「豆腐一筋、頑固一徹な父娘の物語」高野豆腐店の春 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
豆腐一筋、頑固一徹な父娘の物語
注目していた作品ではありませんでしたが、「SAND LAND」鑑賞後に時間があったので、ハシゴ鑑賞してきました。
ストーリーは、広島県の尾道で、出戻りの娘・春と豆腐屋を営む高野辰雄が、周囲の人の勧めで持ち上がった春の再婚話、自身の体の心配、病院での老婦人との出会いなどを経て、春との向き合い方、周囲の人への接し方、自身の生き方を少しずつ変化させていくというもの。
劇中で描かれるのは、市井の人々のありふれた日常の中に垣間見える、父娘の愛情、悪友との腐れ縁、新しい出会い、冷たい血縁など、人と人とのさまざまなつながりです。そんなつながりを通してしだいに変化する辰雄の姿が、じわじわと沁みてきます。と同時に、人と人を結びつけるのは、血縁ではなく、心のつながりなのだと思わされます。
本作では「豆腐」を通して人間模様を描いているように感じます。劇中で春が「にがりで豆腐の人格が決まる」「豆腐は素材の味で勝負」「添加物がダメではないが、それでごまかしてはいけない」というようなことを熱く語ります。これを人間に置き換えれば、自分が最も大切にしているものが生き方に表れ、うわべだけ言葉や態度でごまかしても、取り繕うことはできないということでしょうか。なんだか人の本質を鋭く指摘されたような気がします。
それはラストの辰雄の姿に重なります。辰雄はにがりの投入を初めて春に任せます。周囲の人への悪態、素直になれない気恥ずかしさ、わずかばかり残っていた春への遠慮など、これまで残っていた雑味が消え、辰雄が本気で春に向き合えた瞬間のように感じます。深い愛で結ばれた父娘の姿に胸が熱くなります。
本作の舞台は広島県の尾道で、のどかな街並みや景色に癒されます。ここには何度か訪れたことがあり、見覚えのある場所に懐かしさやうれしさを感じました。ただ、広島を舞台にしたことで必然のように盛り込まれる要素があり、人物の掘り下げとしての意味はありましたが、劇中での扱いとしては中途半端だったように思います。
主演は藤竜也さんで、いぶし銀の演技が冴えわたります。春役は麻生久美子さんで、藤竜也さんと本物の親子にしか見えません。中野ふみえ役は中村久美さんで、つつましくも品のある演技が見事です。脇を固める、徳井優さん、菅原大吉さん、山田雅人さんらも、辰雄の悪友を好演しています。
確かに「不幸な出来事だった(実際の言葉とは違うと思うが)」というような会話があり、違和感を感じました。
藤竜也さんが、あんなに魅力的な演技をされる方とは知りませんでした。麻生久美子さんとあわせて、素晴らしい演技でした。
返信お気遣いありがとうございました。確かに、地元の方の感覚でないとわからないかもですね。
繊細な問題ですね。ただ第三者の私からすると、チト不自然な挿入とも見えました。もしかしたら実はさりげない
のでしょうか?いずれにせよ地元の方当事者で無いとわからない繊細なことですね。
意外と本作品のような 唐突だけどツッコマず さりげない のが自然かもですね。
勉強になります。ありがとうございました😊😊
おはようございます。
今作、期待以上に私には沁みました。
最近の邦画の中では可なり良作だと思いました。
オリジナル脚本も良くて、当然、藤竜也さんと麻生久美子さんは盤石で、中村久美さんも良かったな。
私は矢張りヒューマンドラマが好きなんだな、と思った映画でもありました。では。返信は不要ですよ。