」だが、公開当時は興行的には厳しいものだったというのも有名な話だが、(ブレードランナー2049もそうだったが)もしかしたら本作も同じ運命かもしれない。だが間違いなく名前が残る作品になるはずである。リアルタイムで観れたことには感謝したい。