劇場公開日 2023年10月20日

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「欲にまみれた人間の醜悪さ」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5欲にまみれた人間の醜悪さ

2023年11月6日
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鑑賞方法:映画館

欲にまみれた人間の醜悪さは見ていて辛くなるが、でも物語の題材としての価値は十分にある。本作もそうだ。アメリカの先住民オーセージ族に起こった実際の事件が題材。石油が発掘されたことで巨万の富を築いた彼らの財産を、白人たちが狙っていく話。子どももまで産ませておいてそんなことする?と思ってしまう。あんな事ができるのは時代なのか、欲に目がくらんだからなのか。いずれにしても先住民たちを人間として扱っていなかった白人たちの感覚が色濃く出ている事件だ。昔を描いた物語なのに、現代のことを考えてしまう。
当時の社会情勢や町並み、いろんなものを再現させた努力はすごい。冒頭のディカプリオの歯が若干汚れた感じなのもうまい演出。そうだよな、西部劇のように銃で簡単に人が生き死にしていた時代なんだということを改めて思い知らされる。
欲にまみれた人間たちの醜悪さと、その中に存在した愛。人の感情はなにか一色に染められているわけではなく、いろんな思いが点在し混じり合った抽象画みたいなもの。そんな事を考えさせられる大作だった。ディカプリオと妻役のリリー・グラッドストーンの演技がとにかく凄みがあって印象に残る。
ただし長い。もう少し短くできるだろうよと思ってしまう。

kenshuchu