「叔母のこだわりと答えのない変化」違国日記 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
叔母のこだわりと答えのない変化
2024年。瀬田なつき監督。交通事故で両親を失った中学卒業を控えた少女と、その死んだ母親の妹で引きこもり気味の小説家の女性。それまで疎遠だった姪と叔母が同居することから起こるすれ違いや助け合いの様子を丁寧に描く物語。
中学から高校へという思春期まっただなかの少女の微妙な心情変化に焦点が当たっており、作中しばしば「私は変わらない」と言明するため、突然15歳の少女と同居するようになった小説家の、姉(つまり少女の母親)へのこわばった感情の変化がわかりにくい。つまり、少女とのふれあいによって気持ちが解けていく(解放されていく)というわかりやすい物語ではない。それは物書き特有のこだわり(原作者自身の実体験)に通じている面があるかもしれないと思ったりする。自分の原体験を否定しても書き続けられる物書きはそういないので。
その反面、少女の微細な変化は丁寧に描かれている。叔母との関係だけでなく、中学からの友人との関係や高校になってからの友人との関係も。歌を歌ったり、くるくるとダンスしたりする姿に変化する少女の存在の核のようなものが表現されている。ただ、少女をめぐる問題や課題も決してわかりやすく解決するわけではなく、少しずつ変化しながらも解決しないまま継続していく。
大きな事件は全く起こらない、その意味では淡々と平坦な物語を丁寧に描いているのだが、決まった解決にたどりつかないことの気持ちよさのような作品の魅力を形づくっているようだ。
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