「主題歌のMV特別版が作られたら、そっちの方が完成度が高いとかになりそう」四月になれば彼女は Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
主題歌のMV特別版が作られたら、そっちの方が完成度が高いとかになりそう
2024.3.22 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(108分、G)
原作は川村元気の同名小説(文春文庫)
婚約者に逃げられた精神科医が自分の過去を振り返る様子を描いたヒューマンドラマ
監督は山田智和
脚本は木戸雄一郎&山田智和&川村元気
物語は、結婚を控えた精神科医・藤代俊(佐藤健)と婚約者・坂本弥生(長澤まさみ)が、結婚式場などを見て回る様子が描かれて始まる
それと同時に、俊の大学時代の恋人・春(森七菜)が、ボリビアのウユニ湖を歩きながら、自身が綴った手紙を読み上げていくイメージショットが重ねられていく
大学時代に写真部に入っていた俊は、新入生の春と仲良くなり、部長のペンタックス(中島歩)を出し抜いて付き合うまでになっていた
だが、彼女と世界中を回る旅行を計画するものの、ある理由でそれは叶うことはなかった
それから、二人の関係性は終わりを告げ、その10年後が現在にあたる
精神科医として働き出した俊は、そつなく仕事をこなしつつ、元患者の弥生との交際を続けていた
同棲も始めていて、いよいよ結婚間近という頃になって、突然弥生がどこかへ行ってしまう
彼女の妹の純(河合優実)を訪ねてもわからず、行きつけのバーのマスター・タスク(仲野太賀)に聞いてもわからない
そんな折、ペンタックスから「春が死んだ」と告げられ、「ある場所に行ってほしい」と言われるのである
という流れになっていて、映像はもの凄く綺麗で雰囲気は抜群の映画になっていた
だが、登場人物の思わせなセリフの応酬になっていて、こんな会話をする人間がいるのかと思ってしまう
誰もが正解を知っていて、俊だけが知らないみたいな感じになっていて、遠回しにお前が悪いと言っている割には関係性が悪化しない
このあたりを許容できる人向けという感じになっているが、後半の「春のその後」で「これはダメだ」と思ってしまう人も多いように思えた
春は何らかの病気に罹って死んでしまうのだが、その予兆がほとんどなく、彼女の父(竹野内豊)がどうなったのかも放置プレイになっている
弥生があの場所に行けたのは「春の手紙の発信元がホスピスだったから」だが、俊はその場所に彼女がいることに無関心だったという感じになっている
彼の中では春との恋愛は終わっているのだと思うのだが、旧友がどこにいるのかぐらいは気にするもので、そこがホスピスであるならば、何かしらの引っ掛かりがあっても良さそうなものだったと思った
映画では、春は病で死ぬものの、「父親の末期癌が見つかって人生観が変わった」でも同じ内容の映画が作れてしまう
彼女を死なせたのは感動させるためという感じがしていて、生きているけどもう交わらないというラストでも良かったと思う
弥生は「答え」を探していて、それを「春が持っている」と感じているのだが、彼女を看取る側に立たなくても、一緒に働くというのでもOKだったりする
このあたりの無理矢理感動に持って行こうとする流れがわざとらしい感じになっているので、涙腺すらピクリとも動かないのである
いずれにせよ、愛がどのように継続するのかをメインに描いていて、「愛に満ちていた自分を探すために旅をする春」がある答えに辿り着き、それは「愛が離れるかもしれないけど、それも含めて人生を一緒に歩むことに意味がある」的な感じに締めくくられている
これが「ハッとするほどの答え」という感じになっていないのが問題で、ある程度の年齢の人だと「そりゃ、そうでしょ」という感じになっていた
そう言った意味において、この映画独自のものというものが感じられないので、綺麗な風景と演者、藤井風のエンディングに浸りたい人向けなのかな、と思った