「これが実話に基づいた物語であることに、まず驚かざるを得ない一作」グランツーリスモ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
これが実話に基づいた物語であることに、まず驚かざるを得ない一作
レーシングゲームやモータースポーツファンであれば周知の事実だったのかも知れないけど、予告編でゲーマーをプロのレーシングドライバーに育て上げる計画が実際にあったことを知って、「そんな、それこそゲームの設定みたいなことを本気で考えた人がいたんかいな…」と思ってしまった立場としては、いろいろ物語としての脚色は含んでいるものの、作中の主要な出来事は概ね事実に沿っていることを知って、驚きが隠せないのでした。
ゲーム「グランツーリスモ」のファンはもちろん、モータースポーツファンもきっと満足できるであろう、迫力あるレースシーンが満載、かつこの計画のために集まったエンジニアやドライバー、プロデューサー、そして家族達のドラマも盛り上がりどころをよく押さえていて、「どうせゲームの人気に乗っかったイベント映画だろw」と冷笑していたかつての自分を、時速300キロ超のレーシングカーで跳ね飛ばして欲しいほど「魅せる」映画でした。
レース場面にゲーム画面を模した演出や視覚表現が様々な形で盛り込まれている点に関しては、「これは『グランツーリスモ』から派生した物語なんだ!」という作り手の主張がしっかり見えて、すごく良いと感じたものの、『フォードvsフェラーリ』(2019)くらいの迫力あるレースシーンを集中してみたい、という人とっては少々目障りかも知れないですね。非常に優れた作りの作品ではあるものの、この描写を受け入れるかどうかで、微妙に評価が変わりそう。
優秀なゲーマーをプロのレーシングドライバーに育て上げる「GTアカデミー」計画は、あまりにも奇想天外な発想なので、作中で発案者のダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)がどうやって日産やソニーを説得するのかと思ってたら、意外にすんなり承認されたところは笑いました。あんな狂気じみたプレゼンで、よく承認したな…、と。そして実際のアカデミーも、2008年から2016年まで、数多くのプロドライバーを輩出したとのこと。日産すごい。かなり見直しました!
そして本作の主人公である、ヤン・マーデンボローは、現在も現役であることに加えて、本作にも本人のスタントドライバー役で出演しているとのこと。これは応援しないと!