「悔いとともに生きるということ」少年(1983) くーにー62さんの映画レビュー(感想・評価)
悔いとともに生きるということ
台湾巨匠傑作選2024@シネ・ヌーヴォー。
侯孝賢作品のカメラマンとして知られるチェン・クンホウがメガホンとカメラも担当。未就学から小中高といろんな年代の子どもがたくさん出てくるが、まあみんな演技が達者だね。セリフは台湾語(閩南語?)だから自然なのかどうかわからないが、概ね違和感なく見れた。子どもの演出は難しいだろうなと想像する。
問題児アジャが巻き起こす騒動が物語を牽引するのだが、冒頭から一度も笑顔を見せない影のある母親シウインの存在こそ、この映画の鍵と見た。綺麗な顔立ちなのに、何でいつもむっつりしているんだろうと思っていた。結婚相手が相当歳の離れたヒラメ顔のおじさんだからか、と。そうじゃないんだね。今でこそシンママなんて珍しくもないが、1960年代の台湾にあって、寡婦ではないシングルマザーへの世間の風当たり、あるいは不倫によって出産したことへの自責の念は相当強かったのではないか。だから、夫ターシュンには、アジャを大学に進学させること以外、希望することは何もないと話し、シウインは自分を抑えて夫に尽くす。
そんな親心を知ってか知らずか、アジャは踏みにじる。
多かれ少なかれ、誰しも悔いを抱えて生きている。しかしシウインの行動原理は大き過ぎる悔いなのであり、最期は贖い難い夫への謝罪だった。
悪ガキ時代のシークエンスで流れる可愛くポップな曲と、しっとりとしたエンディング曲が滲みる。
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