「未来へ向けての希望のたすきのように思える一作」裸足になって 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
未来へ向けての希望のたすきのように思える一作
アルジェリアと言われて頭に思い浮かぶのは『アルジェの戦い』くらい。その程度の知識しかなかった私に、メドゥール監督の『パピチャ 未来へのランウェイ』と『裸足になって』は鮮烈な印象を運んでくれた。いずれの作品でもヒロインの夢と希望と仲間たちが描かれるも、しかし彼女の人生は決して順調にはいかない。宗教的抑圧や蔑視がいまだはびこるこの国で、悲しみや苦しみの壁に幾度となく道を阻まれ、もがき続ける。彼女たちには夢見ること、自分らしく生きることが許されないのか?理不尽な社会の中で答えはなかなか見つからない。だが、この映画には葛藤と共に、眩い陽光や青空や樹木や水といったありのままの自然の美が刻印され、そこにヒロインたちのしなやかな身体表現が加わる。この国で躍動するのをやめないこと。それこそがスタートラインであり、力強い生存表明でもあるのだろう。未来へ何かをつなげていく希望の”たすき”のように思える一作だ。
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