「変化を恐るる勿れ」哀れなるものたち @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
変化を恐るる勿れ
作品を通して女性の権利の歴史を見ているようだと感じた。
無垢で純粋な女性像を男性に押し付けられる。
言葉を知り、自我に目覚めて世の中を知る。
性について体感し、他者の価値観を知る。
物事の表裏を見て、絶望を味わう。
己を知り、自由意志を獲得する。
終始、気持ち悪いなぁ。と感じながら鑑賞していた。
気持ち悪いと感じた原因は、ベラに対して対等に話をする異性がいないこと。
女性は男性に庇護と管理される存在であるべきだと言う社会通念が事あるごとに描き出される。
男性にとって、無垢で哀れで扱いやすい女性。
男性の三歩後ろを歩くのが素晴らしいとされていた女性が描かれる。
セックスを目的とした、搾取しても良い存在の哀れな女性。
容姿端麗でルックスを武器に男性に媚を売るファムファタール的なセックスシンボル的な女性が描かれる。
主人公のベラを通して、その時代に求められていた女性像が描かれている。
無垢で純粋な女性であった時の序盤のベラと物語も中盤に差し掛かった頃の本を読み、知識を身につけたベラの表情や考え方はまるっきり違ってくる。
井の中の蛙大海を知らず。
世の中に出た事で初めて自分の立ち位置に気づいていく。
無一文でパリに着いた後は娼館で体を売って生計を立てる。
結局、男性に求められ、選ばれる場所にいる方がお金は安易に稼げてしまう。
ダンカンに売女と罵られても、自分の体でお金を稼いでいると言い放つベラは潔い。
ロンドンに戻ってから、自分の生い立ちを知った後もベラの変化は続き、最終的には自分の行く末を決めることのできる立ち位置までやってきて幕引きとなる。
人は変化していく生き物である。
自身の変化だけではなく、時代の価値観も変化している。
何事も前向きに捉えて肯定的に物事を吸収していく柔軟性を持ち合わせていくことが、生き物としての次のステップに足を踏み入れることになるかもしれない。