「特攻隊員と周囲の人の言葉の裏の思いを考えさせられる」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
特攻隊員と周囲の人の言葉の裏の思いを考えさせられる
あまり期待していなかった。 予告編から分かるのは
タイムスリップ + 戦争 + ラブストーリー
1つずつの要素はどれをとっても目新しさは無いし、これを組み合わせるというのは、期待より安上がりな薄っぺらな作品になってはいないか? という危惧の方が強かった。
が、・・・
【物語】
高校3年の百合(福原遥)は進路決定を前に、自分の迷いや不安を親や教師にぶつけていた。ある日、百合は母親とけんかをして家を飛び出すが、雷雨に遭う。 目の前に有った洞窟に入って気を失う。
目を覚まして洞窟から出ると住宅街だったはずが、目の前に広がるのは水田だった。しばらく歩くと街に出たが、明らかに自分の住んでいた街と様子が違う。混乱し気分が悪くなった百合は通りかかった軍服の彰(水上恒司)に助けられる。そして連れて行かれた彰の行きつけの食堂“鶴”で見た新聞の日付は1945年6月だった。
百合に行き場の無いことを知った “鶴”の女店主鶴(松坂慶子)は「住み込みで働かないか?」と声を掛ける。 選択肢の無い百合はその店で働き始める。
“鶴”は軍の指定食堂であるため、彰と同じ部隊に所属する仲間が毎日のように訪れた。百合は彰と言葉を交わすうちに惹(ひ)かれていく。しかし、彰と仲間達は特攻隊員として出撃する日が迫っていた。
【感想】
最初に書いたとおり、期待していなかった。
実際、観始めてからも
「なんかなあ、台詞・脚本が練れてないなあ」
「この時代を扱うにしては演技も軽いなあ・・・」
というネガティブな感触が募り、
「やっぱ、こんなもんか」
中盤まではそんなだった。
しかし、終盤になって俄かに惹きこまれて行った。
中盤までは彰達が「俺達はお国のために死ぬ」と飛び立って、ただ悲しく見送るという通り一編の悲恋で終わることを想像していた。
が、終盤になって特攻隊員達が本音を語り始める。
隊員の一人が自分の本当の気持ちに逆らい切れずに当時の軍では許されない行動に出る。本音をぶちまける。
仲間は強く批難する。しかし・・・
この展開後、自分の中に様々な思いが渦巻いた。
特攻で散っていった若者は心の底では何を思っていたのだろうと考え始めた。表面的に口にしていたことだけ聞けば、特攻というあまりに命軽視の愚かな戦略であるのに当時の人間は「お国のため」という言葉に踊らされた(言葉を選ばずに言えば)“馬鹿な”人達とも思える。 しかし、口にしていた言葉とは裏腹に本当はほとんどの人が「馬鹿げた作戦」と分かっていたのでは?
分っていながら様々な胸が張り裂けんばかりの思いを抱いて飛び立っていったのではないかと。
隊員だけではない。
出撃が決まったと報告する隊員に鶴が「おめでとう」と言う。
この言葉もそうしか言えなかった鶴の思いを想像すると・・・
この時代に生きた人々の心の内を考えると胸に迫るものがあった。
自分が一番驚いたが、終盤は久しぶりにボロボロと涙がこぼれ続けた。
今、思い返してこの感想を書いているだけでも再び涙が溢れて来た。
本作は映画としての演技・演出等作品としての完成度は決して高くない。
しかし、特攻に出撃するという極限の状況に立ち会った人達が一体どんな思いだったか想像することで、命と平和の重み、尊さを改めて胸に強く突き付けられる作品だ。
是非、多くの若者に観てもらいたい。
はじめまして
みかずきです
仰る様に、本作では、特攻隊員達の苦悩、葛藤が描かれます。生きたいという想いと、大義に殉じるべきという想いが、彼らの心の中で激しく交錯していることを描いています。従来作では触れられませんでした。
おめでとうについても、それを言うツルの表情で、心が揺れ動いているのが推察できます。
お国のためという大義の前に、本当の気持ちを封印せざるを得ない時代であったことが推察できます。
当時の人達のそういう苦悩、葛藤を考えると、胸に迫るものがあります。正しく、戦争の理不尽、不条理です。
仰る様に、多くの人に観てもらいたい作品です。特に、若い人には観てもらいたいです。
ー以上ー