劇場公開日 2024年1月26日

「世界を知れば、世界を手にできる」哀れなるものたち 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世界を知れば、世界を手にできる

2024年2月17日
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鑑賞方法:映画館

まず、想像したよりグロかった。そしてエロい。それなのになぜか清々しい。それは、この映画が人間賛歌を謳っているからなのだろう。人間の愛欲を皮肉たっぷりに描く、成長物語、冒険物語だからだろう。人造人間と言えば、フランケンシュタインかキャシャーンかって思い浮かぶけど、このベラの陽気さはチャーミングだったし、知能、感情、性欲、理性がぐんぐんと発達していく様は見事だった。エマ・ストーンの演技の賜物だった。邪悪なものを憎み、哀れなるものを慈しみ、未知の世界に貪欲に、閉じこもることを好まず、果てしなく広がる世界へと恐れずに足を踏み出していくベラの魅力。美しく、新鮮で、不穏で、奇妙。性的な興奮でさえ背徳的なものと思っていない。そんな純粋なる人造人間を前にして、むしろ生身の人間の浅ましさが浮き彫りになるのが滑稽とも思えた。
そして最後、ベラの聡明なる笑顔を見た時、「ベラに幸あれ」とエールを送りたい気分で満たされた。

栗太郎