アスファルト・シティのレビュー・感想・評価
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ソヴェール監督らしい凄みと畏れを併せ持った一作
ソヴェール監督といえば、燃え盛る炎に飛び込むような題材選びで知られる。例えば内戦の混沌を描いた『ジョニー・マッド・ドッグ』。それに続く刑務所内のムエタイ・ドラマ『暁に祈れ』。いずれも尋常でない方法で臨場感を刻んだ秀作だ。そんな彼が拠点の一つに据えるNYを舞台に描いた新作だからこそ、本作はありきたりな街の神話の域を超え、救急救命士が身をもって体験する壮絶な日常の物語となり得ている。仮に前二作を「怪物」と形容するなら、本作はさながら凄みと畏れを併せ持った「死神」。その上、主演のペンとシェリダンを両輪として、彼らの演技、関係性、化学変化によって状況や心理模様をじっくりと切り開いていく様にも見応えがある。突き詰めるならラストの一文。そこに刻まれた言葉が本作の核心とも呼ぶべき意図を告げる。見終わった側から忘れる消費型の娯楽作でなく、観客が自ずと想いを受け取り、問題意識を育んでいく映画と言えるだろう。
ニューヨークの暁に祈る
ニューヨークのハーレムで救急救命士として働く人を描いた物語です。監督は、タイの刑務所に収監されたイギリス人ムエタイ選手が経験した強烈な現実を描いた『暁に祈れ』のジャン=ステファーヌ・ソベールです。
消防士をはじめとして命懸けで人を助ける職業は映画で度々取り上げられて来ましたが、この監督の手に掛かると、救命救急士の切迫感が剝き出しで息を呑みます。彼らが目にするのは、事故や急病による救急よりも麻薬・銃撃・貧困・自殺など社会にこそ病巣を有する病なのです。本作は、元救命救急士の著作が原作で監督も数年の取材を重ねたそうなので、多くは事実に基いているのでしょう。真摯に職務に向き合おうとすればするほど、救命士本人の心が削られ彼ら自身に「救命」が必要になります。エンディングでの説明によると、救命救急士の自殺の件数は職務による殉職の数を上回っているのだそうです。
弱虫の僕にはとても務まりません。人々の命に手を差し伸べる現場の人々に感謝です。
救急救命隊員の理想と現実
凄まじい緊張感、体験。
タイ・シェリダン、ショーン・ペン、マイケル・ピット3人のぶつかり合いだけでも見る価値がある作品だった。とにかく映画が始まった瞬間から張り詰めた緊張感に息つく間も無く救急車に乗ればどこまでも必死の救命活動が続く。
ニューヨークという魔物が生み出す狂気に呑み込まれないように必死に奮闘する主人公達をただひたすら応援したくなる。タイ・シェリダンがこんな良い俳優になってるとは知らなかった。「レディー・プレイヤー1」以来見たが本当に素晴らしい演技で良い俳優になったなぁと感心。映画の内容としてはひたすら救急車で爆走しながらスラム街のヤバい現場をまわりながらどんな人間も救命活動をするという非常に重たい内容でドキュメンタリータッチで撮影されていて時々カメラの手ぶれに酔ってしまったがあまりに内容が凄まじかったので体験としては100点満点だった。それから最近は録音が優れた作品も多いが本作は特に優れていると感じた。今年見逃してはいけない一本。何回も観たくなる映画ではないかもしれないが映画館で観ないのはもったいない。最近は質の高い作品が全国展開されなくなってきてるので応援するつもりで映画好きは映画館へちゃんと行こう。
病むか、悪に走るか、以外の選択肢
職場でメンタルを病んでしまうケースは増えており、その原因も様々。ただ、激務で報われない、そして労りのない仕事をしているとメンタルがやられてしまうよなと感じている。
さて本作。消防士の話だと思っていたが、消防署に勤める救急医療担当者の話だった。ただの勘違い。新人とベテランのバディものと思わせておいて、実は過酷な救急医療の現場を描いた、めちゃくちゃ重いテーマの映画だった。スクリーンに映し出されるのは、まさに激務で報われずに労りもない仕事だ。
ニューヨークの救急医療現場の主な対象は、犯罪者や薬物中毒者、精神疾患を持つ人たち。救急医療隊員が救おうとする人から毎日のように悪態をつかれ罵倒される。感謝などされない(描写が多かった)。これでは病んでしまうよな。どこかで割り切るか、ガス抜きをしないと続けられそうもない。最後にクロスが何かを吹っ切ったように見えたのが唯一の救いだった。いや、それでも今後彼のメンタルが心配だ。それくらいに未来は明るくない。
冒頭からハエの羽音や救急車のサイレンのフラッシュが印象的だった映像は、メンタル的に追い込まれていく様を印象付けるものだと途中で理解した。とてもうまい演出だ。そして、最後に殉職者よりも自殺者のほうが多いと知って愕然とした。同時にその事実もわからないでもない。それくらいに過酷な現場だった。それを理解しただけでも本作の意義はある。
ちょっと疲れました。
序盤から緊迫感があり、ずっと気持ちが休まる瞬間がなかった。
救命士さんの辛い思いを鮮明に描いていて
自分が病んでた時のことを少し思い出した。
いろんな物音が鮮明に聞こえ、頭の中を掻き乱すようにうるさい感じの表現は震えた。
途中からは波がなく、みてて疲れを感じた。
エロティックなシーンはあそこまで鮮明に描く必要があったのか??、、。
でも、この映画を見て救命士の大変さを良く知っ
こうなる前に手を打つ必要がある日本の未来
本作を鑑賞する前に先に伝えておきます。
エンドロールで流れる監督からのメッセージ
「救急現場で闘う英雄にこの映画を捧げる──」
ジャン監督、こういう大事な事は映画の冒頭で書いてくれ……。
というわけで、本作は貧困層が住む治安の悪いNYハーレムで活動する、ニューヨーク市消防局(FDNY)の救急隊員を主人公に描いたドキュメンタリー風作品。
彼らが救助に向かう先は、銃撃で重症を負ったのギャングやDV被害に遭っている妻、オーバードーズでぶっ倒れた貧困老婆、不衛生極まりない食肉解体場で喘息発作を起こすアラブ人(英語が話せない)など、救助活動以外の厄介ごとが幾重にもある、もう苛烈極まりない過酷な現場。
それらの事件がドキュメンタリーさながらに、次から次へと映し出されていくので、ぶっちゃけ鑑賞していて疲労感が半端なかった。
救急現場の緊迫感もあるが、それとは別に
「他者に危害を与えるような者、劣悪な環境で憂いる未来しかない者を救って意味があるのか」
という命の選別を、救急隊員に突きつけ、自ずと観客にも投げかけられるから。
鑑賞後、どっと疲れましたが心に刺さる作品でした。社会全体の最適化が図られても、部分最適化を蔑ろにすると、こうなるという事例だな。他山の石としたい。
綺麗事をいつまで言えるか
救命士へ捧ぐ
新人の救急救命士が、
コンビを組んだベテランの救命士とともに、
厳しい現実と向き合いながら、
一人前になっていく。
といったありきたりな成長物語にショーン・ペンが出ているはずがなく、
アスファルト・シティ、ニューヨークでは、
罵られ、感謝もされず、
支えてくれる家族もいない。
救うべき命、
救わない方がいい命。
人を救いたくて救命士になったのに、
逆のことをしてしまう。
心を壊し、
自ら命を絶つしかないのか。
救命士の自殺が増加している。
その数は殉職者の数を上回る。
救いようのないアスファルト・シティの現実。
せめてこの映画では、彼らを英雄(ヒーロー)と讃えよう
「ありがとう、あなたは命の恩人よ。」
2023年の作品。
キノフィルムさん、ありがとう。
アメリカ救急救命士の闇と…
見ている間緊迫感が続いて、こちらの心がやられそうでした
あまり予備知識無く観たもので、ミステリーめいたテイストなのかなと思っていたら、のっけからガンガン戦場の如き映像が連続して、想像とは全く違った内容でした。
(帰ってから解説を読んだら、実話ベースの小説が原作だと知り、納得でした)
エッセンシャルワーカーの苦悩や現実をいやというほど見せつけられた感じです(コロナの時はもっと自分の命が危機に晒されていたのでしょうね……)
ラット(ショーン・ペン)が職務停止になった時にクロス(タイ・シェリダン)と組んだ彼が発した「バディと常に共有しろ、そうでなければ心をやられる」がワタシの胸にも染み入りました。
本当に過酷な職場で、地域にもよるのでしょうが、まともな感性を維持するのは本当に難しそう。
救急隊員たちが現場に向かう時の陰鬱な表情がそれを物語っていました。
命と向き合い、命を司ってはいるけれど、全能ではない。うーん、とても苦しい。
解決法が見当たらないけど、寄り添ってくれる人を不幸にするのは違うよね、それは分かりました。
息苦しくなりそうな時間を少し緩めてくれたのは、マイク・タイソンさんでした。
手ブレ映像に酔っちゃった
まさに命のやりとりの現場
予告から、救急救命隊員が要救助者の命をめぐる事件に巻き込まれるような話かと思っていたのですが、ちょっと違いました。命は命でも、救命隊員自の命を見つめ直すような物語でした。
ストーリーは、犯罪多発のニューヨークのハーレムで、医学部入学を目ざして勉学に励む傍ら、新人救急救命隊員として働くクロスが、バディのベテラン隊員ラットから厳しい実地指導を受けながらさまざまな救命の現場を目の当たりにして心身ともに疲弊していく中で、ある現場での新生児への対応をめぐって二人の救命に対する姿勢が浮き彫りになっていくというもの。
これが救急救命隊のリアルだと言わんばかりに、観ている者に激しい衝撃を与え、メンタルをこれでもかと抉りにきます。命がけの現場に出向き、献身的に活動しながらも、ほとんど感謝されることもなく、むしろ興奮した患者や周囲の人々から罵声を浴びせられる救命隊員。それでも必死に救命を試みる姿に頭が下がります。
しかし、そんな救命活動さえ、虚しく徒労に終わることも少なくないでしょう。まじめな人ほど、自分の無力さに打ちのめされ、己を責め続けることになるかもしれません。心身ともに疲弊し追い詰められていくさまが、重く苦しくのしかかります。
クロスの部屋に飾られた絵は、それでも人命を救うことをあきらめないという彼の決意や理想を象徴するかのようです。そして、彼の上着の背中に描かれた天使の翼は、両手の動きに合わせて羽ばたいているかのように見え、その時々におけるクロスの心情を物語るようです。
一方で、クロスと親しくなった女性やラットの元妻らの姿を通して、隊員の疲弊は彼らだけの問題ではないことが描かれます。誰かの命を救うために、隊員らが自らの命を削るという現状。そこから脱するためには、現場で命を選別したり、自らの命を断ったりするほかないのでしょうか。そんな彼らを誰が救ってくれるというのでしょうか。世界中の救急救命の現場で今も苦しんでいる隊員がいるかと思うと、心が痛みます。
キャストは、ショーン・ペン、タイ・シェリダン、ベンガ・アキナベ、ラケル・ネイブら。どなたも救急現場の過酷さを伝える熱演で魅せてくれます。
カッコよさは全然なし
混沌と悲劇のライトモチーフ、黄金を盗まれないように
かなりのリアリティ
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