「ゴッド医師の大きな愛」哀れなるものたち かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴッド医師の大きな愛
始まりはモノクロ、いつの間にかカラフルな色彩を帯びた世界になっているのは、ベラの脳内世界の反映なのだろう。
美術や衣装が独特で、グロさもエロも相当なものなのでそちらに目を奪われるが、内容は割りとシンプル。
男性優位社会で、女性に求められる社会的態度を一切知らず、破竹の勢いで内面を成長させていく女性が、「オンナは男の所有物」と考える男たちを知らず知らずに破滅に追い込む、ある意味痛快なお話。
ベラには「社会性」がないが、それが故に卑屈になったり他人を羨んだり陥れたりという、周囲から身を守るために身につける様々な処世術や感情がない。女性のみに期待される態度なんて知りようがない。
余計な思慮がない分考えと行動が合理的でストレートなので、お金がなければ稼げば良い。そこで娼婦をするが卑屈じゃないので悲惨さもなく、「仕事」として積極的にカイゼンを提案したりで、むしろ気高い感じがする。
彼女がまっすぐに育ったのは、ゴドウィン医師の育て方にあるだろう。
医師は自身、毒親(というよりキチ親)の科学的(医学的?)興味の実験台にされ凄惨な虐待を受けてきたが、彼はそれを虐待と思っていないようだ。父に恨みを抱いているわけでもなく、事実として淡々と受け入れている。医師自身の興味も行動も異様だが、純粋に科学的・医学的興味からのもので、ヒトとしての性質は全然歪んでいない。(もしかするとヒトらしく負の感情を持つ機会もない育ち方だったかも。)
なのでベラを、どろどろした感情のはけ口ではなく、純粋に科学的興味から蘇生させて育てており、彼女の成長の過程を、できる限り抑圧を排除し彼女が自ら育つままにして、目を細めて見守っている。明らかにヤバい男と出ていこうとするのを敢えて止めないのも、彼女の意志を尊重するから。
これは愛だ。彼は気づいていないだろうが。
二代目クリーチャーに素っ気なくするのも、彼女に思い入れないようにしたいから、というゴッド医師が、何だか可愛そう。
リスボンのあたりまで退屈で早く終わらないかと思っていたが、船の上でマーサ、ハリーと親密になるあたりから盛り返した。ただし、やっぱり長い。
エマ・ストーンの潔い脱ぎっぷり、それどころか組みっぷりが凄い。これだけ経験したらベラの冒険心も満足したんじゃないかと思う。間違いなく18禁です。
マーサは、ハンナ・シグラだったか!
ベラを「創った」天才医師ゴドウィンはマッド・サイエンティストかもだが、大きな愛で彼女を包み、ゴッドの助手でベラの婚約者マックスも、彼女を自身の所有物にする気がなくヒトとして彼女を愛している。彼に目をつけたゴッドは慧眼だ。
幸せの決め手は「愛」だと思った。
時々出てくる、魚眼レンズの目を通してみたようなショットは何なのだろう。
もしかして神(ゴッド)の目!?
こんにちは
いつも共感そしてコメントありがとうございます。
かばこさんも、深い洞察で、いつも考えさせられます。
そうですね。
「哀れみ」は他者に対して感じるもので、時には優越感を感じつつ、
なんてこともありますね。
原作があるらしく、チラッと読んだら相当にもつれにもつれた
状況みたいでした。
仰る通り、ベラは負の感情も習得していったのでしょうね。
「インサイドヘッド」は続編が公開されるのですか?
かばこさん
共感&コメントありがとうございます。そう、封切り直後に鑑賞したため本当にどう観てどう解釈すればよいのか悩みました。ただただスゴイ映画だと思います。
humさん
私はあのラストに溜飲が下がりました。ヤギか~い!って
「仕返し」しない(できない)と、舐められてしまうのも哀しいかな人の社会なので、ベラはますます進歩して、そのうち「狡猾さ」も身につけるのでしょうか。
返信ありがとうございます。
仕返しについての考察、そうかもしれないですね〜。
たしかにそれまでの彼女にはなかった!
元夫の差別的思考やパワハラなどをフラッシュバックさせるように〝理解〟した結果でしたね。
しかし、あの姿はなんとも…😱
talismanさん
ありがとうございます!
>自分の体が感じることを禁じる他者は一体どこからそんな権限を得ているのでしょう?
そうですよね。他人に禁じられるいわれはないです。
映画も、ベラも、最初から最後まで理路整然、なので根拠のない慣習に、なんでこだわる必要があるか?と改めて常識を疑ってみるようです。