哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
全657件中、641~657件目を表示
緻密な計算で描かれた〝つくりもの感〟(追記あり)
超絶外科手術(要はフランケンシュタインがリアルな世界)も、屋敷も旅先の街並みも空も、すべてが並のお伽話よりも濃密に〝つくりもの感〟に溢れています。
あれほども〝栗とリス〟にまつわる会話や映像が展開されてるのに、嘘のように性欲が刺激されないのです。コメディタッチであっけらかんと描かれるような映画もありますが、それなりにエロかったりするのに。
思春期特有の精神的なモヤモヤをすっ飛ばして、いきなりあの気持ちよさに出会ってしまった無垢の女性にとって、それは無垢な肉体の悦びであり、それを欲することは、E=mc 2(二乗)と同じくらい自然で当たり前のこと。
淫乱である、とか、ふしだらである、とかの道徳的な後ろめたさやそしりの概念を社会の共同観念としていつの間にか仕立て上げたのは男どもだし、この女は自分だけのものである、という身勝手な独占欲を許してきたのも男の作った虚構のなせる技。
男の作ってきた常識の数々は、よくよく見てみれば、結局は男の怖れや弱さから生まれたよくできた〝つくりもの〟
それらのことをpoor thingsと呼んでいるのでしょうか。
【素朴な疑問】(2024.1.28追記)
売女(バイタ)という言葉があります。
いわゆる売春婦だけでなく、男目線から〝身持ちの悪い女〟
に見えれば、それらを引っくるめた罵り言葉として使われます。
たとえば、ホストクラブという業態がある。
実態を何も知らないのだが、仮にそこで女性客に対して〝媚び〟を売ったり、場合によっては身体を売ったりすることがあるのであれば男性向け風俗の業態と本質的な違いはないことになります。また、浮気性で、〝身持ちの悪い男〟だってたくさんいます。
だけど、そういう類いの男性を一括りにして〝売男〟(読み方は売女と同じバイタということにしておきます)とは言わないし、それにあたる言葉もたぶんありません。
そもそも様々な女性を一括りにして蔑む言葉が、字幕でも普通に使われている男性中心に作られた共同観念の根深さをあらためて実感しました。
ゴシック調の世界観
気狂いとエロ。中々見応えあり。
強烈な作家性に引き込まれる作品(R18+)
鬼才ヨルゴス・ランティモスが独特で奇天烈な世界観を、躊躇ない性描写を交え綴ったゴシックファンタジー&ブラックコメディ。
脳が幼児で身体が大人だとまず性への興味から始まり、倫理観がない分リミッターがかからず暴走してしまうというのはなんとなく納得。
外の世界での見聞や人生観を大きく変える人物との出会いによって貧困、差別、ジェンダー、思想などを学び急速に成長していく過程が面白かった。
船上で出会った老婦人と黒人青年、娼館の女主人はリアルな「世の中」を彼女が知るきっかけを作ったキーパーソン達だが大変魅力で印象に残った。
主演(兼製作)のエマ・ストーンはこの難役をまさに体当たりで演じており、ある意味女優としての凄みの様なものを感じた。
冒険から戻り、自分の使命は何かという事を見つけた転換期を眉毛、歩き方、カラー映像で上手く表しているのも興味深い。
堅物のイメージが強いマーク・ラファロは観はじめた時にはこの役は似合わない気がしたが、徐々に違和感を無くしたのはさすが名優だと思った。
狂気の天才外科医を演じたウィレム・デフォーはこっちの期待を余裕で上回る怪優ぶりだった。
あの変なシャボン玉みたいなのは一体何?
非常に表現しづらいが、とにかくパワーや熱を強く感じる衝撃作。
不気味。下品。強烈。(私は好きではありません)
話題になっていたので、ものすごく楽しみにしていたのだが(私にとっては)残念作品。でも、評価を5にせざろうえないような迫力がある。ちなみに一緒に行った人には「最低!」との評価でした。
チョコレート工場2作のうち「チャーリーとチョコレート工場」の方を好きな人にはまだ受け入れやすいかもしれません。逆に「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」の方が好きな人には受け入れ難い作品だと思います。
「登場人物で好きな人が誰もいなかった」+「これでエマ・ストーンがアカデミー賞(主演女優賞)取れなかったら可哀想」。
気になったのは山羊(の肉体)はどうなったのか、ということ。あと、そもそもあれだけの技術力(科学力?)があれば胎児のままで、普通に育てることができたのではないか、ということ。
期待を超えて面白い。家で観るにはハードル高い
凄まじい世界観
奇妙でインモラルで淫乱な作品─、知的で面白くて感動的な映画ではありましたが、大前提を念頭に観賞した方が賢明だと思います。確かに啓発的な要素は強いとは思いますが、あくまで楽しむための娯楽として作られていると感じるわけで、だからこそのあの知的感にはただただ脱帽。多くの人に見てほしいと思う反面、単に一風かわった娯楽作品とみてほしくないと思ったり・・・、けど思いっきり楽しんでほしいとも思うわけで…、なのでしっかり集中して見れば相当深みがあっておもろい映画だと思います。
完璧に一つの世界観を構築しきっていて、ビジュアルだけでも楽しいのですが、あらゆる方面の作品を想起してしまうところもあり正直凄さはあってもオリジナリティは少しだけ欠けているのかなとも感じなくもないのですが、そんな些末な思いつきなど吹っ飛ぶぐらいの映像世界でした。
音楽とか音響の遊びも非常に面白かったし、最高の映画体験でした。
惹き込まれっぱなし
哀れなるものたち 中々強い世界観。ヨルゴス・ランティモス監督らしい...
哀れなるものたち
中々強い世界観。ヨルゴス・ランティモス監督らしい作品といえば作品だが、その中でも話の軸の女性が強く生きていく成長ストーリーというのは過去の監督作に比べると分かりやすく観客が各々色んな捉え方で楽しめるだろう作品に思う。
だいぶ癖の強い表現、コメディシーンなどは多いがその辺りもエマストーンの快演っぷりは前評判通り良くて魅力的だった。
ただ当然の事だが好み不好みは強く分かれる作品ではある。
個人的な2024年洋画新作鑑賞ランキング
1 ネクスト・ゴール・ウィンズ 4.8
2 アリバイ・ドット・コム2 ウェディング・ミッション4.5
3 アクアマン/失われた王国 4.5
4 ニューヨーク・オールド・アパートメント4.3
5 異人たち 3.7
6 ミツバチと私 3.6
7 僕らの世界が交わるまで3.0
8 弟は僕のヒーロー 2.8
9 エクスペンダブルズ ニューブラッド 2.3
10 哀れなるものたち 2.3
11 葬送のカーネーション 2.2
12 VESPER/ヴェスパー 1.5
言葉にするのが難しいけれど、感じたのは愛
全然理解できてないと思います。的外れで勘違いな感想かもしれません。私は愛の物語であり、ラストは幸せと希望を感じました。
見た目は美しい大人の女性ですが、新生児の目線で世界を見つめ、成長していくベラ。ベラは欲望そのままに動き、思ったことをそのまま話す。彼女から見る世界は、美しく広く興味深いことがたくさんあると同時に、理不尽で救難く、絶望にも溢れている。
言葉にするのがとても難しいけれど、ベラの放つ言葉や感情が、真っ直ぐ胸に響きました。なんでだろう。共感できるけれど、できないこと・やらないことばかりだからかな。この狂った世界を美しく思えるのは、どうしてなのでしょう。。
監督の作家性が炸裂し、俳優陣の魂がぶつかりあい、映像・音楽・音など細部まで思いを乗せた物凄い作品。もっとちゃんと本作の真意を、監督の意図を汲み取れると、また違った感情になると思います。
それがまた楽しみです。
一日経ってまた観たくなった
大人になる前に観るべき映画なのにR18 。
今年のベネチア映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞したという超話題作だが、思いっ切りR18。しかし映画史に残るR18なのかもしれない。このあたりの論考では「ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトリッチ監督 1972年)や、存在価値は違うが「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン監督 1974年)を交えて語られるだろうが、それは専門家に任せておこう。
スコットランドの小説家アラスター・グレイの原作だという。映画を信じるなら官能幻想ロードムービー小説なのだろう。ウィレム・デフォーは、これまた北欧の狂才ラース・トン・フォリアーの諸作、特に「アンチクライスト」(2009年)などで竿を振るっていた。しかし本作では狂気の天才外科医。醜いブラック・ジャック役だ。なにより、製作にも加わって力瘤の入っているエマ・ストーンが演じる主人公ベラが凄い。しかしこの凄さはレビューでは語らない方が良いだろう。まず、絶対観ろ。
倫理を超越した科学的医学的実験で生まれた「無垢(イノセンス)」な女性の自分探しのロードムービー。そうとう身体を張った、彼女の自己(自我)が覚醒していく過程を、観客は爆笑しながら眺めることになる。その純粋無垢に、喪失しきった倫理の奇妙さに。スクリーンのこちら側の「全うな道徳を幻想している観客」とは別の世界であるという、歪んだ風景のなかで、観る者に正気を確かめさせるヨルゴス・ランティモス監督の挑発に、僕らは打ちのめされる。
そして、このうえなく、純粋な「愛」についての物語であることに、溜息が出る。
いろいろ強烈
全657件中、641~657件目を表示