「ごめんなさい、おねがいします」はじまりの日 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
ごめんなさい、おねがいします
中村耕一のファンじゃなければ楽しめない映画。彼の反省と再起を描きつつも、若き歌姫の誕生と成長がしっかりと掘り下げられていれば、音楽に対して強いメッセージのある映画として評価できたんだけど、どうもそう上手くいっておらず、そもそもミュージカルにしたいのか人間ドラマにしたいのか、全くもって定まっていないから、すっごく中途半端な映画になっている。いちばん残念なパターン。どっちかに絞ったら良かったのに。はなから期待していなかったけど、予告が全ての薄っぺらい作品。うーん。なんのための映画だろう。
見るに耐えないとか、居心地が悪いとかそういうことはなく、フィルム映像にしたことで安っぽくはなっているけど、主人公周りの役者がすごく演技できる人だからか、作りが粗いという印象は自然と受けない。監督自身も中村耕一のファンなのか、真剣に作っているのは伝わるし、彼を敬愛し、応援する映画としては悪くない出来だと思う。
中村耕一がどれほどまでにすごい人なのか。ほんの少し流れる過去の映像と響き渡る歌声で、彼の魅力は十分に伝わった。この歳では考えられない声量。さすがにあのシーンはカッコよくて思わずグッときた。
ただ、人間ドラマとしてはかなり陳腐な作りで、展開が読めるというよりも、意外なことしようとか変わったことしようっていう思いが微塵もないから、ほんとただただよくあるプロットをなぞっただけで、中村耕一を主人公に迎えた映画に過ぎない。それ以上もそれ以下もなく、予告で面白そうと思えなかったら見る必要は無いと思う。逆にファンは絶対楽しめるだろうし、予告通りの映画だから期待は裏切っていないのかも。でも、歌うのは遥海メインだからそこは注意が必要。
ミュージックとしてもさりげなさがなく、はい歌います、はい終わりましたって感じで、MVを無理やり付け足した感が否めない。遥海の歌唱力には度肝を抜かされたし、盛り上げる演出も良かったと思うけど、ストーリーとの繋げ方には違和感しかなく、せっかくの美声を上手く映画に反映しきれていないように感じた。彼女から放たれる声には引き込まれるけど、映画には引き込まれない。この致命的なミスで、良作になり損なっている。上手くできたと思うんだけどな...。
駄作とまでは言えないけど、素材がこんなにもいいからこそ、それを生かした脚本になっていないのが非常に残念。母親の設定もかなり余計だった。日本のミュージカル、結構珍しいけど、ポテンシャルは十分にあると思うから、興行的には振るわないだろうけどもう少しがんばって作って欲しい。本物のミュージカルを見たくなっちゃった💦