劇場公開日 2024年5月17日

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「3本立て同時進行」湖の女たち バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

3.03本立て同時進行

2025年7月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

うーん、映画の底知れぬ不穏な雰囲気や演出はいいし、俳優陣も全員熱演かつ好演なんだが、主人公2人の支配願望と被支配願望による変態的性愛・暴力的取り調べによる冤罪の強要・薬害事件から731部隊に至る日本の暗部という3つのエピソードが上手く絡み合っておらず、それぞれ別の話を交互に見せられてるような感じになってしまう。一応まったく別の話ではなく、ベテラン刑事が若い頃に政治的圧力で薬害事件の捜査が打ち切られた失望感から堕落したとか登場人物は共通してるんだが、関連性が薄いというか上手く有機的に絡み合っていない。特に主人公2人の話が基本的に事件とあんまり関係がないし、若い雑誌記者の話とは全く絡まないため、なんだか主人公2人が全体から浮いてしまっているような感じがした。1つ1つの話はよく出来てるんだが、それをまとめた1本の映画としてはちょっとどうもなあ。なんとも惜しい映画だ。

薬害事件は明らかにミドリ十字事件をモデルにしていて、僕の大学時代に大学生協の本屋に晩聲社から出版されたルポルタージュ本が置かれてたのを覚えている。その本で既にミドリ十字の創設者が731部隊の関係者だったことが明らかにされていた。後の薬害エイズ事件もミドリ十字によるもので、劇中の事件のモデルはこちらだろう。731部隊を描いた映画は2020年の『スパイの妻』以来だがそもそもがあまり多くない。そういう映画はもっと作られていかなければならないだろう。

バラージ
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