「ズレと合致のよろこび」違国日記 かなさんの映画レビュー(感想・評価)
ズレと合致のよろこび
中学高卒業前でこれから高校生になる朝(早瀬憩)の両親が亡くなってしまう。葬儀の時これから朝がどうなるか親戚たちは口々に言い合い、朝も不安になっていたところ母の妹槙生が、朝と一緒に暮らすと言いきり、二人は一緒に暮らすことになる。二人の距離感や年齢のズレ、独身で子供のいない槙生、親といつも一緒にいた朝、違う世界に生きていた二人が一緒に暮らすことになる。槙生は朝に「私は、決してあなたを踏みにじらない」と宣言する。。
瀬田なつき監督は過去の作品、「ジオラマボーイ・パノラマガール」「嘘つきみーくんと壊れたまあーちゃん」で高校生くらいのほぼ同世代の男女の気持ちの「ズレと合致」を描出していた。この二作品では、同世代ということでズレも小さく結果合致のよろこびも限られていた。今作も同年代の親友えみりや同級生の森本との小さなズレと合致をさりげなく描出している。
槙生の親友の奈々(夏帆)や元恋人で友人の笠町(瀬戸康史)が朝を決して子供扱いしないで一人の女性として接する。奈々と槙生と朝が餃子を作るシーンはほのぼのしている。そして三人の信頼にもとづいた関係性を見事に作り上げていた。朝は槙生と笠町が一緒にいるとき、結婚する、しない、だけでなく多様な関係性があることを知る。特に槙生に恋バナを仕向けるえみりにはそれなりの要因も隠されているのだが。これらの会話は大人と少女のズレの大きさをそれぞれが理解をするという合致をもたらしている。
槙生も朝もそれぞれのズレに戸惑いつつもお互いの領域をしっかり守る、そこに信頼と愛という美しい合致をもたらしている。槙生が言う「私は、決してあなたを踏みにじらない」という言葉がいきている。朝は自主性を持ち溌剌とした姿として描出されていた。
瀬田なつき監督は、この原作をえて、ある種強引な姉御肌な槙生を演じた新垣結衣と高校生役をみずみずしく演じた早瀬憩、夏帆、瀬戸康史らのキャストへの的確な演出が見事な演技を引き出し、監督の映画の核心であるズレにほくそ笑みながら、お互いがお互いを尊重する自主独立という合致の多大な幸福に酔いしれた作品であった。