ザ・クリエイター 創造者のレビュー・感想・評価
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死はどこへと繋がっているのだろうか?
人間が「死」の存在に気づいて以来の未解決問題である。
人類が誕生して以来、この問いに答えを得た者がいるのだろうか。
AIと人間の戦いを描いた本作ではあるが、ここに登場するAIは、もはやターミネーターのようなものではなく愛という複雑な感情ですら搭載され文化をも築いている。そして、そのAIもがたどり着いた「死」のその先はどこなのか。
彼らも「オフ」のその先が未解決問題なのだ。
人間もAIも孤独であれば「死」や「オフ」のその先など気にしなくてもいい。愛する世界や愛する者があればこそ、別れがたいものがあればこそ「その先」が気になるのだ。
おもしろいと思ったのは、クリエイター創造者であるマヤが運び込まれていたのはチベット仏教寺院のような場所だった。仏教では人の創造を語っていないのに。
そして母なるマヤの元で「誕生」した救世主アルフィー。ある意味無原罪のお宿りよね。
ここで「なんのために生まれ、なんのために生きていくのか」という生命体全てへの問いかけも出てくる。まさに「死」を考えると「生」を考えることになる。メビウスの輪のようだ。
人はいつか死ぬことを理解して生きていく。
でももし、死なないとわかったらどう生きて行くのだろうか。
「記憶の中にある大好きなSFアニメ」の最高の実写化
ギャレス・エドワーズが、大好きな映画『モンスターズ/地球外生命体』のゲリラ撮影スタイルに立ち返り、中二感あふれる青臭いSFを全力で撮った。既視感のある物語ではあるけれど、ギャレス自身が筋金入りのオタクであり、「記憶の中にある大好きなSFアニメ」を実写化するような気持ちで作ったんじゃないだろうか。
AIが自我を持つシンギュラリティ以降を描いた近未来SF、という体裁だが、この映画のAIたちは、わりと慌てた動きをすることからも、ほぼ人間と同じだと考えていい。ギャレスのインタビュー記事を読んでいたら「AIがまだ自我や感情を持ってないといいな。人類はAIを奴隷扱いしてるから」みたいなことを言っていて、ああ、これこそがギャレスという映画作家の本質ではないか、と思った。
つまり、イギリスの特権的な白人男性である事実はさておいて、どうしてもマイノリティである他者に感情移入してしまうような。それが人間のマイノリティだけでなく、『モンスターズ』の宇宙生物や本作のAIにも適用されてしまうような。
その意味では、科学的SFではまったくない。イメージとエモーションとノスタルジーを駆使して、とことん弱いものに肩入れしたい!という無邪気さは、「この話は主人公は黒人男性でも白人救世主と同じ構図ではないか」という批判にも繋がると思うのだが、それでもなお、やっぱりギャレスの無邪気な判官贔屓に好感を持たずにはいられないのである。
壮大かつ緻密にデザインされた近未来の神話
ギャレス・エドワーズは我々が触れたことのない静かなる驚きの映像世界を展開させる人なのだと改めて思い知った。とりわけ本作は舞台となる近未来を断片的に垣間見せるのではなく、地球規模で壮大かつ緻密にデザインし、今すでにAI技術の転換期の隣り合わせにある我々に「手の届きそうな距離のリアリティ」として実感させてくれる。それでいて悲観的なビジョンばかりを提示するのではなく、深い感情や体温で満たされたエモーショナルな物語を根付かせていることが極めて尊い。数々の名作映画の影響を感じる一方、それ以上にエドワーズの過去作を思い起こす瞬間も多かった。実写と特殊効果を生々しく融合させた『モンスターズ』、人間の理解や常識を超えて”生命体”を広く見つめた『GODZILLA』、一つの使命を繋ぐため身を捧げる『ローグ・ワン』という旅路を辿ってきたからこそ、この作品は今、まさにキャリアの集約地のごとく産声を上げたのだろう。
話が入ってこない
期待していたものと違った
終盤やっと理解出来てきた
米国映画ではAIは敵と描かれがちだったが、そうでなかったのことを新鮮に感じた。
ギャレス・エドワーズ(英国出身)原案・脚本・監督による2023年製作(133分/G)のアメリカ映画。
原題または英題:The Creator、配給:ディズニー、劇場公開日:2023年10月20日。
前半は少し退屈であった。後半、物語の焦点が主人公ジョン・デビッド・ワシントとAI少女の親子?愛であることが明確となり、面白みを感じた。
そしてこの映画は、AI少女アルフィーの可愛らしさに完全に依存していると思うが、マデリン・ユナ・ボイルズの表情・演技がお見事で、心を惹きつけられるものがあった。彼女を含めたAIたち(渡辺謙演ずるハルンも)が良い心を有していて、それらを抹殺しようとする米軍が悪役というのも、驚きと共にかなり印象に残った。米軍女性指揮官を演じたアリソン・ジャネイの冷酷なキャラクター設定もかなり意外で、印象に残った。
前から見ると普通に人間だが横から見ると耳から後ろが抜けて明らかに人工物と分かるヒト型AIのデザインが、とても秀逸と唸らされた。東南アジアが舞台のはずだが、なぜか漢字の看板が登場し明らかに日本(新宿と渋谷だとか)と思われる場所で、撮影が行われていたのが面白い。ゴジラ映画を監督し、日本のアニメや映画から大きな影響を受けたらしいエドワーズ監督のこだわりは、感じさせられた。
監督ギャレス・エドワーズ、製作ギャレス・エドワーズ 、キリ・ハート、 ジム・スペンサー、 アーノン・ミルチャン、製作総指揮ヤリフ・ミルチャン、 マイケル・シェイ、ファー ナタリー・レーマン 、ニック・メイヤー 、ゼブ・フォアマン、原案ギャレス・エドワーズ、
脚本ギャレス・エドワーズ 、クリス・ワイツ、撮影グレイグ・フレイザー、美術ジェームズ・クレイン、衣装ジェレミー・ハンナ、編集ハンク・コーウィン 、ジョー・ウォーカー 、スコット・モリス、音楽ハンス・ジマー、音楽監修ゲイブ・ヒルファー。
出演
ジョシュアジョン・デビッド・ワシントン、マヤジェンマ・チャン、ハルン渡辺謙、ドリュースタージル・シンプソン、アルフィーマデリン・ユナ・ボイルズ、ハウエルアリソン・ジャネイ、シミュランツアマル・チャーダ=パテル。
東南アジアを舞台にした、近未来SF大作
監督は『モンスターズ/地球外生命体』『GODZILLA』のギャレス・エドワーズ。
音楽に『インターステラー』のハンス・ジマー。
【ストーリー】
2055年、AIの暴走により、ロサンゼルスで核兵器が使用された。
西側諸国はAIを脅威とみなし、すでに社会に広がり人類のパートナーとして存在していた彼らを、武力をもって排除に動く。
しかし太平洋〜インド洋のアジア地域は"ニューアジア"として、AIたちの巨大な生活圏となっていた。
ニューアジアには「ニルマータ」と呼ばれるAIの開発設計者がおり、高度なAIを生産していたのだ。
米軍はニルマータを排除すべく、周回軌道に巨大な攻撃基地NOMADを建設し、AIを発見しては攻撃して破壊——殺害していた。
10年の月日が経った。
アメリカ陸軍のジョシュア・テイラーは極秘作戦で、妻マヤとニューアジアに潜入していた。
彼女はテイラーの密命を知らず、二人は幸せな日々をすごしていたが、自宅が攻撃を受けた際に軍に連絡を取り、秘密を知ってしまう。
妊娠していたマヤは、テイラーを信じられなくなり、家を出たが、そこをNOMADに待ち伏せされて殺害されてしまう。
さらに5年が経った。
テイラーはマヤを喪った失意の中、核攻撃地点"グラウンドゼロ"で、清掃作業員としてはたらいていた。
そこに米軍アンドリュース将軍とパウエル大佐があらわれ、妻・マヤが生きている可能性を提示して、テイラーにニルマータが新たに生み出した兵器「アルファ・ゼロ」の捜索を提案する。
危険な敵地潜入任務となったが、テイラーはどうにか生きながらえる。
彼はそこで、一人のAIの少女と出会った。
それが、新兵器アルファ・ゼロ。
テイラーは任務のため、彼女に「アルフィー」と名づけ、ニューアジア脱出をこころみる。
だがどこにいっても二人は手配されていた。
どうにか現場指揮官に連絡をとるが、即座に受けた命令は、アルフィーの殺害だった。
「その兵器はNOMADを破壊する力がある。すぐに破壊しなさい」
近年、アジアのSFがアメリカで受けてまして、主要なSFの賞を獲ったりしてます。
その流れからか、この映画の舞台もタイやベトナム、そして本邦と、ハリウッドでは見かけないロケーションが用意されてます。
物語の構図自体は単純で、悪辣な政府組織 vs はみ出し者の現地工作員の反抗という、エンタメの基本テンプレをなぞったもの。
AIはデジタル的存在ではなく、人間型のボディに搭載された、感情移入しやすい外見。
ありがちですが、反面手がたいストーリー構造となってます。
この映画の売りは、斬新で創りこまれた世界観。
東南アジアの水耕地帯に、人間そっくりだけど、明らかに別物の存在AI、というかアンドロイドたちが住む地域があって、昔ながらの生活と超巨大建造物がそこに同居している、生活感とSFガジェットの融合。
かなり徹底して細部を詰めることで、物語の説得力を高めています。
そして軌道上から光学サーチしてくる、圧倒的な超超巨大攻撃兵器NOMAD。
見た瞬間から絶望しかない、恐怖の象徴として描かれています。
音楽はハンス・ジマー。
子供たちの乗るバスに同乗したシーンでは、逃亡の緊張のさなかなのに、ゆかいな曲が流れてて、全体おもしろい試みがされています。
ストーリーはツボをついていて、アクションもそつなく迫力があり、そして舞台背景は細かいところまで非常に凝った、作りのいいSFアクションスリラー。
田園地帯とメカのギャップも目に新しく、自信をもってオススメできる作品です。
素晴らしい映像美とミスマッチな脚本
ザ・クリエイター/創造者
公開時見たいなと思いながら見れてなかったので、アマプラで鑑賞。
結果から言えば高い金出して映画館で見なくてよかった。
AI側は互いに愛し合う心優しい存在として、人間側はこれでもかというほど露悪的に描かれていて、主人公が心変わりするための舞台装置としか思えなかった。
SFに興味がない人からすれば、王道のアクションとラブストーリーと家族愛をあの綺麗な映像で見られて満足なのかもしれないが、それをあの世界観でやる必要は全く感じられない。
数秒して場面が切り替わると登場人物がいつの間にか距離を移動していたり、物語の都合で動かされてる感がすごい。
それと、そういうものだと理解しているつもりではあったものの、やはり度々挟まる直訳日本語とやけに野太い和風フォントがノイズすぎる。
舞台やロボットのビジュアルは本当に良い、でもそれだけ。もっといい脚本なら後世に残る名作になり得たと思うと残念。
人とAIのラブストーリー…
人と機械の核戦争、ターミネーターを想像したが全く違った。AIがここまで人間性を持てば愛が生まれるかもしれない。この映画は単純に人間対AIを対比しているのではなく、AIと暮らす人間もおり、平和的に共存している。映画ではニューアジアの人々がそう。このあたり、ローグ・ワンを描いた監督らしく、人種的多様性、所々にアジア、タイやベトナム、ネパールを感じるし、とりわけ日本を感じる。渡辺謙のみ日本語で話しているのは違和感があったが。逆に中国は全く感じなかった。罪のない人々を殺戮していく様子は人間が機械的であり、泣き叫び逃げ惑う姿は機械が人間的に感じた。人間の恐ろしさだと思う。他の映画と違い、AIより人間が強いということではなく、弱過ぎるのも若干違和感があった。ミイラ取りがミイラになると言うのは適切ではないが、敵に入り込んだら、そこの良さに気付き、敵側に入るジュシュアはラストサムライならぬラストAIのようだ。アジアの味方だし、渡辺謙いるし。所々違和感はあるものの、斬新なストーリーだった。
見ごたえがあった
ツッコミどころが多い(これはレビューで見る常套句)という意見もあるが、ツッコミどころがほとんどないエンタメ映画があるなら教えてもらいたい。ストーリー展開はありがちな感じだが、主人公に共感させる演出はうまいし、優れたVFXと、スケールのでかいお金のかかってそうな未来像も手伝って飽きずに最後まで見られた。
個人的には切ないストーリーに弱いので、見終わって余韻に浸ることができた。子供のAIがかわいいし、そして切ない。全編で駆使されているVFXも自然で違和感がない。
内容的には、ベトナム戦争やイラク戦争などのように、なんでもかんでも力ずくで思い通りにしようとする現実のアメリカのやり方への皮肉が込められているのかもしれない。
余談だが、『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞の視覚効果賞をとったことが「ハリウッドに並んだ」みたいに受け止められているが、この映画を観ると、やはりお金をかけたハリウッドのVFXは邦画の比じゃないと感じる。
色々と酷い映画
サイエンス・フィクションとして考証や設定が酷すぎる。
脚本も面白みに欠け、ご都合主義で非現実的。
「んなわけねーだろ」の連続で観ていて呆れる。
底流に普遍的なテーマがあるわけでもない。
作り手はAIとの共存とかを込めたつもりか知らんが、余りにちゃちくて消化不良。
何よりアジア人差別てんこ盛り。
東南アジアを主な舞台にしているが、何故か日本が主人公と敵対するAI陣営に加わっている。
中国人には沢山観て欲しいためだろうか。
舞台の東南アジア人は50年経っても現在より文化的に遅れた生活をしている。
敵方の科学力を考えればノマドとか言う空飛ぶ基地なんぞ一発で撃墜されるのが普通。
ちょいちょい過去の作品からの盗用も目立つ。
主人公は黒人、女性指揮官も登場しアメリカ側のポリコレには十二分の配慮をしつつ、どえらいアジア人差別の映画。
ディズニー絡みのSFにはロクなものがない。
渡辺謙も出る作品を選べよ。
悪いのはアメリカ軍でしょ
模造人間シュミラントと呼ばれるAIと米国人の闘いの映画、冒頭、LAが核攻撃されたことになっているが劇中で核爆発は軍のミスだとAIが言っていました、「ターミネーター」はじめロボットの反乱、人類の敵として描かれる映画が大半ですが本作は「ブレードランナー」寄り、一方的に悪とされる模造人間に同情的視点、愛すべき存在に描いていました。
模造人間は米軍の巨大な飛行船ノマドのミサイル攻撃で絶滅寸前、主人公は模造人間を作った博士の娘マヤと恋に落ちた軍人ジョシュアと娘の模造人間アルフィー、前半は死んだはずのマヤを探すジョシュアの潜伏捜査、途中でアルフィーが出てくるが彼はマヤが作った二人の娘とは気づかないままマヤ探しの逃亡劇が続きます。
彼の視点から見れば人類とAIは共存すべき存在、米軍の兵器ノマドを破壊します。マヤとジョシュアの抱き合うシーンは天国ということなのでしょうがちょっと紛らわしかったですね。ディズニー映画だから子供が活躍するのはお約束だろうがアルフィーが可愛いので傷つかないかとハラハラしながら観ていましたが2時間越えはちょっと長すぎますね・・。
激しく考え込んでしまう
この作品にはっきりと見えるのが、価値観の転換点
これもまたLGBT法から波及したものだろう。
この作品の絶妙な部分がLGBT法のように逆差別をしない点だが、逆にこの価値転換をするには戦争のように「決着をつける」必要があるということも、この作品は暗に示している。
人類の歴史とは戦争の歴史であり、争いでは何も「解決」しないというあたかも正論のような概念がまかり通っているが、戦争や内戦が勃発するまでの過程で話し合いや取り決めなどによる「折り合い」は大岡越前の三方一両損のようにはいかず、結局誰も納得できるものではなく、その先にあるのは「決着をつける」以外の方法がなくなるというのが「人類が得てきた教訓」なのではないだろうか?
LGBT法をバックに逆差別し始めた人々
ヴィーガンによる肉を食べる人に対する口撃
シーシェパード…
人類はこれまで「解決」してきたことなど何もなく、すべてが「決着」していただけだということ。
彼らのような逆差別による口撃が戦争のきっかけになっている。
しかし、この脚本の練りこみ方は凄い。
核爆発事故の責任をAIの所為にして、でっちあげたAIの是非の論争が戦争になったという背景はいかにもアメリカ的だが、AIからシミュラントなるアンドロイドを徹底破壊するに至ったのは、その設計においてニューアジアにとてもかなわなかったという背景がある。
西側は近代的に発展しており、都会的 かつ軍の勢力が強いことが伺える。
それに比べニューアジアでは20世紀的な暮らし方だが、農産物の生産にシミュラントが活用されていて、問題発生時に駆け付けるのが警察だ。
ここで監督が仕掛けているのが「正邪論」
誘導的なのは、ニューアジアの風景がアメリカ人にとってはベトナムに見えること。
天才設計士のニルマートと未知なる武器「アルファウォー」を捉えるのがこの戦争の表面上の目標
そのために潜入捜査し、ニルマートの娘マヤと結婚までしたジョシュア
このジョシュアがマヤとの暮らしの中で感じたのが「幸せ」という概念なのだろう。
それが都会生活と田舎生活 ファスト生活とスロー生活の違い。
西側が起こした戦争は、9.11とまったく同じ構造
つまり、自作自演でアメリカが以前からずっとしてきたこと。
ジョシュアのセリフに「人類よりもオレの家族」というセリフがあるが、彼にとって救うべきものが何か、失って初めて明確化したことが伺える。
彼にとっての戦争とは、任務ではなく味方によって襲撃されて家族を失ったことにほかならない。
さて、
タイトルの「創造者」だが、ニルマートだったマヤが胎児をスキャンして創ったアルフィー
彼の名前をジョシュアが付けるという点にも大きな含みを感じる。
それは「祝福」という概念
聖書の神の言葉「私はアルファでありオメガである」
いくつもの含みがある
救世主 神 キリストの再臨 そして新人類の誕生
口の悪い女大佐は、ネアンデルタール人とホモサピエンスを引き合いに出す。
本編には描かれていないが、つまり、新人類は人類を滅ぼす可能性を示唆している。
この物語が「人類」にとってハッピーエンドではなかったのかもしれないという含みがある。
AIの人権と彼らの感情、愛などはプログラムなのか発生したのか?
人の死は基本的に呼吸と心臓が止まることだが、細胞はまだ生きている。
そこから取り出す記憶と意識
この記憶と意識に加え感情があれば、それはもう人間として認めざるを得ないのだろうか?
ジョシュアは何年かの間シミュラントや彼らを人間扱いする人々と暮したことで、アンドロイドと人間という区別をしなくなったのだろう。
加えて彼自身が片腕と片足がブレインマシンインターフェイスになっている。
このことが半身人間、半身機械両方の感覚がわかることを表現している。
彼にとってマヤとお腹の中の子の喪失は堪え難いものだというのもわかる。
両方人間だ。
マヤが創ったアルフィー その作り出す過程から、自分の息子のコピーだというのを理解し始める。
マシンである彼と一緒に戦火を逃れながら情が移っていく。
しかし、それがクローンであればまだしも、機械とAIだ。
ここに視聴者の中に芽生える葛藤がある。受け入れざるを得ないのか、それとも分類すべきなのか?
マヤは生前自分の分身を提供していたことで、ノマドの中にもその一体があった。
これをアルフィーが見つけ、マヤの記憶を移植した。
アルフィーは途中から言葉遣いが女性的になる。
つまりそのメモリにあるのがマヤだ。
アルフィーの中にはマヤの記憶も収められている。
そして天国という概念
ジョシュアの死生観は、この作品において非常に興味深いところ。
このあたりからアルフィーの中のマヤが覚醒し始めている。
肉体よりも記憶と意識と感情
これを持ったAIこそ新人類なのかもしれない。
この物語の示すコピーとは、肉体だけにとどまらず、記憶や意識や感情までも示しているのではないだろうか?
そのマヤの想いは、マヤの肉体をしたシミュラントに自分の記憶をインプットすること。
それはもう一度肉体を持ってジョシュアに再会したいから。
そしてジョシュアとマヤとの感動の再会となった訳だが、そもそもノマドの中になぜたくさんのシミュラントがいたのだろう?
徹底的に破壊するのが西側の目的だったはずだ。
監督はここに自作自演で戦争を仕掛け、そこにある土地や資源を奪ってきた「西側諸国」のやり方を忍ばせた。
大佐がアルフィーを確保させた理由
アルフィーを処分すれば西側が有利になる。
または西側とは人類史における「過去」を表現したのかもしれない。
この部分を同時に表現するという脚本の練りこみ方は凄すぎる。
ただ、
少々納得できない点がアルファウォーで、ジョシュアがアルフィーが「武器」だと見抜いた点、それがアルファウォーだという点を西側と共有するまでの過程を急ぎ過ぎていたこと。
そもそも練りこまれた物語とSFなので、この部分は丁寧に表現してほしかった。
さて、、
昔から教科書に載っている人類の進化の絵
サルから大きなサルへ、そしてたったサル 毛の生えた猿人 武器を持った猿人 ホモサピエンス クロマニヨン人
実際それはは間違いで、アウストラロピテクスからホモエレクトス、ネアンデルタール人、ホモサピエンスは若干の差はあれ同時発生していた。
それが発生であって創造ではないのかもしれない。
この作品の創造主というタイトルは、どうしても神という概念に直結する。
私は、ここがキリスト教世界で切っても切り離せない箇所であり、絶対譲れない箇所だと思うが、もうそこは卒業してもいいんじゃないかなとも思う。
さて、、、
ノマドは地上で崩壊したが爆破炎上していない。
おそらく、
肉体のジョシュアはこの墜落で死んでも、その記憶は復活されるのではないだろうか?
つまりこの物語には先があり、自分のコピーが生き続ける未来
自分を増殖できる未来
従来虐げられてきたことが終焉し、ひと時の平和が訪れるが、この人というものに染みついた争いの種がなくなることなどあるのだろうか?
気の合わない誰かを殺害し滅ぼし、そうして何種類かの人格だけになっていく未来
人類がAIになっても、何だか恐ろしい。
新潟県小出町
日本語や中国語、東南アジアの言語、そこに英語が支配者のように存在する。特にニューアジアの『ブレードランナー』ぽい夜の街にも数々の日本語表記が多くて笑ってしまいそうになったけど、渡辺謙演ずるハルンが双眼鏡を覗いたときにターゲットの「ノマド」という文字が映し出される直前に「小出町新潟県」という文字が出てきてビックリ!渡辺謙が新潟県出身なのは知ってたけど、ここまでギャグをかますか(笑)。尚、小出町は合併により魚沼市となっています。
音楽は壮大なオーケストラ曲がよく似合うハンス・ジマーだけど、それよりもディープパープルの曲(チャイルド・イン・タイム、他)が流れてきたのには驚きだった。その他にもアジアのロックバンド曲もあったり、全般には60~80年代の曲が多い。軍事基地ではAIを使ってないことを強調するためか、冒頭からアナログ感覚を植え付けてくれたのだ。尚、ボカロ曲や新しい学校のリーダーズ(英語表記はAtarashii Gakko!)はご愛嬌か。
大まかなストーリーは、アメリカ軍の潜入捜査員ジョシュアがニューアジアの現地でマヤという女性と恋仲になり、出産間近という中で軍が急襲してくるという序盤から、死んだと思ってたマヤが生きていることを知り、AI少女アルフィーの力を借りて命令を無視して探す旅に出るというもの。ロサンゼルスで100万人の犠牲者を出したのはAIの核攻撃によるものだという人類対AIという戦争をおっぱじめたという近未来の設定だ。
しかし、描かれる映像としてはベトナム戦争を想起させるものであり、「AIは捨てた」と主張するアメリカ側の論理があるにもかかわらず、実際には西側諸国に対抗する新興国ニューアジアがAI開発を止めないという理由で工場を破壊しまくり、人間をも殺しまくり・・・“グラウンドゼロ”というネーミングから考えても9.11の報復戦争の描写としか言いようがない。
また、ニール・ブロムカンプ監督の『第9地区』『エリジウム』『チャッピー』をも思い出してしまう映像オンパレード。格差社会や貧富の差までは描かれてないけど、むしろ戦争の風刺が強く感じられた。相手はロボットだからと、現地の人間をも殺していく冷酷さにはゾッとさせられた。
ただ、AIとロボットの違いが理解しにくいのが残念なところだったか。ロボットは奴隷として作られ、人間の命令に忠実ということなら、憎々しい女性大佐の部下である下の兵士たちもロボットみたいなものだと強調してくれたら尚可。ロボット三原則なんて通り越しちゃってるところが新しいかも。今年初の映画鑑賞(アマプラだけど)でしたが、映画脳がちょいとオンになったかも。去年はオフしっぱなし・・・いやスタンバイだったかな?
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