「不協和音な寓話」哀れなるものたち かぼさんの映画レビュー(感想・評価)
不協和音な寓話
予告編でエマ・ストーンとウィレム・デフォー、マーク・ラファロが出てて、
見た感じジャン=ピエール・ジュネのロスト・チルドレンぽいので、期待して観に行く。
期待してたのではありませんでした。
以降、あくまで私的感想なので、
この映画をお好きな方は、ごめんなさい。
変種のフランケンシュタイン物で、
幼児の脳を持つ主人公が、自立した女性になる話で、所謂フェミニズムの映画の様で、パンフレットのコラムもそれを謳ったものが掲載されてますが、ラストシーンのシチュエーションの性別を入れ替えてもわかる様に、ソレさえも嘲笑っている様な気がしました。
ラストで主人公は、都合の良い夫、肯定し続けてくれる友人、従属関係だけの使用人、奇異な実験動物、復讐の成れの果ての山羊に囲まれて、微笑むのですが、それらを含めてPoor Thingsなのでしょう。
観るきっかけとなった映像も、確かに色んな様式のごった煮の美術や衣装を使い、ある世界感を構築しようとしてる風ですが、
パッチワークの様で作者のアクというか、美意識の様なモノが感じられず、浅い上澄みの世界感だと思いました。
こう言う絵作りは、印象的なシーンが必ず残る物ですが、私には残りませんでした。
強いていえば、術後の主人公の目覚めるシーンで、これもラング作メトロポリスのアンドロイドマリアのシーンの引用でしかなく、雰囲気だけのものでした。
悪趣味な所まで昇華される事もない、平坦なアートの羅列の様に感じました。
唐突に意図が感じられない広角レンズに視点が変わるのは、歪んだ世界の描写として成功してるとは、私は思えなかったです。
その視点が気になってノイズとなって、疑問のまま見続けたのですが、あるシーンで音響が、執拗に不協和音を奏でる所で、この映画の意図を理解した気がしました。
エロスもグロテスクも装いだけで、
根源的なものに迫る訳でもなく、
音響も映像も不協和音で綴り、
描かれた物語もフェミニズムを謳う様で嘲笑う、ニヒリズムにはちょっと乗れないなぁと。
作者のニヒリズムは、まるで観客も含めて、
お気の毒さま(Poor Things)と言われてるみたいで。
なので私は、この作者の立ち位置が不快です。
コメントありがとうございます。
"寓話"という観点が僕には無かったのと、"広角レンズ=歪んだ世界の描写には成功していない"の件は共感したので押させていただきました。
やっぱり、自分と真逆の意見は参考になります。
共感ありがとうございます。
ストーリー的には自分もあまり新鮮さを感じませんでした。この作品は美術と役者の熱演で出来てると思います。エマストーン受賞式でミソ付けちゃいましたね、ミシェルヨーの作品も似たような感じだったのに。
返信遅くなりました。読んでみた感想は、原作も原作者としての男性目線だと思います。男性なのですから、当たり前なのですよね笑。フランケンシュタインは女性作家らしい悲哀、承認欲求と現代にも通じるフェミニズムが描かれている気がします。原作はそれらをオマージュされていると思います。映画は、かぼさんの指摘のように、処女性の獲得とも取れますね。私には解らない点でした。上の書き方だと誤解がありましたね。すいません汗。
私はこの映画⭐︎5にしましたが、こちらのレビューすごく面白くてコメントしてしまいました😳最後の観客にもPoor thingsというところ、鋭すぎて大共感です😂
かぼさん
合わないかも、と思いつつ劇場に足を運んだのですが、人の哀しみや可笑しみがじわじわと刺さる作品でした。
演者、中でもベラを演じた娘さんの母でもある女優エマ・ストーンの潔さに脱帽!といったところでしょうか。
共感ポチ有難うございます (^^)
はじめまして、共感ありがとうございます。私的に何も残らない作品でした。それが不思議で原作を読みました。男性が解釈するフェミニズムと女性がフランケンシュタインを解釈したオマージュとの違いなのかもしれません。原作は2人の回顧録ミステリで、その部分を省いてしまった事、ラストで急に原作から逸脱した着地にした事が問題かと。唯一良い点を挙げるなら、古典ゴシック風作品をスチームパンク調の街並みで表現されていることでしょうか。
それらを含めてpoor things
観客も含めて…
すごくドキリとしたレビューでした。
違和感をのこしたものの奥をみた感じです。
評価はまるで違うものになりましたが、そのあたり、目からウロコの参考になりましたので、共感させてもらいます。
私の評価は、良くぞこんなにわかりにくい作品を作りました!というねぎらいからで、どちらかといえば苦手寄りですw
かぼさんのレビューはとても説得力あり、タイトル回収の仕方もお見事でした。
かぼさん、こんばんは。
気持ちの良いレビューですね。
何故か清々しく、心地良い感覚になりました。
私が今作苦手なのは、実は映画そのものではなく、ダンカンの下りなのです。若い時の自分そのもので、自己嫌悪に陥ってしまったからです。
笑い飛ばしたはずなのに、あぁ、馬鹿そのものだと、見事に思い出させたくれたからです。
共感ありがとうございました。1930年生まれの作家の1990年に出した19世紀のイギリスが舞台のゴシック奇譚を映画化して、無理くり女性の自立がテーマとするのはちょっとあまりにも作為的。歪んだ異形の世界はむしろ残酷な虐待の連鎖。オッペンハイマーとキラーズオブザフラワームーンじゃ悪~いアメリカそのものなので、こんな作品を候補にせざるをえないなんて なんて poor thing なんでしょう。
関心領域と落下の解剖学に期待してしまいます。