「エンタメとして考える」悪魔の世代 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメとして考える
リトアニアの作品
復讐を巧みに描いたサスペンススリラー
プロットがよく練りこまれている。
非常に面白い作品だがわかりにくさもあった。
2023年現在の出来事が1990年の出来事に由来するのはわかるが、彼らの顔立ちと名前と現在と過去のビジュアルの違いがややこしく、最初は何が何だかわからない。
同時に、解決すべき問題が絞り込まれないことにしばしイラついてしまう。
ただ、伏線は端然と仕込まれていて、ややもすれば見逃してしまう。
特に「彼ら」の関係が中盤まで理解できずに眠りそうになった。
さて、
これが連続殺人事件であるということも、物語の中盤までわからない。
主人公のギンタス警察署長の不倫と市長選挙出馬表明、息子への教育と彼の将来への心配
その中で発生した旧友の変死と盗撮された自身の不倫現場
この放射状に広がる問題点の分散の整理に戸惑ってしまう。
主人公がギンタスであるというのはしばらくすれば解ってくるが、
彼の問題が息子なのか、不倫なのか、娘なのか不明だが、彼の目先の問題と並行して走るのが、死んだライモナスの捜査を開始した検事局のシモナスだった。
シモナスによって、ギンタスのいい加減な捜査と身勝手な言い分による事件の捜査から、犯人は実はギンタスなのではないかということになる。
ギンタスは自分に嫌疑が掛けられて初めて問題が何かが見えてくる。
つまり、
他の映画同様に、視聴者の視点はギンタスに設定されていることが、ようやくわかる。
ここが面白いのか否かはわかれるところだろう。
さて、、
物語の構図と設定は非常に巧みに作られている。
振り返ってみれば、ギンタスの右往左往ぶりと視聴者のそれは一致しているのかもしれない。
しかし、
ここで登場するのがタイトルだろう。
悪魔の世代とは、どの世代なのだろうか?
KGBの暗躍
それは、偽装工作であり裏切者の調査であり、現在の彼らが政治の中枢部にいる。
「彼ら」のしたことが、事件の原因となったのだ。
そして、ギンタスの息子がこともなげにした射殺
息子ベネイは完全に無感情だ。
復讐に対する復讐
リトアニアでこれが問題となっているのだろうか?
1990年代に暗躍したKGB
彼らの資料を売ろうとした女性
二重スパイを疑った「彼ら」は、当然いつものように始末する。
女性には息子がいて、彼女は息子を衣装ロッカーに隠した。
ベネイが隠されていた場所
伏線も素晴らしい。
悪魔の世代というタイトルの意味は、KGBの時代だと思うが、
多義的でもある。
ただ、多義的にしてしまうとタイトルの意味が薄れる。
逆に、今を過去の所為にすれば、未来を失う。
この辺の感覚は、私には少し理解しにくかった。
単にエンタメとして楽しめばいいのかもしれない。
ギンタスの母
彼女は所どころにワンカットだけ挿入され、伏線ではあるが、役割が今一つわからなかった。
娘が受けた暴行だけに必要だったのだろうか?
または複雑化させたかったのだろうか?
1ルーブルの意味も解らなかった。
エンタメとしては十分に楽しめたが、リトアニアが抱える問題が垣間見えた気がした。