「衝撃」ランガスタラム Katkatさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃
RRRからのインド映画鑑賞なので、主演のラーム・チャランの疑うべくもない高次元の演技力と身体能力は期待通り。天真爛漫で我儘だけど憎めない“弟”を怪演。
なぜ怪演、なのかと言うと。
まずこの映画、インド映画らしくダンスパートがふんだんに盛り込まれているが楽曲もダンスも素晴らしい。それだけでエンタメ性十分なのだが。
コミカルな要素とシリアスな要素が綯い交ぜで、これが鑑賞者の情緒をめちゃめちゃ揺さぶる。
チャラン演じる、天真爛漫で腕っぷしが強く頑固者でお兄ちゃんとおばさんにはめっぽう甘えるチッティ・バーブは実に魅力的な主人公だが、無知ゆえに無自覚に社会的困窮に立たされる弱者の象徴でもある。
悪が存在して弱者の立場である主人公がガッツリ復讐を果たす、そう言う話ではあるんだけど。
社会が孕む問題と解決ではない復讐成就に、単純に爽快感を得ていいものか色々考えさせられる。
時代物や神話ではなく舞台は1980年代。英雄でも神でも裏社会の住人でもない庶民のチッティが手段として繰り広げるチート無双をアクションとして楽しみつつ、価値観として少々戸惑ってしまうんだよ。笑笑
現地上映時、大人気だったそうだけど、これ本国の人達はどう受け止めているんだろう。
日本とは異なる価値観や文化を持つ彼等の当事者としての受けとめ方はやはり我々とは違うのだろうか。
単に復讐成就のアクション活劇として楽しむのだろうか。
それとも解決ではない復讐成就は、決して消えることなく根付いた価値観への息抜き的「ザマァみろ」なのだろうか。
映画としては実に面白い。物語は単純なんだけど、演者達が素晴らしくて実に深い作品だと思う。インド映画って一般的にこんな感じなの?それともトリウッド独特なの?この作品が特別なの?
何にしろ衝撃的で忘れられない、大好きな1本になったのだった。
