「ベトナム戦争のメタファーか。」ザ・クリエイター 創造者 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
ベトナム戦争のメタファーか。
作品的には「ローグワン」の焼き直し的な印象かな。ノマドはどう見てもデス・スターだしね。ただ、本作はアメリカを徹底的に悪として描いてる点は好感が持てる。
本作はどう見てもベトナム戦争やイラク戦争のメタファー。実際に監督はベトナム戦争を題材にしたSF映画を撮りたいと述べていた。
アメリカの都合で対共のためにベトナムや朝鮮半島を代理戦争の地として利用し彼らの国を焦土にして、あげくの果てには大義もなくイラクに侵攻をかける。あのノマドがどこにでも侵攻してきてミサイル攻撃する姿はまさにアメリカの姿そのものだった。
AIはアメリカにとっての脅威だった共産主義者。そのAIとともに戦う人類は北ベトナムあるいは北朝鮮の人々。だからこそ本作の舞台をベトナムに設定したのだろう。執拗なまでにAIを殲滅しようとするアメリカ人の姿は赤狩りに狂った当時のアメリカ社会を想起させた。
AI基地が村の地下にあるため、兵隊が村人の子供を脅して基地の入り口を吐かせようとするシーンなんか、まんまベトナム戦争。またAI側のアンドロイドがアラブ系の顔だったりするから、これもどうみてもイラク戦争を皮肉っている。自爆テロを連想させるロボットをアメリカ側が使うのはちょっと悪ノリし過ぎだけど。
終盤、シャトルを乗っ取りノマドに向かうシーンは9.11を思い浮かべたけどさすがにそれはないか。まあ、メタファーとしてはちょっとわかりやす過ぎだけどね。
ちなみに昏睡状態のマヤに記憶チップを差し込んでほかのアンドロイドに移すことをなぜ今までしなかったのかは言いっこなし。
ターミネーターをはじめ、AIを描いた作品はどれも怖い話ばかりだが、スピルバーグの「A・I」みたいに人の心を持ったAIや「2001年宇宙の旅」のようにAIが人間並みに進化して精神疾患を患ってしまう話なんか観てると希望も見出せる。人間と同じように進化して心があるのなら、人間とAIは互いに分かり合えるはずだし、愛し合えるはずだろうからと。
AIの存在する未来に希望が持てる作品。