アスファルト・シティのレビュー・感想・評価
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見ている間緊迫感が続いて、こちらの心がやられそうでした
あまり予備知識無く観たもので、ミステリーめいたテイストなのかなと思っていたら、のっけからガンガン戦場の如き映像が連続して、想像とは全く違った内容でした。
(帰ってから解説を読んだら、実話ベースの小説が原作だと知り、納得でした)
エッセンシャルワーカーの苦悩や現実をいやというほど見せつけられた感じです(コロナの時はもっと自分の命が危機に晒されていたのでしょうね……)
ラット(ショーン・ペン)が職務停止になった時にクロス(タイ・シェリダン)と組んだ彼が発した「バディと常に共有しろ、そうでなければ心をやられる」がワタシの胸にも染み入りました。
本当に過酷な職場で、地域にもよるのでしょうが、まともな感性を維持するのは本当に難しそう。
救急隊員たちが現場に向かう時の陰鬱な表情がそれを物語っていました。
命と向き合い、命を司ってはいるけれど、全能ではない。うーん、とても苦しい。
解決法が見当たらないけど、寄り添ってくれる人を不幸にするのは違うよね、それは分かりました。
息苦しくなりそうな時間を少し緩めてくれたのは、マイク・タイソンさんでした。
手ブレ映像に酔っちゃった
まさに命のやりとりの現場
予告から、救急救命隊員が要救助者の命をめぐる事件に巻き込まれるような話かと思っていたのですが、ちょっと違いました。命は命でも、救命隊員自の命を見つめ直すような物語でした。
ストーリーは、犯罪多発のニューヨークのハーレムで、医学部入学を目ざして勉学に励む傍ら、新人救急救命隊員として働くクロスが、バディのベテラン隊員ラットから厳しい実地指導を受けながらさまざまな救命の現場を目の当たりにして心身ともに疲弊していく中で、ある現場での新生児への対応をめぐって二人の救命に対する姿勢が浮き彫りになっていくというもの。
これが救急救命隊のリアルだと言わんばかりに、観ている者に激しい衝撃を与え、メンタルをこれでもかと抉りにきます。命がけの現場に出向き、献身的に活動しながらも、ほとんど感謝されることもなく、むしろ興奮した患者や周囲の人々から罵声を浴びせられる救命隊員。それでも必死に救命を試みる姿に頭が下がります。
しかし、そんな救命活動さえ、虚しく徒労に終わることも少なくないでしょう。まじめな人ほど、自分の無力さに打ちのめされ、己を責め続けることになるかもしれません。心身ともに疲弊し追い詰められていくさまが、重く苦しくのしかかります。
クロスの部屋に飾られた絵は、それでも人命を救うことをあきらめないという彼の決意や理想を象徴するかのようです。そして、彼の上着の背中に描かれた天使の翼は、両手の動きに合わせて羽ばたいているかのように見え、その時々におけるクロスの心情を物語るようです。
一方で、クロスと親しくなった女性やラットの元妻らの姿を通して、隊員の疲弊は彼らだけの問題ではないことが描かれます。誰かの命を救うために、隊員らが自らの命を削るという現状。そこから脱するためには、現場で命を選別したり、自らの命を断ったりするほかないのでしょうか。そんな彼らを誰が救ってくれるというのでしょうか。世界中の救急救命の現場で今も苦しんでいる隊員がいるかと思うと、心が痛みます。
キャストは、ショーン・ペン、タイ・シェリダン、ベンガ・アキナベ、ラケル・ネイブら。どなたも救急現場の過酷さを伝える熱演で魅せてくれます。
カッコよさは全然なし
混沌と悲劇のライトモチーフ、黄金を盗まれないように
かなりのリアリティ
善と悪を観客に問う作品
映画の多くは冒頭に「ゴール」が示される。
殺人事件の解決、恋愛成就、生き残り、が定番。
だが本作は違う。
新人救命士がベテランと組んで任務にあたる。そこでの日常と過酷な任務で疲弊してく姿が描かれるが、明確なストーリーラインがあるワケでもない。
ドコに向かうんだろうな、この映画。と思っていると、急にスイッチが入る。
「善悪」「神とは」を問う作品だ。
この問いは、医療関係者など一部の職業人に限らず、全市民への問いだ。
今やネットでは、生活保護受給者、障害年金受給者など弱者、というか「税金に頼っているヒト」へのバッシングが酷い。
数年前の某アナウンサーの「自己責任の透析患者は死ね」発言が典型だが、
本作の主人公たちが直面する「善悪の葛藤」は全市民の共通するものだ。同じ状況になった時にどう判断するか?常日頃、どう判断するか?
を問う作品である。
「助けなくていい命」なんて無いのでは?
キリスト教に同じ概念があるのかは知らないが、日本には、
「他人を呪わば穴二つ」・・・つまり誰かを〇したいと思うには、自分も〇んでもいい覚悟が必要・・と言う諺がある。
冒頭から銃撃事件の現場に飛び込み、助けられなかった重い場面から導入。その後も様々な現場が続くが、どれも「こんな奴助けなくてもいいんじゃね?」と思わせるに十分な胸糞例が次々出て来る。
こんなんじゃ人間が早番壊れるんじゃ?・・と思っていたら娘との面会や人妻との逢瀬で、かろうじてバランスを取っていた。
映画後半では、それらの「救い」が(自責でもあるが)離れて行って、人格が崩壊していく様子が丁寧に描かれている。その過程で段々と「全能の神」の立場に居る錯覚から「命の選別」に手を出してしまう。その命の重みに耐えきれず、パートナーを絞め殺す衝動を抑えきれなくなったり、相棒を「人殺し」と罵倒したり・・・
目の前で人が〇ぬ場面を何度も見ていればPTSDになっても不思議ではないが、それを避けるために〇を正当化することは、反対にその〇を背負い続けることで人格破壊してしまうのではないか・・・が本作の主題かと。
終盤で「救命」は・(どんな相手でも)・患者だけでなく自分の心も助けているんだ、と気が付いたのかも知れない。
・・・と安らかに見終わったと思ったら、エンドロールで打ちのめされた。
命の決断
ニューヨーク、ハーレムで救急救命隊員として働く新人のクロスとベテラン隊員のラットを軸にリアルな医療現場を描いた作品です。
揺れの多いカメラワークで現場の騒々しさや混沌とした雰囲気、そしてクロスのメンタルが崩壊していく様がリアルに表現されていました。
9.11以降セラピストが付いたという会話があったけれど、とにかく過酷な現場が多い。助けているのに罵声を浴び、人種も様々で話もまともに通じない相手の対応。ありがとうと言ってくれる人もいるので救われるのかもしれませんがメンタルヘルスケアが本当に大事になってくる仕事だなと…
エンドロールのメッセージがとてもショッキングで、分かりやすい成長物語のようなドラマにせず次々と起こる現実を描き切ったのも、それはそれで良かったと思いました。
アスファルト・シティ(映画の記憶2025/6/29)
ハリウッドは救命士に恨みでもあるんか
2025年劇場鑑賞189本目。
エンドロール後映像無し。でもこの映画が作られた理由のメッセージは有り。
だいぶ昔にニコラス・ケイジ主演でそのものズバリ「救命士」という映画があったのですが、日々の業務で心を病んでいくという気の滅入る映画でした。その後も事件の後始末に駆けつけた救命士が度々悪党に殺されて救急車を奪われるのを観るたび、人の命を救いに来た無抵抗の人間をフィクションとはいえよく殺すなと胸を痛めています。
そんな中この映画、とにかく主人公の新人救命士が出くわす気の滅入るケースばかり連続で描いて、こちらも蒸し暑い時の不快感を感じながら見ていました。
だんだん救命士の闇というか、こんなヤバい奴野放しなのか、という先輩が出てきて、もっとまともな人が処分されてモヤモヤして終わったと思ったらエンドロール後に出てきたメッセージを見て、そんな事が起きてる理由を描きたいなら劇中この理由でその事が起きたのでいいのか、はなはだ疑問です。
過酷な現場のリアルさに感動!
ニューヨークハーレムが舞台。医学部入学を目指すクロスだが生活の為に新人の救急救命員として、ベテラン隊員のラット(ショーン・ペン)とチームを組み救急車に乗り込んだ。毎日のように起きる銃弾事件、薬物中毒、DV、自殺者らの命を守るため通報現場から病院へ搬送するまでの数十分間、薄れていく命を綱ぎ止めようと必死の処置が続く。医師や看護士らのように患者家族から感謝や尊敬されることはほとんど無く、自身の命が危険にさらされる時もある。助けるには救急救命が特に重要な位は医療素人の私でもわかる。命がけで懸命に助ける価値のある命なのか、矛盾にクロスは次第に精神を病んでいくが、実はクロスに限ったことではなくベテランのラット達も深い闇に落ち病んでいた。
ある日、通報で駆け付けた部屋には早産し血みれのAIDS感染者と、AIDS陽性者の血にまみれた新生児に遭遇する。その時のラットの救命処置をめぐってさらに精神が崩壊していく。
日本で撮ると失敗を教訓にしてラストに向け主人公らが英雄的な活躍を見せ、奇跡的に人を助けだし自分も助かる。愛でたしめでたし涙で終わる。水戸黄門かい!
十字架を負った救急隊員に救いはあるか
主人公の名が、クロス。すなわち十字架。
そのことの意味に気づいたのは、見終わった後だった。
血とか痛いのとか苦手なワタクシなのだが、
そういえばこれ救急隊員の映画だった、と気づいたのは、始まってからだったという迂闊。
開始早々離脱しようかと、本気で思った。
なんとか思いとどまったが、
以後、人を救う人たちが救われない、という苛酷な日々が、延々2時間続く。
なんたって救急に助けてもらうはずの人々がクズ・カスばかり。
おまけに同僚にもクズがいるし。
バディの先輩が唯一の救い、かと思いきや……
ラスト10分、かろうじて救いはあったが、
そしてエンドロールの最後で監督の意図(あるいは願い)は分かったが、
危うくこっちがメンタルやられるところだった。
主人公のストレスの唯一のはけ口であるセックス・シーンは無駄に長いし。
これで観客は気分転換できるとでも、監督は思ったんだろうか。
いやそれとも、ひたすら粘着質のお方なのか。
もうちょっと何とかしようがあったんじゃないか、と思うけど、
そんな気はないだろうね、きっと。
そういうことなんですね・・・
手持ちカメラによる緊張感と臨場感
オープニングから、まるでフィルムで撮影したかの様な粗い映像と、手ブレしようがピントがボケようがお構いなしのアップ映像で観る者の魂を鷲掴みにしてくる作品。
主人公の「荒い息遣い」も伴って、いやが上にも緊張感が増してきます。
その上、映像の大半が顔を中心としたアップで構成されており、全てが手持ちカメラによって撮影されている為、臨場感が半端ありません。
時には役者の顔の側で、時には役者と共に現場の中へ、時には役者と役者の間に入り込んで撮影された映像により、観ている我々も彼ら救命隊員と行動を共にする事を強いられていきます。
銃撃戦があったであろう現場。
吠え立てる犬に噛まれた少年。
オーバードーズで死にかけている男の搬送。
救命現場では事件の内容が多く語られる描写はありませんが、大半が助けるだけの人徳があるとは思えない者ばかりだという事がひしひしと伝わります。
やがて、心身共に疲弊していく主人公と共に観ている我々にも大きな疲労感と虚無感が募っていきます。
そして終盤、とある事件をきっかけに主人公は大きな決断を下します。
作品としての評価にも関係する決断ですし、同時に観る側の倫理観までも篩(ふるい)にかけてくる決断となってます。
観る人の倫理観によって大きく変わるであろう締め括りなので、己の心に問い掛けながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。
大変な仕事
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