「ネイティブアメリカン虐殺史の一端を垣間見る。」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン レントさんの映画レビュー(感想・評価)
ネイティブアメリカン虐殺史の一端を垣間見る。
白人に自分たちの土地を奪われたネイティブアメリカン。彼らが追いやられて住み着いた土地から石油が湧いて出たことからたちまちその地は石油バブルに沸く。富を得た彼らからおこぼれにあずかろうと白人たちが多くなだれ込んで、たちまちそこは町として栄える。そしてやがて忌まわしき惨劇に見舞われることになる。
実話に基づいた作品ということで、遠路はるばる大統領に請願しに行ったモリーの望み通りちゃんと捜査されることになったことは意外だった。正直、誰にも救われず最後はアーネストに殺されて事件は闇に葬られるのかと思ってた。
そしてその捜査を命じたのがFBIの前身組織を指揮する若き日のJ・エドガーだなんて、まさか捜査する側される側両方の役をディカプリオが演じることになるとは。
富に群がる白人たちを警戒していたオーセージ族のモリー、そんな彼女に近づくアーネストに対してもコヨーテのようだと警戒。しかしやがては恋に落ちて二人は家庭を築く。だが、彼女の親が持つ石油利権を狙うアーネストの叔父ヘイルの魔の手が忍び寄る。モリーの家族は次々と不審な死を遂げ、ついには彼女自身にもその魔の手が。
自分が信じた男はやはり白人だった。コヨーテを意味する言葉をアーネストに残して彼女は彼の前から去るのだった。
この地で殺されたオーセージ族の人々は数百人にもおよぶらしいが、実際に捜査されて処罰されたのはほんの数人。そして刑に服した人間たちも恩赦などにより短い刑期で出所する。なんかこの辺は最近日本で公開された「福田村事件」にも通じるような。
アメリカの原住民であったネイティブアメリカンたちは白人が入植してきたせいでその多くが虐殺されて故郷を追われ、民族のアイデンティティーも奪われて、今はアメリカ政府が与えた居留地でひっそりと暮らしている。しかしそれらの土地は農業もできないような枯れた土地だったり、辺境だったりして、彼らの貧困度合いは一般的アメリカ人よりもはるかに高く、生活は荒んでいるようだ。「ウインド・リバー」でもそのあたりが描かれていた。
インディアンの命は犬の命よりも軽い。この言葉は現代のアメリカでも充分通じる言葉だ。
アメリカの歴史的暗部を描いた力作。本作のように普段生活していてはけして知ることができない歴史的事実を映画化してくれることは、「福田村事件」といい、制作陣の方たちに感謝したい。そして、この上ないゲス白人を見事に演じきったディカプリオにも。相変わらずの演技力でした。
レントさん、コメントありがとうございます。武器や毒を自由に使える殺伐とした白人社会は、日々の食事や生活様式まで従来の先住民の生活を変えたことにショックを受けました。モーリーの糖尿病です。食生活が完全に白人化していました。