劇場公開日 2024年1月26日

「言語化するのがもったいないくらいの芸術作品」哀れなるものたち ともさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0言語化するのがもったいないくらいの芸術作品

2024年1月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

グロテスクながら幻想的な世界観で「生」を表現していた。
身ごもっていた胎児の脳を移植された女性が、赤子から大人へと成長する過程を描いてる。ただ大人になっただけではなく、アイデンティティや深い思想をもった女性になる過程。

トム・ソーヤーの冒険のように、国から国へと様々な場所を冒険し、様々な人間と出会い学ぶ主人公。新たな世界と出会い、感動したり、快楽に溺れたり、悲しんだり、怒ったり、、、みずみずしい主人公の反応に目を離せなくなる。

老婦人とハリーという異なる思想をもった人達と対話をして影響をうけ、貧富の差の現実や暴力、その他にも風俗店での違和感や社会主義者の女の子との出会いなどを受けて、より自分で考えて自分がなにがしたくてなにをできるのか真剣に思想する女性へ。

恋をする、まだ見ぬ世界への好奇心から奔放な男と付き合う、男がメンヘラ化、風俗店で働いてみる、優しい男との愛に落ち着く、+‪支配的な男との関わりも…!
と言った具合の、主人公の経験が結構女性あるあるな気がする…!
少なくともこれは、人間として成長していく話でありながら、女性による女性のための話だなぁと思った!

お気に入りは、リスボンのシーン。街は花々に彩られていて美しく、主人公が食や音楽やセックス、見知らなかった新たな世界を貪る様は、「初めて知る生の喜び」という感じがした。
ダンスのシーンが特に好き。野性的で、音楽全てを表現するようなダンス。もう1回みたい。
下からのアングルでリスボンの美しい世界を映すので、自分も一緒に子どもになって世界を見ているような気持ちになった。たぶん彼女が強く感じとった音や視覚情報が強調されるように映されていると思うんだけど、(怒鳴り声や赤子の泣き声など)それも相まって主人公と一心同体のような気持ちで世界を見ることができた。
上を見あげたときに、空を走っている電車が目に入ったときなんて、主人公と一緒に「わぁ〜」と声をあげそうになった!

全編にわたって、重要な要素やメッセージが分かりやすく言語化されているので、芸術的な世界観ながら難解ではないのがよかった。
音楽や映像が本当に良くて、エンドロールの最後まで目が離せなかった!
あとはジョークや笑えるところが、「イギリス!!」って感じの皮肉多めなジョークで私は大好きだった笑
黒ヤギさん移植が痛烈でいっちばん笑った笑

色んな要素が入っていて、立場や視点によって多様な感想がでてくる、本当に魅力的な作品でした!

とも