「【”40歳までは我慢して窮屈な宮廷生活を送って来たけれど、40歳を超えたら自由に生きるわよ!”。一人の皇妃が自由を求める姿を虚実綯交ぜにした演出で、アーティスティックに描き出した作品。】」エリザベート 1878 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”40歳までは我慢して窮屈な宮廷生活を送って来たけれど、40歳を超えたら自由に生きるわよ!”。一人の皇妃が自由を求める姿を虚実綯交ぜにした演出で、アーティスティックに描き出した作品。】
ー オーストリア帝国ハプスブルク家最後の皇妃、エリザベス(ヴィッキー・クリーブス。今作の製作にも参加している。)が40歳を迎えた翌年に焦点を当て、虚実綯交ぜにした演出で、彼女の40歳までの生き難さ、40歳を超えて自由奔放に生きる姿を描き出した作品である。-
◆感想
・エリザベスが40歳になるまでは、且つての美貌と痩身を保つために食事はスープのみか、薄く切ったオレンジ三切れか、赤肉のロースト肉をホンの少ししか食べない。
ー そして、当時上流社会の女性が付けていたコルセットを”もっと、キツク!”と侍女を叱りつけながら付ける姿。
コルセットが、上流社会の女性を縛り付ける象徴として描かれているのは、観れば分かる。-
・エリザベスはフェンシングも行い、常に速足で歩いている。乗馬もこなす。
ー この辺りは、史実通りである。-
■1877年、クリスマスイブ。
40歳を迎えたエリザベスは傷病兵の慰問や精神病患者の慰問など公務を熟しながら、自らのイメージを覆す計画を実行に移す。
(但し、彼女はおざなりの公務を行って居た訳ではない。キチンと慰問側に配慮した支援をしている。聡明な女性なのである。)
1800年代後半の女性の平均年齢が40歳だった事に驚きつつも、医者の言葉にベロを出してお茶目に反発する姿。
そして、彼女は自らの髪を結うためには欠かせない、ロングヘアーに鋏を入れ、バッサリと切り落とすのである。
・開明的であったエリザベスが、厳格な宮廷に馴染めずに世界各地を旅していた事は史実であるが、今作では男性の友人ベイと交流し、噂を立てられ息子ルドルフに責められたりするも彼女は気にしない。
ー “ベイとは少し自重するわ・・。”だってさ・・。-
・エリザベスが夫フランツ・ヨーゼフ一世への愛を失っていた事も、内心軽蔑していた事も観ていれば分かる。愛していたら、あんなに自由を求めないよね。
ー 彼女は”籠の中の鳥”で居る事を自ら拒んだのである。特に40歳になってから。
全裸でベッドで寝て居たり、ヨーゼフのベッドに忍び込んであんなことまでしている。夫を弄んでるなあ。怖いなあ・・。-ー
・髪を切り落とした彼女は、それまで我慢して来たが故に、吹っ切れたかのように、今まで以上に自由奔放に振舞うのである。
傷病兵に煙草を与えたと思ったら、彼のベッドに横に寝そべって煙草を咥え、紫煙を燻らすのである。
ー で、幼き娘ヴァレリーに”恥ずかしかったわ!”何て叱られているのである。自由奔放だなあ。更に刺青は入れるは、遣りたい放題である。
序でに体重が50キロをオーバーしても、どこ吹く風でケーキを口にしている。-
<ラスト、イタリアで羽を伸ばしていた彼女は遊覧船の船尾から海へジャンプする。オイオイ。
彼女は、60歳でアナーキストにスイスで殺されているから、自由を満喫した結果であろう。
自由を求めてさすらうエリザベス皇妃を、虚実綯交ぜにした演出で描いた作品。
ナカナカにアーティスティックな作品でありました。>