「手持ちカメラによる緊張感と臨場感」アスファルト・シティ かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
手持ちカメラによる緊張感と臨場感
オープニングから、まるでフィルムで撮影したかの様な粗い映像と、手ブレしようがピントがボケようがお構いなしのアップ映像で観る者の魂を鷲掴みにしてくる作品。
主人公の「荒い息遣い」も伴って、いやが上にも緊張感が増してきます。
その上、映像の大半が顔を中心としたアップで構成されており、全てが手持ちカメラによって撮影されている為、臨場感が半端ありません。
時には役者の顔の側で、時には役者と共に現場の中へ、時には役者と役者の間に入り込んで撮影された映像により、観ている我々も彼ら救命隊員と行動を共にする事を強いられていきます。
銃撃戦があったであろう現場。
吠え立てる犬に噛まれた少年。
オーバードーズで死にかけている男の搬送。
救命現場では事件の内容が多く語られる描写はありませんが、大半が助けるだけの人徳があるとは思えない者ばかりだという事がひしひしと伝わります。
やがて、心身共に疲弊していく主人公と共に観ている我々にも大きな疲労感と虚無感が募っていきます。
そして終盤、とある事件をきっかけに主人公は大きな決断を下します。
作品としての評価にも関係する決断ですし、同時に観る側の倫理観までも篩(ふるい)にかけてくる決断となってます。
観る人の倫理観によって大きく変わるであろう締め括りなので、己の心に問い掛けながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。
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