哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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美しさは罪なのでしょうか
最初のモノクロのシーンを観て「ゴシックホラーテイストの作品か…」と思いましたが、画面が色づいてからはまったく違う展開になり、作品に一気に引き込まれました。
話の展開は「実践哲学」ことを言っているのかなぁ、位に思いました。
話は「冒険」と称する未知への探究へ!
ベラは知的好奇心のため、持ち前の行動力と明るさをもってグイグイと前に進んでいき、その姿は凛々しくもあります。
しかし子供の純真無垢な心と、成熟した美貌をもつ大人の女性としての美しさをもつ彼女にはいつも本人には納得のできない壁がいつも立ちはだかります。
そして周りの人は皆、美しいものを独占したいと思い彼女に近づく。
ベラはそこに存在しているだけなのだが、美しさは宝石以上に周囲を狂わせてゆく。
美しいということは罪なのでしょう。
パリの娼館にて異性と肌で関係を繋ぐうちに、それを通じて様々な人の表裏を学ぶことになり、人間というものを学び、心に磨きかけていくというのは面白いと思いました。
終盤近くではテンポがやや失速ぎみで(演出?)、説教臭くなったいったように感じました。
なぜ社会主義にいかねばならなかったのだろうか… 資本主義への反発?
でも本人は解剖医になろうとしている。あまり社会主義とは関係がない。
あとは、ベラの衣装がとにかく豪華!!
アカデミーにノミネートされる作品にはこのくらいが必要なのでしょうね。
これは観る価値がありました。
一般受けはあまりしないかもしれませんが、観ておくには十分な作品であると思いました。
少しだけ普通ではない生い立ちの女性が、少しだけ人とは違う経験を通して心と精神が成長していくお話です。ダークな風味があるので苦手な人は注意が必要かも・_・;;
予告で観た、怪しい行動を繰り返す女性が印象的。
作品紹介を読んだらその女性の行く末が気になって
見届けなければ、との衝動にかられて鑑賞。
さあ 鑑賞開始。
で。
…10分経過した頃の正直な思いはというと…
” 観る作品の選択を誤ったかも ”
でした。何故って…
この女性(ベラ)の行動が怖いんですよ。
研究室(?)のストレッチャー上の死体(?)の顔を
金属の棒でグサグサとつっ付くご乱行。ひぇぇ
” ホラーだったか…? ” と、体から血の気が
引いていくのが分かりました @∧@ ; (←怖いのダメなヒト)
それでも、映画館で途中退席するなど映画鑑賞のポリシー
に反する(トイレ利用は除く・-・)、と鑑賞を続行。
なんとか鑑賞終了。
鑑賞の途中から何となく感じていたモヤっとした感想が
帰宅してこの作品を振り返り、何とかまとまってきました。
” 一人の女性が生まれてからの、成長の物語なのか ”
とはいえ、「普通の」物語ではないです。 ・∇・ね
・誕生の仕方が脳移植
・しかも胎児の脳を母体に移植
・体は大人、頭(脳)は子供(コナン君の逆)
その結果、大人が子供のような奇行を行うという
一見、目を背けたくなる場面が多く描かれることに。
※子供(幼児)の残酷性ってありますよね。
捕まえた虫の足をもいだり羽をむしったり…。
だからカオを棒でグサグサしたりするのも当然
なんですね、きっと(…う~ん・_・;)
けれど、ベラの心は成長します。
# 不味い食べ物は口からベーっと出してました。
# 気に入らない事があるとモノを壊してました。
それが
# やがて家の外に出たがるようになります。
# 何でも知りたい、自分の目で確かめたい
赤ちゃんから幼児期を経て、思春期へ。
そしてベラは、ある男と一緒に世界を知る旅に出ます。
反抗期?というだけではない、自我の目覚め?
その旅先での経験が、ベラの心を一段と成長させていきます。
と、まあ
こんな感じにベラは成長していきます。
精神的に。そして 肉体的に。
終盤、ベラの正体に関連して話が急展開します。
ベラの謎というよりは母体の正体についてなのですが
ベラ(の母)を縛りつけていた男(ベラの父になるのか?)と
真正面から立ち向かうのです。
銃を突きつけ、自由を奪おうとする男に対し
一歩も引かずに渡り合い、逆に相手をうち倒すベラの姿は
美しくたくましい魅力にあふれていました。
彼女がその後、どんな人生をおくるのだろうかと気になります。
作中口にしていたように、医者になるのでしょうか。 はて。
※それにしても、このお話の時代はいつなんでしょうね。
19世紀末~20世紀初頭くらい?
現代では無い。 …それは確かかと思うのですが。
◇あれこれ
■エマ・ストーン
ベラは内面の成長に伴って、表情も成長していくのですが
振り返ると、演じたエマ・ストーンの演技がすごいです。・_・
エマ・ストーンの体当たり演技(濡れ場とか)だけでなく
「体は大人の女のまま」なのに、中が「生まれたての子供
から大人」へと成長していく女性のしぐさや表情を、実に
細やかに表現していたことに拍手です。
■ベラの体の脳は誰の脳?
母親の頭の中に、お腹の中に居た胎児の脳を移植。…うーん。
入れ物の方が大きすぎやしないか と余計な心配。・_・;
もしかして、母の脳のダメになった部位は切り捨てて ・-・;
空いた隙間に子供の脳を押し込んだ …とかなのでしょうか?
そうとでも考えないと、移植された脳の成長スピードが早すぎる
ような気がするのですが、どうなのでしょう。(←素人考え・_・; )
■ベラ …といえば
妖怪人間を思い出す世代なのですが、そもそも「ベラ」って
どんな意味のあるコトバなのかと検索してみました。
イタリア語で ” 美しい ” という意味なのですね。 へぇ
ひとつ賢くなりました。
◇最後に
ベラを手術したゴッドウィン。
この天才と紙一重の外科医は、いったい何を考えて動物の合成の
ような手術を繰り返していたのか。
振り返ってみると、その動機付けが描かれていない気がします。
ベラを(ベラの母体を)助けたのは気まぐれからだったのか。
それとも他の理由があったのか。
保護者=父親的な一面を見せていたようにも感じたのですが
そんなどうでも良さそうな処が気になっています。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
またもやパンフ完売
予告編やwebの情報などから(熟読せず)風変わりな、もしくはクセのある映画かなという印象を持っていました。
魚眼レンズで覗き見てるような映像もあり。
ストーリー設定は、発想がすごいですね。確かにR-18な内容で、グロいのもそうですが快楽シーンは、ややげんなり。。。でも、性は生であり、ベラは成長していくんですね。
そして、解放されるラストでよかったと思います。
面白かったかというとよくわからないのですが、飽きることはありませんでした。
エマ・ストーンは初見ですが、体当たりで熱演。蘇った時の最初の方は、表情が子どもっぽく見える時もあったし、きれいなだけの女優さんじゃできない役だなと思いました。
衣装や室内、特に船からの景色が素敵でした。
ヨルゴス劇
ピヨンビヨン
「哀れなるものたち」
思っていたほどR18指定?と感じた
美術、衣装、音楽は凄い
眠くはなりませんでした(ギリギリで生きていたい)
ベラがだんだんと賢くなっていく
あんなモラハラ旦那と居たら
自死したくなるよね
そして娘(脳みそ)がやり返す
スカッとジャパン
人間の欲求
人間の根本って、欲求で成立して、社会的欲求に移っていく事がよく分かる作品ですね。エマ・ストーンが後半は特に終始裸に近いのが、凄いですね。背景は過去、技術は未来という不思議な設定が今までとは違う感触がありました。
哀れなるものたちとは誰か
自由で天真爛漫、欲望にも忠実なベラ。
当初は改造人間となってしまった彼女、それを作ったゴッドが哀れなるひとたちかと思ったが。
前世紀初頭?の常識、風習、嫉妬心、独占欲に縛られた男たちがベラの行動に振り回されて自ら破滅してゆく。
彼らこそが哀れなるものたちなのだ。
翻って現代のリアルな世界に生きる私たち。ニュースやSNS、Webを通じた情報に踊らされてはいないか。
私たちが信じる常識や価値観に振り回されて「哀れなるものたち」となっている危機を刺しているいるように思えてならない。
あまりの衝撃に呆然としつつレビューを書いてみる…
結論からいうと『最高』
私の中では『芸術作品』
終始エマストーンの青くて大きな瞳や美しい輪郭に目を奪われつつも、所作や無垢な挙動や立ち振る舞いに心動かされ、目が離せなくなってしまった
リスボンでの大口あけて食事するシーンや、街中歩いてて聞こえてくる歌声に感動してるシーンはこちらもジンときた
乳首丸出しで眉間に皺寄せつつ放送禁止用語を連発してるけど、この人はなんでこんなに美しいんだろう…
エロスだけれど、ちょこちょこギャグめいたシーンが挟み込まれていてクスクス笑えた
たとえば父が教育のために息子を同席(笑)、息子たち顔赤らめてたけど多分別撮りだよな?とか(日本じゃありえん)
食事の最中にペニスの話、娼館で働いてるときの素直すぎる言動、マックスから不意に性病検査してるか聞かれるシーン…すべて笑えた
パリにて、娼館で身体を売ったことに嘆き喚く彼に対し、むしろ経験できたことであなたのセックスの良さに気づけたと冷静に返答するベラにも1票
俳優の皆さんの演技が素晴らしいのは勿論の事…建物、衣装、CG、デザイン…すべてがツボすぎた
船上のマダムもパリ娼館のマダムも魅力的
ベラの成長過程において、倫理観のみならず人類学や哲学的な要素も含まれ、且つ性や人種や貧富の差も折込まれ、ミックス焼きの脳になった気がする…
見終わったあと、こんなにドキドキしながら家路につくのは久しぶり
それぐらい久々に好きな作品に出会えた
『良い作品観たぞー』『周りに共有して感想ディスカッションしたいー』という気持ちで一杯です
監督の他作品も観てみたい
娼館で学んだものは社会性とジェンダーとコミュニケーション
好奇心と探究心をもって改善し進化したいと考える精神が大層健康的。知らぬ間にスラムを見て泣き崩れる感情がちゃんと育っていたんだね。
性欲の発見後の、セックス中いろいろインストールしている感に爆笑。
ヨルゴスランティモスも性格が悪そう(褒)だけど、今作は性格の悪さを綺麗にラッピングしててよいです。
(脳みその)幼少期のドラマチックを通り越してサイケデリックな色から、社会性と言葉を獲得して最終的に選ぶ色が黒というカラー演出良かった。
ラストナイトインソーホーへのよいアンサー映画。
または女版ジャンゴ。
哀れなるものたち
ある科学者の実験から生まれたとされる妖怪人間ベラの望みは「早く人間になりたい」。そのために鞭を振るったり、手首を動かしたりして、悪い妖怪や悪人と対峙する。では、こちらの科学者から生み出されたベラの望みは?「世界を自分の目でみたい」ってこと。それって弁護士ダンカンによって、あっさり叶えられるね。ちなみにダンカンのやっていることは、この時のベラの状態から考えると、幼児もしくは未成年者誘拐及び淫行以外の何者でもないから。そして、もっと学びたいと思ったら、都合よくマーサやハリーと知り合い、哲学や読書を教えてくれる。パリで無一文になったら、意図も簡単に娼館で働け、しかも社会主義者になったり大学で医学まで学んだりもできちゃう。船上でダンカンに読んでる本をほかされても次の本をマーサが渡してくれるように、望むことは大概は周りが叶えてくれる。ベラが自分から何かを成し遂げようと孤軍奮闘する姿は全然見られない。その醜い姿のため、疎まれ追われ、それでも人間を助けようと旅をする妖怪人間ベラ。対して、こちらのベラの‘冒険’の何と薄っぺらいこと。ロンドンの家から出たけど、リスボンのホテル、船の中、パリの娼館と常に限られた空間の中だけ。それも限られた人とだけ。エマ・ストーンは、こうした出会いを通じてベラはどうすれば社会に役立てるのか、世界のためになにかを作り出せるのかを考えるようになったと言っているが、そうかなあ。アレクサンドリアで多くの赤ん坊が死んだことを知った時は人のお金を渡しただけだし、娼館では「女性が選ぶシステム」を提案するも、具体的にどんなシステムかを考えることもそれを実現化することもしない。タトッーやり手ババアにあっさりと懐柔させられる。気がつけば、どっかへ行ってしまう。アレクサンドリアでは多くの赤ん坊はこれからも死んでいくし、パリの娼館では、女性たちは自由意思なく男性に選ばれ続ける。何も変わらない。少なくとも妖怪人間のベラの方は、悪い妖怪や悪人を退治していったぞ。結局、ベラのしたことって、元旦那を山羊人間にしただけ。それって、元旦那がベラにしようとしたことと同じじゃないの。パンフレットに書かれた自分の力で真の自由と平等を見つけた結果がこれなの?エキセントリックな人物や壮麗な美術などに飾られてはいるが、中味は退屈な話。哀れなるものたちって、こんなものを高いお金を払って2時間以上も見せられる我々観客のことか? と、長々と拙い文で文句を書いたが、見に行く価値がないのかと言えば、そうではない。傑作だと言う人もいる。それはそれでいい。いろんな見方が出来る映画だから。出来れば、友達や恋人、夫婦など複数で見に行って、見終わった後、意見を交換しあったらいいと思う。それでお互いをもっと理解することが出来るなら、それも映画の魅力のひとつだから。
タイトルなし(ネタバレ)
20世紀初頭の物語。
ある時、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は出産間近の妊婦の死体を手に入れた。
母親は死んでしまったが、胎児はまだ生きている様子。
ゴッドウィンは、胎児の脳を母親に移植し、電気ショックで蘇らせることとし、手術を敢行。
女性は蘇生し、ベラ(エマ・ストーン)と名付けられた・・・
といったところからはじまる物語は、『フランケンシュタイン』の怪物のバリエーション。
幼児脳のベラがゴッドウィンの屋敷内で奇異な行動する前半はモノクロで、怪奇映画っぽい雰囲気が漂います。
その後、放蕩者弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて世界に飛び出してからはカラー。
つくり込まれた美術の豪華さなどに目が惹かれます。
ベラの脳は急速に発達するも社会規範を身につけるまでには至らず、本能と欲望が底辺にありつつも、男性優位の社会規範に対して本能的に否定的忌避的行動をします。
そのうちのひとつが性衝動で、ベラはそれを隠すことをしません。
船上で出逢った進歩的老婦人の助言で本を読むようになったベラは、まさに啓蒙され(蒙を啓かれ)、彼女なりの論理的行動をとるようになる。
が男性優位主義の権化のようなダンカンは、ベラの論理的行動を非倫理的と受け取り、赦すことができない・・・
と後半になると、旧弊な男性優位主義対進歩的な女性意識という主題がはっきりしだし、その分、笑いのツボも増えてきます。
(前半も、ベラの奇異な行動を笑うことはできるのですが、いかんせん笑っていいものかどうか、観ている側としては躊躇せざるをえない)
ただ笑えるようになる分、主題の浅さも同時に感じるため、逆にちょっとツマラナイ、とも言えるでしょう。
さて、冒険旅行の果てに今際の際のゴッドウィンの屋敷に戻ったベラは、かねてからの婚約者、ゴッドウィンの助手の青年と結婚と相成るのですが、そこへ現れたのが生前のベラの夫の軍人。
彼がダンカン以上の男性優位主義者で・・・
この後は書かないことにしますが、へへへ、そういうオチね。
って感じ。
馬鹿は死ななきゃ治らない、いやいや、死んでも心は入れ替えられない、ならば・・・
豪奢な美術、エマ・ストーンの演技、魚眼レンズを使った異化効果のある撮影など見どころは多いのですが、後半、主題が立ち上がってからは、むかしから怪奇映画を見慣れた身としては幾分失速かな。
『フランケンシュタイン』の怪物のバリエーションではあるのでが、思い出した映画は次の2本。
ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を映画化した『まごころを君に』と、女性の胎児に成長促進剤を投与する怪奇劇『エンブリヨ』。
どちらもラルフ・ネルソン監督作品。
前者は引き合いに出される機会もあるかと思いますが、後者『エンブリヨ』は口端に上ることも少ないだろうから、ここに記しておきます。
こんな映画に出れるなら、私も脱ぐ。
ギリシャの若手、、、と言われてたころが懐かしい。今では世界のヨロゴスですわ。
ギリシャどこいったー 草。
レヴューも400越えでインパクトの程が伺えます。パンフも売り切れじゃった。地名は既存のものですがSFファンタジーの素晴らしい原作(未読)。ヨロゴス監督が10年程前、直接原作者に会ってお願いしたという気合いの入った作品です。
死んだ妊婦にお腹の胎児の脳を移植するという発想がもはや軽くフランケン越え。
そこから人という生物の誕生、二足歩行、自我の芽生え、自立、知識、思想、男女平等、ジェンダーレスと人間の歴史、進化の過程をエマストーンが脱ぎっぷりもよく頑張った。生物として進化する過程で人間の様々な問題を描いていく身体と精神の旅の話なんで脱ぎ過ぎとは思わない。
人工的なモンスターではあるが、最終的に人間としてむしろ高い完成度となり、自分の根本にある問題解決に挑む、、、というヨロゴスにしては珍しいハッピーエンドのフランケンシュタインです。
作品規模がデカくなりどん美術が凄くなってます。
ブダペストのスタジオで、全てKodakのフィルムで撮影してます。エクタクロームは16mmしかなかったのをKodakがわざわざ35mm今回用に生産した模様。
しかし情報量多いセットで広角レンズガンガン振り回すのまじキツい。「女王陛下の、、」でもそうだったの思い出した。なんとかならんかのう、、、、。
音楽も素晴らしくて帰りにDisk union行ったけどレコードとDLしか現状ないらしい、、はよCDだせ。
これは冒険なの?
映像は楽しく、ゴシックロマンスの世界に浸れる。映画館まで観にいく甲斐はあった。
ストーリーは手塚治虫のブラックジャックの読者であれば、そんなに奇妙奇天烈とは思わないのでは。ただ、あれは漫画ならではの世界観だった。昭和の午後の光が緩く差し込む子ども部屋で貪り読む漫画。その背徳性めいたものが剥がれ落ちていく気がする今日この頃。
弁護士と駆け落ちしたベラの精神は急速に成熟。船で会うウィットある貴婦人とのやり取りが楽しい。売春宿だけではなく、もっと街の集会に行く様子などを見たかった。
ただ私が男性目線で彼女を見た場合、はたして女性としての彼女に溺れるだろうか。色気もなければ神秘性もない。馬車が走っている時代にアンドロイドを妻にしたいとは到底思えない。そして多くの男性が望む女性の若さ。主役の年齢だとかなり外れていないか。
男性たちの憧憬は、ベラを社会に参加させるための映画のお約束として、男性優位の社会から見事に自由を勝ち取ったベラに快哉を。しかし、そもそも時代背景が違うから、現代の目で見れば至極当たり前だし。哀れなるものたちは、しぶとく残ってはいるけれど、影は薄くなった。いいことだ。めでたい。
だんだんテーマが不明になってきた。
哀れなる“もの”たち
まれにみる完璧な映画
瞬きするのがもったいないほど!
造形、アングル、衣装、演技、ストーリー、音楽、照明…
映画を構成している要素は数えきれないほど沢山ありますが
ワンシーンワンシーンが完璧で刺激的で、貪るように観ました。
とくに『メトロポリス』『カリガリ博士』テリー・ギリアム監督好きはハマると思います。
あくまでも個人的な好みの問題ですが
『籠の中の乙女』でぶっ飛んで
『ロブスター』でハマり
『聖なる鹿殺し』に心酔した私にとって、
実は『女王陛下のお気に入り』は、さほど刺さる映画ではありませんでした。
『哀れなるものたち』は、エマ・ストーンとの再タッグということもあり、あまり期待していませんでしたが、自分で観ずに勝手な判断をするのはいけません。
私的にはヨルゴス・ランティモス監督最高傑作!
こんな映画を作ってしまって、次の作品が撮れるのか?と心配になるほど。(←大きなお世話)
『哀れなる“もの”たち』平仮名なのがミソ。
さて、気になるオスカーの行方は??
エマ・ストーンは既に『ラ・ラ・ランド』で主演女優賞をもらっていますが、この演技は無視出来ない!
少しでも子育てに関わった人ならわかるでしょうが、赤ちゃんは可愛い悪魔です。
好奇心の塊ゆえに、残酷でもある。
おっぱいをあげてたらふいに乳首を噛まれて、「痛っ」と顔をしかめたらニヤリと笑われた…なんてことも、あるあるですよね。
一粒の水滴が起こす波紋のように、自分の起こしたワンアクションが他のものに影響を与えて変化が起きるのが楽しくて仕方ない。
飽きるまで繰り返して、周囲を怒らせたり悲しませたりして、徐々に社会性を身につけていく。
常識や道徳に囚われない、見事な演技でした。
自己中心だった赤ちゃんは、様々なことを感じて、観察して、吸収していきますが、人間として一番大切なのはイマジネーションだと感じました。
自分ではない他者の存在を知り、立場や気持ちを想像できること。
戦争だの弾圧だの、人間が起こす不幸な行為は全て、自己中心の赤ちゃんのまま体だけ大人になった人たちがやらかしている。
そして、想像できる心は新たなものを創造する原動力にもなる!
でも、この映画の本当にすごいところは、決して他者にはなれない隔たりと、知的好奇心の残酷さをしっかり盛り込んでいるところ。ものすごいジレンマに、心が掻き乱されて悶絶しました。
女性の“商品価値”についても考えさせられます。
嫉妬や束縛など、その人を独り占めにしたい気持ちはとてもわかりますが…それって本人の主観や人格を無視した所有欲なのかも?
『Poor Things』『哀れなる“もの”たち』
平仮名に調理したシェフを呼べ〜!
全659件中、221~240件目を表示