哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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哀れなのはいったい誰だ?
かなり猟奇的で大胆な性描写も含まれる作品ではあるが、そんな表層的な見てくれの中身としては、様々な意味で社会的にも抑圧されていた女性が自らの行動を通して世界を知り、自由や平等を手に入れて自立していく過程をカリカチャー的に描いた作品であり、日本の政権与党(とその支持者たち)が嫌いそうな女性解放の物語だと言える。
ウィレム・デフォーが演じるゴッドウィンの風貌はフランケンシュタインにしか見えないが、ある種の「人造人間」であるベラはまさに女性版のフランケンシュタイン。そして、そんな可哀そうに見えるベラを意のままにしようとする男たちの愚かさを見ていると、「哀れなるものたち」とは本当はいったい誰のことなのかが浮き彫りになってくるであろう。
ベラの知らない知りたい世界
大画面向きの映像で、カメラワークも斬新で良い。
形状の変わった生き物、美しい建造物、約100年前のファッションも見どころ。
序盤のモノクロ時の死体と、後半に登場する長髪の男の二人のペニスや女性の乳首や陰毛も モザイク無しで 惜しみなく映し出されている。
世界各地の描きかたが、コミカルで芸術的で、まるでティム・バートン監督作品とスタンリー・キューブリック監督作品を足して二で割ったような、洗練された見ごたえのある映像である。ベラと一緒に冒険している男は遊び人で、ベラの體が目的だから、「アンアンアンアン」幸せにさせまくるのだった。
人体実験の被験者であるベラが結婚前に別の男と出かけるシチュエーションが、終盤 もう一度 ある。自分の両親の結婚生活を知るという伏線回収もバッチリであった。
ベラの知的な成長が楽しくて、最後の最後まで言動が面白かった。
この倫理観は受け付けないが…
なかなか興味深い内容。
脳を移植し、再生した女性の冒険なのだが ・・・
もっとドンドンぶち破れぇ~
恋人がいなければ強制的な手術で動物に変えられるという奇妙な近未来を描いた『ロブスター』(2015)、不気味な少年から子殺しを命じられる恐ろしい『聖なる鹿殺し』(2018)で「これは一体何のお話なんだ?」と混乱させられつつも訳の分からぬ魅力に惹きつけられ、ヨルゴス・ランティモスは一気に注目監督になりました。その才能をハリウッドが見逃す筈はなく、恐らくそれまでの何倍もの予算をぶち込んだ豪華絢爛たる『女王陛下のお気に入り』(2019)ではアカデミー賞の多部門でノミネートされるまでになりました。ただ個人的な好みとしては、『女王陛下~』は、「訳分からない成分が足りない」のが不満でした。もっと迷宮に導いてよぉ~。ところが今回は、「豪華絢爛たる訳の分からなさ全開」でヨルゴス節が帰って来ました。待ってましたぁ~!
成人の体に胎児の頭脳を移植された女性が無垢な好奇心のままに世界を旅する物語で、謂わば現代のフランケンシュタインです。もう、オープニング映像から魅力的で、一気にゴシック・ワールドに引き込まれます。モノクロ映像もカラー映像も暴力的とすら思えるほどの美しさです。低い位置からフィッシュアイ・レンズでの移動撮影という僕の大好物の映像も今回はてんこ盛り。そんな世界で、エマ・ストーンが制限なしの弾けっぷりです。スッポンポンだろうとあからさまな性描写だろうとお構いなしに突っ走るのです。スクリーン前の我々を一体どこへ連れて行こうというのだろうとワクワクします。
ただ、常識に縛られぬ彼女の行動には伝統的な女性性の打破というテーマもあるのでしょうが、そういう観点で見ると舞台がパリに移ってからの展開にはちょっと小さくまとめてしまったのではと残念な思いも。もっと外に向かってドンドンぶち破って欲しかったです。
原作の最後の数十ページをどう表現するか興味があったが、その部分が全...
人間とは…
狂気的で残酷、でも恐ろしいほど美しい
自由と束縛の欲望、我々の本能、人間の残酷さ。
それら全てが物語で溢れる、まるで絵画のようなエネルギーとパワーを感じました。
美しさの中にあるメッセージをこんなにも直接的に感じたのは初めてです。
私たちの潜在的な残酷さは、どのように現れるかが違うだけだと分かりました。
都合の良いように物事を進めるために嘘をつく、新しい物や価値観を与え魂を奪う、美への執着から若い女性を傷つける、人を脅し服従させる。
そんな汚くて醜いものを心の奥底にかかえている。目を背けたくなるけど、必ずあるものだと気付かされました。でもその分、美しさも溢れている。
作品内の性や命に対しての直接的な表現が、より力強いメッセージとなり、私の魂をえぐり、くすぶりました。圧巻です。
頭脳は子供、身体はオトナ
タイトルなし(ネタバレ)
原作未読。
レイブラッドベリ、萩尾望都の「びっくり箱」、山下和美の「ランド」、古きはフランケンシュタインなどを彷彿とさせる。
タイトルは「哀れなるものたち」。
人間に最も必要なものは憐憫の情。それが無いと、外見は人間でも中身は化け物みたいな生き物になってしまいます。人間を人間たらしめているものは他者を哀れむ心。そう、必要なのであって備わってるわけじゃない。
さて、そこで作品をどう鑑賞したらいいのか…戸惑いました。ベラが船旅の途中で、貧しい子供たちが固い地面で寝ているのを見て、可哀そうだと涙するシーンがあります。私はこんなふかふかのベッドに寝ているのに、と。そういう非常に豊かな感情が彼女に発露するにはあまりにも展開が唐突過ぎて、自分としては序盤でスーッと冷めてしまいました。身の毛もよだつ、あの狂ったおぞましい成育環境で、外を旅して読書したくらいでそんな感覚育たないぞ。いくらハイスピードで成長しているとはいえ色々雑過ぎんか。ああ…私の心が全然ついて行かない(涙)物語の進行上、必要な展開なんでしょうけども。
こういう作品でそんな風に引っかかってしまうのはナンセンスか。
私が女だからなのか、違和感もありました。ベラが旅先で泥酔して道端に寝ていても誰にも襲われないし、旅に誘った男もベラをなぶり殺しにしない(ある意味まとも)、ゴッドもベラを切り刻むけど性的なことはしない、助手をしていたフィアンセも「性交渉は結婚してからですョ!ダメダメ!」という超マジメ君。性に関しては奇跡的な治安の良さと環境に恵まれている。物語の便宜上そうなのかもしれないけど、実際は女に生まれついたってだけであらゆるハイリスクを背負う宿命をもつので、もし女性の自由とか解放云々いうならそこらへん全く触れないのはどうなんかな、とは思いました。
登場する男たちが軒並みしょうもない感じでしたが、最後にベラも彼らとおんなじ事してて(自分の思い通りにならない元夫にヤギ脳を移植とか)、それじゃ結局同じ穴のムジナじゃん!今までのなんやかんやをどうしてくれるんだ⁈という気持ちになりました。なんなんだ、こりゃ。
キリスト教的タブーの話は、他の方のコメント読んで学びました。なるほどね…!!ぜんっっぜん気付きませんでした。そうか、それでベラは突然食卓でリンゴを…(ゴニョゴニョ)
でも、そう言われれば随所にありますねー。私は全体的にベラが痛々しいと感じてしまって作品としてはあんまり好きな部類ではないけど、映画って色々あって面白いですね。
ファムファタールではなく
哀れなるものたちとは?
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