「Clair de lune(クレール ドゥ リュンヌ)」ザ・クリエイター 創造者 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Clair de lune(クレール ドゥ リュンヌ)
ギャレス・エドワーズ監督の好きなモノをギュッと押し込んだ作品の出来である 多分、色々な理屈付けがあるのだろうけど、ギーク気質の監督の本領発揮といったところだろうか 画作りのオマージュもさることながら、レビュー題名のドビュッシー代表作を含めて♪Fly Me to the Moon♪等々を挿入してくる辺りは、SF映画やアニメで使い尽くされたお馴染みの楽曲といってもよい そんなところにも拘りを分り易く散りばめている衒いの無さがこの監督の愛される理由なのかもしれないと今作を鑑賞して感じ至ったのである
そんなことで、新たな提言やステージアップの具現は今作では為されておらず、どこか既視感のあるストーリーテリング、又は演出のオンパレードだが、却って鑑賞者に心地よさや違和感の無さを感じさせるのは、『カインドネス』の精神が作品全体に漂っているのではないだろうか ロボットが人間の敵と仕立てたい側(隠蔽側)とその敵とされた側との闘いの中で、"神の手"の如き、スイッチのオンとオフを切り分けるAIを奪い合うコンセプトは、突飛でもなんでもなく、物語の構成としてはオーソドックスである 但し、他のSFとの相違点は、人間とロボットの共存世界をこれ程迄に自然にスムースに配置され動いている点であろう それは人間に模した造形のロボットだけでなく、所謂剥き出しのパーツの造形で表現されているロボットも表情に現れる位の演技が施されている事に驚くのである ここまで浸透している世界観を演出出来た事を称賛したい
一寸気になったシーンが一つ アメリカ側要塞(ノマド)内にてクライマックス前の女の子を救出ポッドから排除しようとする触手みたいなロボット(マトリックスで言うところのセンチネル)から助けようとして主人公が触手に捕まって藻掻いているシーンが、まるでパペットアニメ(ストップモーションアニメ)のような動きをしていたのだが、あれはクオリティをワザと落としたのか、それとも本当に下手だったのか、兎に角ナチュラルな映像の連続の中であのシーンだけ違和感を感じてしまった もしワザとならば、これ又監督のニクいオマージュなのであろうw
何故敵側の倉庫にマザーの模造のロボットが大量に保管していたのか、色々と説明不足の点も否めないのだが、伏線として墜落瞬間に主人公の夢が叶うというオチは、擦られすぎたとは言えカタルシスは否定しない あれを鼻白んでいたら、折角のオリジナルSF映画の灯が消えてしまうのだから・・・
沢山の"遺産"をパッチワークした今作は、その抽出の精神が"愛情"という一心で作られている事に、紛うことなき心情と捉えられる、嘘偽りない心根を感じ取った良作であった
PS.祈っている間はOFFになり、止めたらONに戻る"STAND BY"というアイデアを発見したのも今作品の白眉であろう そこからのシーン展開の巧妙さ(女上司の後ろに時限爆弾を打ち込まれ、それを女の子が停止させようとしたのに、上司の味方の発砲を止めようとして却って祈りを止めさせてしまいスタンバイが戻ってしまっての暴発の件)に唸ったのである