劇場公開日 2024年1月26日

「衝撃! 色々な意味で」哀れなるものたち 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0衝撃! 色々な意味で

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

映画賞でも話題の本作だが、エマ・ストーンが数いるハリウッド女優の中でもお気に入りなので、それだけで楽しみにしていた。

【物語】
ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は外科医。医学の探求のためには子供をも実験台に使う外科医の父親に育てられ、バクスター自身も何よりも探求を優先する医者となった。結果、天才的な技術と知識を修得したのだった。

バクスターは遺体を引き取り、自宅で解剖して医学探求することが日常だった。あるとき街で美しく若い女性の自殺に遭遇する。遺体を前にしたバクスターは命を失いながらもほとんど損傷していない新鮮な肉体に興奮して持ち帰る。 臨月と思える女性のお腹を見てベクスターあることを思いつく。胎児を取り出し、胎児の脳を女性の脳として移植する。その上で蘇生を試み、奇跡的に成功する。

ベクスターは生き返った女性をベラ(エマ・ストーン)と名付ける。ベラは大人の体でありながら、新生児の脳というアンバランスな人間だったが、言語・歩行・知識等を急速に習得して行った。 バクスターは彼女の成長を研究材料として医学生に日々記録させていた。

あるとき、バクスター邸を訪れた放蕩(ほうとう)者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)は美しいベラに魅せられ、一緒に世界を旅して周ろうと誘う。それまで家の外へ出ることを許されていなかったベラには「世界を自分の目で見たい」という強い欲求が生まれており、バクスターの下から出て行ってしまう。

ベラは、旅の中で常識や偏見の無い少女の目線で、人間の欲求、社会的格差、差別、利己等、人・社会が抱える課題・問題を貪欲に学んでいく。

【感想】
いろいろビックりなのだが、一番はエマ・ストーン。
「大胆なシーン」という記事の見出しは目にしていたが、ここまではとは想像していなかった。どんなかは観て確かめて欲しい。

作品の内容的には観方によっては相当深いものなんだと思う。
思考の浅い俺にも感じられたことは、常識や先入観の無い子供の目線で大人社会に入っていった時に見える大人社会の滑稽さ、矛盾、課題といったところ。

まず性を人間の根源的欲求として捉えているかと思う。確かに動物は種を残し、増やすことこそが最大のミッションだと考えればそうかも知れない。
ベラは性を仕事にして生活に必要な金を稼ぐことに何の罪悪感も嫌悪感も無い。「それが何か?」って感じだ。 それも作者が強く言いたいことだったのか? 良く分からないが。

人の身勝手さや社会格差も浮き彫りにされる。
そう思って観れば、様々なシーンに様々な問題提起がありそう。そういう(シーン1つ1つに作者の意図を探す)見方がお好きな方は答え探しをしながら観るのも良いかも。
俺はそういう見方は得意じゃないので、具体例をあまり挙げられないけど。

そしてラストにはぞっとするような怖さも。

原題はPoor thing
今回の邦題は的確なんだと思う。改めて調べてみるとpoorの意味は「貧しい」が最初に浮かぶが「可哀そうな」という意味があるし、thing には「人」の意味で使うこともあるらしい、知らなかった。
「一番哀れな人はて誰?」というのが、観客への問いかけなのかな?

いずれにしても、「ピュアな目で世の中を眺めたら」を作品にするのに、ベラ誕生の設定を考え付いた作者は凄い。凡人にはとても思いつかない発想。

泣き虫オヤジ