ママボーイのレビュー・感想・評価
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恋愛未満の関係を通して
2022年。アービン・チェン監督。30歳の内気な青年は過保護な母親と同居して熱帯魚店で働いている。女性とうまく会話もできないが、ある日、従兄に誘われたいった風俗店に行くと、その女性店長が気になり始めるという話。重要なのはこれが恋愛未満であるということ。主人公が恋だと思い込んだ年上の女性への思いの破綻を乗り越えることで、主人公は同世代の女性と会話ができるようになり、女性店長は問題を抱えた息子との関係を見つめなおすことになる。すべての人が成長するきっかけとしての、一瞬だけ通い合った人間同士の交流を描く、とても難しい場面を描いている。単なる恋愛ではないところがすばらしい。さすがに女性店長の方はそこに気づいていて、年齢差のある恋を諦めることとは違う新しい人生の出発を始めているようにみえる。
10年前に「台北の朝、僕は恋をする」をみたとき、小粒なストーリーながら、恋愛未満の関係、周囲の人物造形の巧みさ、台北の夜とダンスのすばらしさに驚いたが、今回もまったく同じ感想を抱いたことに驚いた。
ただ、日本人になまじ顔が知られているビビアン・スーから、やさぐれ女の色気のようなものをあまり感じられなかったのは残念。
近づきすぎないロマンス
過保護な母の下、良い息子として暮らすアラサーのシャオホン、夜の街で生きて身に着けたタフさの端々に孤独や疲労を覗かせるララ。暮らす世界も、親子の形も、全く違う二人が出会って始まる親交の物語である。
頼りなくも優しくもあるシャオホンの独特の存在感と、包容力を見せながらもどこか距離を置くララの陰のある雰囲気により、コメディ味とメロドラマ味の絶妙なバランスが保たれていた。
ララを演じるビビアン・スーさんの日本で見せるキャラクターとは違う一面も新しく、物語を引き締めていた。
憧憬と恋、安らぎと愛の境界を回遊する二人のしっとりとした夜の逢瀬が美しく、惚れた腫れたではなく、心の交わりと成長に焦点を当てた静かなロマンス作品だった。
二組の親子関係について、日本では現実味がゼロというわけでもない設定だが、台湾ではどうとらえられているのか気になった。
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