「【”解放。”哀れなるもの:女性の自立を認めずに自身の籠の中に閉じ込める者。今作は蘇った女性が様々な土地を旅する中、経験を積み再び赤子から大人に成長する過程を、壮麗な美術を背景に描き出した作品である。】」哀れなるものたち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”解放。”哀れなるもの:女性の自立を認めずに自身の籠の中に閉じ込める者。今作は蘇った女性が様々な土地を旅する中、経験を積み再び赤子から大人に成長する過程を、壮麗な美術を背景に描き出した作品である。】
ー 冒頭、カラーで独りの青いドレスを身に纏った若き女性が川に身を投げる。理由は描かれないが、最後半に登場する彼女の夫である愚劣極まりない女性蔑視のアルフィー(クリストファー・アボット))の所業を見れば、理由は分かる。-
◆感想
・冒頭のシーンの後、画はモノクロになる。そこでは、ベラ(エマ・ストーン)と呼ばれる女性がゴッドウィン博士(ウィレム・デフォー)の邸宅で、赤子の様に振舞っている。
ー 冒頭、身を投げた女性に何が起こったかは、ゴッドウィン博士の台詞”死後硬直も起こしていない状況だったため”処置”は上手く行った。”で分かるが詳細は語られない。
だが、ショットで映される人間の頭を開き、その中の脳が見える絵の数々から推測できる。-
・ゴッドウィン博士はベラの面倒見も含め、マックス(ラミー・ユセフ)を助手として邸宅に住まわせる。
ー 因みにゴッドウィン博士の顔面はフランケンシュタインの様である。彼の言葉から察するに、彼の同じく外科医で社会の発展のために息子の身体で様々な実験をした父の行いらしい事が、推測できる。ー
・徐々に知恵がついて来たベラは外の世界を見る事を欲する。冒頭のシーンがそれを裏付けている。
そんな彼女に近づいた放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)は彼女をロンドンからリスボンに連れ出す。そして二人は”熱烈ジャンプ””=セックスに耽溺し、ベラはエッグタルトの美味さに目覚めていく。
ー ベラが、徐々にダンカンの世界から自身の世界観、価値観を持って行く過程が巧く描かれている。因みにこのシーンからモノクロからカラーに戻る。
ヨルゴス・ランティモス監督の感性が光る部分でもある。-
・ベラは更に船上で老婦人のマーサと黒人青年ハリー(ジェロッド・カーマイケル)と出会い哲学や読書の魅力を学んでいくのである。
ー ベラが読書しているとその本を二度も、海へ投げ込む愚かしくも、面白き、ダンカンの姿。ダンカンの世界から離れ、知識を得て行くベラ。 ー
・アレクサンドリアでは、ベラは塔の上から地面を眺めると貧しき人たちが多数居る。彼女はその姿を見て涙し、ダンカンが賭けで勝った金を含め全財産を彼らに与える様に船員へ伝える。
ー 当然、ベラとダンカンは文無しになり、ダンカンは怒るのであるが、ベラは気にしない。この辺りから、ダンカンの人間としての底の浅さが鮮明になるのである。-
・パリで船から降ろされたベラとダンカン。雪が降る中、ダンカンは傘を指し何も出来ないが、好奇心旺盛なベラは宿探しに出る。出会った老女は娼館の主であり、ベラはそこで娼婦として働き始める。客一人30フラン。だが、彼女はそれを楽しみつつ娼館の売れっ子になるが、ダンカンは身を売った彼女に激怒し、別れる。
ー そして、知恵が更に付いたベラは、稼いだ金で医学を学ぶのである。ー
■余命僅かとなったゴッドウィン博士の事を書いた手紙が舞い込み、ベラはゴッドウィン博士の邸宅に戻る。
そして、婚約者だったマックスと結婚式を挙げようとするのだが、そこに現れたアルフィーと背後にこそこそ隠れている愚かしき男、ダンカン。
ベラはアルフィーの邸宅に戻るが、アルフィーの執事、お手伝いに対しての横柄な態度を見て、ベラは自身が身を投げた理由を思い出して行くのである。
そして、自分の本当の名がヴィクトリアである事も・・。
更には、自分の脳は自らのお腹にいた子供の脳である事も知った彼女。
逆に、彼女の自由奔放な姿を見たアルフィーは、彼女に睡眠薬を飲ませ彼女の股の間にある女性に取って性愛を感じるモノを切り取る事を画策するが、ベラはそれを耳にしてしまう。
そして、拳銃を向けるアルフィーに対し、ベラは決然と対峙し渡された睡眠薬入りの飲み物をアルフィーの顔にぶちまけるのである。
そのはずみでアルフィーは自らの足の甲に銃弾を撃ち込んでしまうのである。
<ラストシーンは実に実に爽快である。
ベラは、卒倒したアルフィーに睡眠ガスを吸わせ、或る手術を彼に行うのである。
そして、ベラは庭園で椅子に悠然と座る中、山羊の脳を頭に入れられたアルフィーは、庭の植物を山羊の恰好で漁っているのである。
今作は、女性の自由、自立を認めずに籠の中に閉じ込める者の愚かしさと共に、蘇った女性が様々な土地を旅する中、経験を積み再び赤子から大人に成長する過程を、壮麗な美術を背景に描き出した作品なのである。見事な作品である。
<2024年1月26日 劇場にて鑑賞>
<2024年1月29日 別劇場にて再鑑賞。>
・依って、勝手ながら評点4.0を4.5に変更致します。
NOBUさん!3日後に再鑑賞とは!ガッツありますね。私も又観たいのだけれど力が出ませんw
セットとか衣装とか細かな部分を又観たいし、好みの作品なのは間違いないのだけれど、体力が要る作品です
('◉⌓◉’)
エマちゃんオスカー獲れますかね〜??
こんにちは。さっき久々にフィルマークスでワンコさんとやり取りしました。遅ればせながらNOBUさんのことを伝えるとむこうもよろしくお伝えくださいとのことでした。
なんかこちらのサイトでレビューしてる頃から変な嫌がらせするレビュアーがいて向こうのサイトまで追っかけてきてるみたいですね。NOBUさんも同じ被害に遭われたとか。大変でしたね。
コメントありがとうございます♪勤め先変えたばかりでお返事遅くなりました。
毒っ気ありますか?(笑)やはり滲み出てしまうんですね。
femme fatalは今よりはもっと若かりし頃mixiでのハンドルネームでした。あの頃はなぁ〜。いや、お恥ずかしい。
籠の中のはアマプラにありました。お休みになったら観ますね!
NOBUさんのヤンチャ話興味深い。ぜひ呑みながら伺いたいです。(笑)
私のわけのわからないつぶやきに共感ありがとうございました。PHS度の強い私は映画の中に入り込んでしまうので、いつも感想はただ一言。(笑)お恥ずかしい。
NOBUさんのレビューで頭の中を整理させていただいてます。
いつも感心しています。こうじゃなきゃダメなんでしょうねー。
NOBUさん今晩は。
私は、物心つく前から、現在に至るまで、女性に囲まれる生活をしてきました。勿論、私がモテるとか、そういった話でありません。
自分でもちょっと女子っぽいなと思うことが多々あります。
そんな環境で生きて来ましたので、今作は辛く、勿論複合的なものもありますが、苦手です。
NOBU さん、いつもいいね、ありがとうございます。
カナダではちょいちょい爆笑をはさみながら見られた作品、どこが笑えるポイントか、友達と見て確認したかったです。結構知性が必要ですよね。
バービーもなかなか深淵なテーマを含んでいましたが、それ以上でした😩