「主人公が好きになれず…」グランツーリスモ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公が好きになれず…
「グランツーリスモ7」ユーザーだが、正直なところ車にもレースにもあまり興味がない私。
一方で、この監督の過去作を何本か劇場で観て楽しんだ記憶もあり、新作に期待して劇場に臨んだのだが。
ゲーム本編のギミックも多く、ニヤっとさせられるシーンも多い。
これがコミックなどの原作モノではなく、あくまで実話だというのも、効果的に働いている。
ただ、それはどちらかというと、いわゆる「ゲタを履かせた」部分ではないだろうか。
親子やライバル、友人やスタッフとの人間関係など、すごく「通りいっぺん」のありがちな描写に終始している様に感じたし、「優秀なゲーマーをプロレーサーに育てる」というプロジェクトテーマこそ目を引くが、ストーリーの展開自体はかなり「普通」。
で、一番気になったのは、主人公。
あまり詳細が描かれていない(もしくは私が見逃した)ものの、婦人服売場でバイトしているが、それはあくまでゲームのギアを買うためで、まったく前向きではない(仕事中にスマホでチャットするくらい)様だし、警察の職務質問から逃走するし、学校も休学していて、家でずっとゲーム三昧。で、夢は「レーサーになる!」
は?
若い世代の皆さんはどうか知らないが、あのお父さん世代の私には「マジで世の中舐めんなよ」なのである。
主人公、この時20歳くらいでしょ?
まあ、事実にケチを付けるのも野暮だとは分かっているつもりなんですけど、前半は主人公がどうにも好きになれないまま、話が進んだのも私がノれなかった一因だろう。
ドローンやCG、その他演出を駆使してレースシーンにいろいろ仕掛けている分、そこにあまり食指の動かない私には、結果として映画全体に対してピンと来なかった。
前半はかなり退屈したが、途中からまさに「ギア」が上がっていく感じは良かったんだけど。
もちろん、家族ムービーとしては十分楽しめる。