「門脇さんの演技」ほつれる humさんの映画レビュー(感想・評価)
門脇さんの演技
夫婦のあいだの溝に空っぽな気配が行き来する。
溜まってきた湿気がすなぼこりを塊にするように少しずつ積み上がる。
それを掻き出し、きれいなリビングできれいに並べきれいな言葉で妻を責める夫は、保ちたいプライドの分の糊をそこにいつまでもぐるぐるまぜ入れながら、ものわかりよい大人の男の風味に近づく匙加減を絶妙だと自己満足しているようにもみえる。
自分の嘘を自分の本当で割ってゆるりとのみ込みその場を乗り切る妻の癖は、揺らぐほど曖昧にし見かけをフラットにしてみせる。〝それじゃない安らぎ〟の存在の証拠だった指輪を、現実をぼやかす中和剤にするかのように探す姿は完全に個を生きてると思う。
愛なんてもうどこにもみえない。
一瞬、和んでしまいそうになるほどの笑顔が挟み込まれるたびハッと我にかえり、隣にいる人が違うだけでこんなに人間て表情が変わるんだな〜と、しみじみおもったけれどあの時間も愛とは呼べなかったのかも知れない。
自分だけの一瞬のみが大切にみえるそれぞれの未来はどの道も同じ場所に辿りつかないことをうっすら感じながら、ジリジリとひやひやが混ざる居心地の悪い時間を過ごさせ、後味はもやりと微妙である。
そんな門脇さんの演技は細やかで自然でやはり素晴らしいのが確か。
こんばんは。
うわぁー!humさん!これ又すっごいレビューあげてくれましたね!すばらしま〜!!
本作、それぞれの置かれている立場や考え方で観方がかなり変わる作品だし、レビューも様々でしたが。。本作のレビューはhumさんが No. 1です!
コメントありがとうございます。
やっぱり人間の想いは、システムの中に封じ込めておく事は出来ないんでしょうね。このシステムに入って良かった!と心から思える人は本当にラッキーなんでしょう。
共感ありがとうございます。
二人とも妙に、修復(誤魔化し?)に自信満々な感じがどういう感情なんだろう? どういう位置からスタートしたんだろう? “好き”の気持ちも有ったんだろうに、もう気の迷いになってしまったんですかね?