「すっごい悪趣味な世界観と変態的な情操教育なので、子どもには見せられません!」哀れなるものたち Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
すっごい悪趣味な世界観と変態的な情操教育なので、子どもには見せられません!
2024.1.26 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のイギリス映画(142分、R18+)
原作はアラスター・グレイの小説『Poor Things(1992年)』
ある実験にて幼児化した女性の成長を描くヒューマンドラマ
監督はヨルゴス・ランティモス
脚本はトニー・マクマナラ
原題は『Poor Things』で「かわいそうなものたち」と言う意味
物語の舞台は、イギリスのロンドン
ある橋から身投げした女性(エマ・ストーン)は、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)に助けられ、ある実験対象となった
それは身籠っていた胎児の脳を移植すると言うもので、それによって女性は「脳は幼児、身体は大人」と言う個体として復活する
ゴッドウィンは彼女にベラと言う名前をつけて、助手のプリム夫人(ビッキー・ペッパーダイン)とともに、彼女の成長を促していくことになった
ゴッドウィンは医学生のマックス・マッキャンドルズ(ラミー・ユセフ)をベラの記録係に指名し、彼は真面目にベラの生育状態を克明に記録していく
ベラはマックスを気に入り、ゴッドウィンは二人を結婚させようと考えていた
その結婚契約書をの作成を頼まれた弁護士のダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファエロ)は、この契約で結婚しようとするベラと言う女性に興味を示す
彼はベラにこの契約は不当で、もっと世界のことを知るべきだと諭す
ベラはその考えに感化され、ゴッドウィンに結婚前にダンカンとともに冒険をしてくると言って一緒に行ってしまうのである
物語は、ダンカンとの冒険を描く中で、彼女が精神的に成長し、世界を知ると言う内容になっていた
自分が恵まれた状況であると知り、男女の仲で育まれる性的な欲求を堪能し、最終的には娼館にて働いて、自立していくことになる
その行く先々で色んな人物の価値観にふれていく中で、ベラの人格が形成されていくのだが、人間が大人になるために必要な要素をぶち込みまくっていると言う印象を受けた
性的な探究心では、多くの性癖を持つ変態が登場しまくり、無修正に近い性交が描かれまくる
文字通り「まくる」と言う感じで、合計10回以上のセックスシーンがあったりする
ノーマルな体位変換から、性教育を施す子どもと親と言うものまで登場し、それによって培われる人間哲学が正しいのかすらわからないと言う感じになっていた
登場する男性は基本的にバカで愚かと言う感じになっていて、女性の奉仕活動に多くの時間を割きつつも、学んでいくことはたいしたことがなかったりする
変態性の強い映画で、カップル&ファミリーだと地雷案件としか言いようがないので、誰かに紹介することは憚られる内容であると思う
ぶっちゃけ、「ちょっと長いわ」と思いながら観ていたが、それは着地点がはじめに提示されているものの、回り道ばかりしていく流れにイライラしてしまうからではないだろうか
いずれにせよ、監督が監督なのでヤバいんだろうなあと思っていたが、想像以上の変態映画で驚いてしまった
知的障害に見える幼少期、発達障害に見える青春期を迎えて、性的な衝動が落ち着くと思考的な欲求が育ってくる
このあたりからダンカンがただのわがまま幼児に見えてくるのもツボで、その先に人生を知るために娼館で働きながら、世の中の男性の変態性を学んでいくと言う流れはコメディ以外の何物でもないと思う
最終的に、経験豊富なベラを無条件で受け入れる王子が登場するのだが、抑圧よりも自由を選ぶところが今風ということなのかもしれません