劇場公開日 2024年1月26日

「手塚治虫📖ブラック・ジャックへのオマージュ。2024/3/15再見(夢売劇場 サロンシネマ)。初見と全く話だった・・・( ̄▽ ̄;)」哀れなるものたち mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0手塚治虫📖ブラック・ジャックへのオマージュ。2024/3/15再見(夢売劇場 サロンシネマ)。初見と全く話だった・・・( ̄▽ ̄;)

2024年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

🎥ラビレンス、🎥ミツバチのささやき、もちろん🎥フランケンシュタイン、🎥ヒステリア、などのゴシックロマン映画へのオマージュをベースに、手塚治虫の作品賛歌の素晴らしい映画作品となっている

またあらゆる場面や撮影手法に、絵画から写真を経て映画へと進化する様がシンクロしててまさに映像のビルドゥングス・ロマン。セザンヌ、マネ、ルノワール、レンブラント、ゴヤ、エッシャーなどの名画の画面がそこここに散りばめられてるほかに、カメラ・オブスキュラから覗いたかのような画角が何とも言えないセンス・オブ・ワンダ―に誘う。

内容的には手塚先生作家活動30周年記念で始まった📖ブラック・ジャックのスピンオフで、ピノコのその後の物語をベースにしたエマ・ストーン版📖リボンの騎士に扮したピノコの成長譚であると同時に、傑作📖メトロポリスをベースにしたリスボンなどの未来都市を駆け抜ける完全有る手塚漫画へのオマージュとなっている。なんとヨルゴス・ランティモス監督はかように手塚ファンであったのかぁ~思わせる作品。手塚マニアには超お薦め。

と書いたのだが・・、映画仲間から本編の2/3を爆睡しており、全く内容を把握していないとの強い批判があり再見。全く違う話であった・・・手塚の影響は皆無。これは恐らく舞台となった20世紀初頭のヨーロッパにおける女性を取り囲む環境をテーマに国家、宗教、戦争、経済(資本主義)、倫理、科学の持つ支配性、誤謬性などを炙り出し、またその権威によって支配してきた女性の生理や性の目覚め、自由と権利の獲得をテーマに映画いた作品で、🎦ヒステリアや🎦ドリームに通じるテーマを内包する。従来女性の性的抑圧をテーマにした作品は魔女狩りに端を発する歴史を持つヨーロッパでは長い間宗教的に支配する事でオカルトチックもしくは超常現象的な現象として描かれることが多かった。🎦キャリーなどがその典型であろう。しかし本作品における主人公ベラはその生い立ちの設定の奇異さから従来の通説に捉われることなく、歴史上の女性とはかなり違ってまず自由が与えられている。それは神(創造者・父・)によってである。その父もまた時代の背景の中で特殊な生い立ちを持つ。神から与えられた自由を謳歌しつつも、ベラは徐々にその奔放さの中に芽生える知性と如何なる事象に対してもフィルタリングしない奔放さと自由さで人格を形成していく。その様はまるで当時の社会を解剖し検証し再構築しようとするかのように、一切のタブーのない世界から社会の心理と本質を見極めようとする。ベラという一人の女性の経験した二度の人生を通じて、女性が当時置かれていた環境から一度の死を経て再生し、様々な快楽を経験しつつもそこから真の人格を形成する壮大なるビルドゥングスロマン。エマ・ストーンのすべてをさらけ出した演技も相まって圧巻の作品となっている。様々な歴史的絵画やイメージを取り込みながら映像的にも実に実験的なチャレンジをしてそれだけで論文が一つ行けそうな作品でありパフスリーブにスカートやコルセットを合わせない独特のファッションの推移で女性の自立への道が引喩されている仕掛けも注目に値するであろう。まごう事なき傑作。

mark108hello