ネクスト・ゴール・ウィンズのレビュー・感想・評価
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ワン・ゴール
スポーツ実話って、案外映画化が難しい。
個人に焦点を当てた伝記ならまだしも、試合そのものだと結果が分かっているからだ。
スポーツは筋書きの無いドラマ。そこが醍醐味。
勿論、やりようによっては巧く見せられるが…、そこは異才タイカ・ワイティティの腕の見せ所。
“筋書きの無いドラマ”と言ったが、本作の題材がまさにそう。
アメリカ領サモアのサッカーチーム。
2001年のW杯予選で、オーストラリア相手に31対0の大敗。これはW杯史上最低の記録だという。
それどころか、チーム創設してから一点も得点を入れた事が無い。
稀に観る弱小チーム。最弱レベル。
そんな彼らが如何にして初勝利を飾ったのか…?
実話であり、2013年にドキュメンタリー映画化もされている。
さてさて“3試合目”を、ワイティティがどう見せるか…?
熱血!感動!…のスポ根ではないのは容易に予想出来る。
ワイティティ本人も謎の語り部として登場するなど、人を食ったユーモア。
実際にチームに所属しているトランスジェンダー選手やサモアの文化など多様性テーマもシリアスになり過ぎず、軽快に。
サッカーに興味無くとも実際の試合を知らなくともすんなり見れる。
世界弱小チームを立て直す為に、アメリカ人の鬼監督トーマス・ロンゲンが雇われる。
…と、一見王道なのだが、
サッカー界で名を馳せる名監督ではなく、別の意味で名を馳せる。つまり、
すぐにブチギレ、度々暴言や問題行動を。米サッカー界の暴れん坊。
クールな役やシリアスな役が多いマイケル・ファスベンダーがリアクション爆発の演技。
そんな性格故米サッカー協会が仕事の無いロンゲンに新たな仕事を手配したように見えるが…、要は厄介払い。
暴れん坊監督と弱小チーム。当初はロンゲンもやる気なく、選手たちもソリ合わず。
勝てる訳ない。負けて当然。端から捨てゴマの負け犬たち。
そのままでいいのか…?
選手たちはあの大敗のトラウマを未だ抱えているが、サッカーが嫌になった訳じゃない。
サッカーは好きだ。それにやはり、勝ちたい。せめて、ワン・ゴール。
ロンゲンは渋々監督を引き受けた中で、選手一人一人にポテンシャルがある事を確信する。
各々の才を活かし、スカウトもし、僅か4週間後のトンガ相手の予選試合に向けて…。
負け犬監督とチーム。ワイティティ印であっても、何だかんだ王道のゴールを決める。
悪くはない。が、作品自体、最高の名試合って訳でも…。
訓練や練習。何だかそれほどタメになるアドバイスやコーチ無かったような気が…。
チームが成長する上で重要なここら辺が淡白であっという間。実際に4週間だから仕方ないが…。
試合が始まると、また負けモード。ビビってしまう。ロンゲンも遂に呆れてしまい、試合も監督もボイコット…。
が、己の傲りを見直す。試合に対しても見方を変える。
勝とうとするからプレッシャーに感じる。
楽しめばいい。ただただ、リラックスして楽しんで試合を。
そこからチームは変わり始め…。
その気持ちの持ちようは悪くはない。けど、技巧云々ではなく、結局精神論…?
クライマックスは遂に初勝利を果たした試合で高揚感を見せてはくれるが、サッカーや試合そのものより関わる人間模様の方に重視な気が…。描きたかったのはそっち…?
それもそれで悪くないんだけど、他のチームからの誘いや監督続投を断って、人生にはサッカーより大切なもがあるって…。
弱小チームの奇跡の初勝利を謳う作品なのに、それでいいの…?
笑って、エキサイティングして、奮闘して、ハートフルにも。
見た人の満足度は高いようだが…、
個人的には平凡な試合。
ワイティティ、ちょっとゴールを外したか…?
コメディ強め
サッカー未開の国(弱小チーム)が、ゴールという喜びを共有することを望む戦いに挑むのだが、コメディ色を強めにしたことにより試合(戦い)への高揚感を感じられなかった。
もう少しドラマ性を強めでも良かったんじゃないかと感じた。またコメディ要素も思ったより笑えなかった。
最後まで笑わしてくれます
全編お笑いかというとそうでもなくて
マイケルファスベンダーが何回か娘さんの留守電を聞くシーンがあるんですが
最初は、別居して奥さんと居る娘さんと一緒に暮らせなくて寂しさを
募らせている、そんなふうに見えます。だって南太平洋まで出稼ぎに来てるようなもんですから。
だんだんそうじゃないことがわかります。
出てくる人たち、人がそれぞれ大事にしてる、大切にしたいことに真っ直ぐに生きてる、生活してる姿が
いろんなシーンを通じて伝わってきました。
吹き出してばかりでなく、しんみりもできる極上作品でした。
でも最後の最後は、、、この監督さんはお気に入りです
tears for fears 久しぶりにスピーカーで聴けてよかったです♪
心がすっきりする映画
サッカーの戦術、トレーニングに焦点を当てた、有りがちなストーリーかと思っていましたが、競技を知らなくて充分楽しめます。サッカーを通じて描いた人の心、触れ合い、価値観を考えさせられた映画でした。勝利、一番になる事が、求められ、賛美される世の中ですが、この映画を観て自身も何が大切か色々と考えさせてもらえました。他の有名なスポーツ映画をオマージュ、セリフ、設定を引用しているところは、面白かったです。監督も全てが完璧にこなしてる訳では無いところに親近感が湧き、共感できました。舞台となっているサモアの伸び伸びした人達、土地の雰囲気が良ったです。全体的に観ていて、楽しく、清々しいて気分にさせてもらえました。
Smile we
史実をベースにタイカ・ワイティティ監督が作りあげた作品で、ドキュメンタリーもあるのも今作きっかけで知りました。
しっかり感動しました。コメディ全開なのかなと思ったら人間関係だったりに重点を置いて一本の映画になっていて素晴らしかったです。
序盤ワイティティ監督が直々にこの実話は素晴らしいんだ!でもちょっとオーバーにもしてみたよ!っていう茶目っ気全開のオープニングからニヤッとさせられるんですが、その後の展開もニヤリとさせてくれるものばかりで楽しかったです。
サッカーチームの面々がギャグ漫画かってくらいにポンコツプレーを連発するので、ここをオーバーにしたんだろうなぁと思いました。体育の授業でもそうそう見ないボールの軌道や足捌きだったのでクスクス笑わせていただきました。
監督を務めていたチームの不振で追い出されたロンゲンがサモアに半ば飛ばされる形でやってきて、チーム全体の杜撰さに呆れ果てていましたが、自分を見つめ直したりしてチーム指導に力を入れていく様子は鋭い剣幕が相まってコメディにも見えて良かったです。
公式戦の最中にチームの不甲斐なさにブチギレて帰ろうとするけれど、やっぱ自分自身も見つめ直さなきゃなという事で帰ってきて楽しもうぜ!ってテンションで盛り上がりまくる様子もまた暖かったです。
ファファフィネという第三の性を持つジャイヤが物語のキーパーソンになっていたのも印象的でした。女性になるためにホルモン注射を打っているので体つきも女性っぽくなっているけれど、完全に女性になってしまうとサモア代表にはいられないという悩みもありつつ、練習も最初は不真面目で、ロンゲンとぶつかり合う事も多かったけれど、お互い謝って解決して、友達くらいの関係性で物事を進めていったのが物語の流れをガラッと変えたなと思いました。
その後のエピローグでFIFAのお偉いさんまで駆け上がったというのが出て、本人の努力が実りに実りまくったんだなぁとちょっとウルっとしてしまいました。真っ向から性の取り組みを描いたのが清々しく、偏見なんてどこかいってしまうくらいに彼女は素敵でした。
真面目にスポーツ映画として観るとどうしても試合シーンのダイジェスト感だったりは気になるところですが、ワイティティ監督はそこを省いて選手と監督の関係性や成長を強く描いたんだなと思いました。
選手以外のキャラクターも濃くて、ロンゲンに面白いくらい懐く笑顔の素敵な少年や、頼りなさげだけど優しさでチームを包むコーチのエース、サモアのサッカー代表のゴールを望み続ける会長と、皆それぞれの形でサモア代表を応援している姿がとても良かったです。
サモアのロケーションも美しく、機会があれば現地に行ってみたい美しい光景に息を呑みました。
ワイティティ監督が最後を締め括ったと思ったら池に足を突っ込んで終わるという、それやりたかったがために神父の格好したんだなーと思うとなんだか微笑ましかったです。こういう遊び心全開なところに惹かれるんだろうなーと思いました。
良い作品に出会えました。観終わったあとハッピーになれる作品はなんぼあっても良いなぁと思いました。ワイティティ監督の次回作にも期待大です。
鑑賞日 2/27
鑑賞時間 16:10〜18:05
座席 G-5
監督...?
監督の感情の起伏がわからない。
最初のチーム発起のためのきっかけの場面はあるにせよ、それにしてはちっぽけなことでなぜあそこまでチームへの入れ込み方が変わるのか...理解できないギャップがあった。
そこに至るまでの小さい場面場面での描写を入れないと見てる側はただただ冷める。他にも同じ理由で首を傾げるシーンが多々あり、全編通すと見せ方が下手と言わざるをえないほど(この映画監督の他の作品は未鑑賞)。
媒体は違うけど、あれを漫画に直して出版社に持って行ったらボツだと思う。
そのくらい感情の動きをあまりに軽視していた作品。
ベスト・キッド(1984)見てて良かった~
予告編からしてもきっとよくある「弱小チームが新しい監督の指導のおかげで勝てるようになる」んだろうなぁ、とは分かっていましたが、
ようやくの1ゴールも引き分けに追いついただけ
ようやくの1勝も予選の初戦突破しただけで予選自体は次の試合で負けて次に進めるわけではなかった
けれども、なんか「よく頑張ったね~!とりあえず良かった良かった!!」と嬉しかったです。
そしてそして、制作陣はどれだけベスト・キッドの初弾映画好きなんだ〜ミヤギの名前でチームTシャツ作るって、そんなに好き??(笑)っていうぐらいリスペクトしててこれも嬉しかったです!!
特訓シーンでちゃんとベスト・キッドの、岩か何かの上でキックしてる有名なシーンを入れてるし!!(笑)
リスペクトが素晴らしい!!
キーパーも戻ってきてくれるし、ストライカーの警察官も良い味でした!
そして大事なことは、「楽しく取り組む」ことだと教えてくれて、良い映画でした。。!
とても面白い
今週は必見映画が渋滞していてそんな時は2周目から極端に上映回数が減りそうなものから見なければならない。サモアのサッカー映画など売り要素が弱すぎるのではないだろうか。マイケル・ファスベンダーにそれほど引きがあるとも思えない。そんな理由で真っ先に見ると、ゆるいながらもとても面白い王道のスポーツ映画だ。
トンガと公式戦初勝利を掛けて戦うが、トンガも相当弱いはずだ。オーストラリアは確かに強くて日本も勝ったり負けたりだ。Jリーグが始まってワールドカップに出るが1勝どころか1ゴールもとれなくて本当にサモアのような気持だった記憶がある。予選ではなく本戦なのだけど、ワールドカップではこれから先未来までずっと0ゴールなのではないかと思っていた。なのでゴン中山が予選で初のゴールを決めた時の歓喜が忘れられない。
ドラマとしてはトンガとサモアどっちがよりヘボかという、よりヘボなチームが負けると言う少年野球の試合のような見せ方ではなく、あくまで強い方が勝つという試合シーンが熱い。選手の体形がラグビー選手のようで90分間走り続けるのはつらそうだ。
娘に電話してやれよと思っていたら、すごく悲しい留守電だったことが分かる。あまりに悲しすぎてそれまでの態度がひどかったけど、むしろよく頑張っていたものだ。サモアのようなゆるい環境と感覚で暮らせたら、若いころは刺激が足りないかもしれないが、年寄りには癒しだ。『ベスト・キッド』がやたらと引用されている。監督の趣味かな。
難を言えば、『がんばれベアーズ』もそうなのだけど弱小チームに有力選手が突然現れて強くなる展開は冷める。あのヘボキーパーで大丈夫かよと思っていたら元の名選手が現れる。その彼自身、不名誉な過去を背負っていてそれなりのドラマがあり、いいけど、あのどん臭いキーパーが活躍する姿が見たい。
奇跡より努力より楽しむ。
2001年ワールドカップ予選で0対31という最悪の結果残した米領サモアサッカーチームの話。
世界最弱サッカーチームの監督を引き受けたトーマス・ロンゲン監督とサッカーチームのメンバー、とりあえず「1ゴール」を目指そうとコメディタッチで描く実話。
ウェルカムなサッカーチーム側とちょっと高飛車な感じと上から目線の監督トーマス、そんな関係性だから、なかなか噛み合わない感じで進んでくんだけど、1人のチームメイト見た目は女だけど実は男のジャイヤ(ジョリー)と呼び名の事で衝突を気に良くなってく関係。
作品事態は普通に笑えて楽しめ進んでくストーリーなんだけど、終盤予選試合の後半戦前のハーフタイム、トーマスの娘の話で一気に雰囲気変えるの反則ですよね、娘のエピソードには涙(笑)
相手を威嚇のチュッチュッと相手のシャーシャーには何か笑えました。
ミヤギ先生
歴史的大敗を期したサッカー代表の
米領サモア31-0で。
そこでヨーロッパ出身の監督を招く。
だが彼は気性が荒く、あるチームの監督を
解任された人であった。
監督と馬が合わない選手達が互いに認めあい
高めあっていく。
ベストキッドのマエストロミヤギの真髄が
ちょいちょい出てくる。弱かった者が強い者
に立ち向かって行く気持ちの例えであったの
だろう。Tシャツにもミヤギと書かれてたなぁ。
あの相手を仕留める時のポーズも、何故か
サッカーで。
サモア文化の美しさや家族との絆、相手を威嚇する行動や踊り仕草は丁寧で分かりやすく良かった。ファスベンダーのブチキレ方も最高。
ジャイヤ役のカイマナも良く見つけられた
と思う。ジャイヤさんの笑顔と葛藤が
絶妙なスパイス感を出してた。
誰にでも消し去りたい過去はある。
忘れたいが忘れられない。
だが、それを支えてくれる仲間がいたら
乗り越えられるかもしれない。
ワイティティ監督らしい哲学がある感じがした。
ユーモアたっぷりで米領サモアを満喫し
ホッコリした楽しい映画でした。
道に迷い孤独な人へ
ハートウォーミングな実在の物語。
監督も、キーパーの選手も、孤独な負け犬ではない。
傷の舐め合いではなく、シンプルにサッカーを好きで楽しむ心を持ち続けたことが良かったのかもしれない。
帰る場所=ホームは、地図の上や建物ではなく、自分の心に。
厳しい監督と練習についていった選手達もすごい。
楽しめ。結果は後からついてくる。
対戦相手のトンガチームは、きっと勝てる試合、勝たなきゃ、勝つべき、と考えてしまったのかもしれない。
スポーツは面白い。
試合後の自然豊かでのんびりした雰囲気に癒された。
久しぶりにハイキングに行きたくなった。
コミカルに描かれる歴史的敗戦から歴史的偉業に至る過程、その中に紛れる意外な毒が特徴的
2024.2.24 字幕 MOVIX京都
2023年のアメリカ&イギリス映画(104分、G)
原案は2014年のドキュメンタリー映画『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦(マイク・ベレット&スティーヴ・ジャミソン)』
歴史的大敗を喫した代表チームを任された問題監督を描く実話ベースのスポーツコメディ映画
監督はタイカ・ワイティティ
脚本はタイカ・ワイティティ&イアン・モリス
原題は『Next Goal Wins』で、「次に勝ち取りたいのはゴール」という意味
物語は、2001年のW杯予選にて、オーストラリア相手に0対31という屈辱的な敗戦をするシーンが想起されて始まる
それから10年後の2011年、米領サモアのサッカー協会は、監督の交代を決め、全米サッカー協会にオファーをかけた
その頃、アメリカU-20の代表監督を務めていたトーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)は、W杯出場を逃したために解雇されていて、次の仕事として米領サモアの監督を言い渡されていた
トーマスは行く宛がなく渋々オファーを受け、僻地の世界最弱チームの底上げを行うことになったのである
映画は、史実ベースのスポーツコメディになっていて、一部の選手だけが実名で登場している
全米協会の会長アレックス(ウィル・アーネット)、トーマスの別居中の妻ゲイル(エリザベス・モス)なども実名登場し、選手としてはジャイヤ・サルエラ(カイマナ)、ダルー・タウムア(ビューラ・コアレ)、ニッキー・サラプ(ウリ・ラトゥケフ)などの主要選手が当てはまる
後半に描かれるのはW杯の予選で、4チーム総当たり戦の第1戦目となっていて、米領サモアは初勝利を手にするものの、トーナメントを勝ち上がれずに予選で敗退をしている
今回は、弱小チームが1点を取ることを目標にしていく様子を描き、その延長線上で公式戦初勝利をする瞬間を描いていく
だが、物語のメインテーマはトーマスの再生であり、事故死した娘ニコール(ケイトリン・ディーヴァー)の心の傷であるとか、妻との別れがサラッと描かれていたりする
物語は、トーマスが米領サモアの雰囲気とかスピリットにふれていく中で理解し、勝つためのサッカーではなく、楽しむサッカーを選択する様子が描かれていく
彼らのサッカー観はトーマスと相容れないものだが、かと言って、精神的に前向きになれないとうまくはいかない
郷に入れば郷に従えというように、米領サモアでの生活が彼の価値観を変えていく様子が描かれているのが印象的だった
コミカルなシーンが多いのだが、事実ベースかどうか不明の「復帰オファーをかけた選手が事故に遭う」というシーンは悪趣味に思える
冒頭と締めで登場する司祭(タイカ・ワイティティ)がストーリーテラーを務めるのだが、明らかに滑っている感じになっているのも微妙だと感じた
いずれにせよ、ガチの経過を知りたい人はドキュメンタリーを観た方が良いし、タイカ節のコミカルな映画を観たいなら本作の方が良いと思う
フィジカルがあってもメンタルが育たないとダメだし、メンタルを支えるフィーリングも大事だと言える
あなたの心はいつもどこかにある、とタビタ(オスカー・ナイトリー)が言うように、トーマスの心はずっと「留守電に入っていた娘のメッセージ」に支配されていた
このメッセージがひとつずつ再生されていくごとに、トーマスとチームの心の距離が離れていくのが印象的で、彼自身が前に向くためにどうしたら良いかを描いていく
ラストはゲイルとの別れを決意し、サッカーから身を引くことになるのだが、心の区切りがつくまで離れるのも悪くないのではないか、と思った
主人公の衝撃の過去には唐突感が否めない
舞台となるサモアの土地柄にマッチしたユーモラスな語り口は楽しめるし、劇中で何度も引き合いに出される「ベスト・キッド」のように、予定調和そのものの展開も心地よい。
クライマックスのゲームにしても、途中から、選手の回想として語られることによって、ドラマチックさが増すように工夫されているのもよい。
個性的でクセ者だらけのチームのメンバーだが、特に印象的なのは、「第三の性」の持ち主であるキャプテンだろう。
彼女(彼?)と主人公の監督が、ビデオを見ながら戦術を考えたり、以前の代表メンバーをリクルートしたりするところは、チームが強くなっていくことに説得力を与えているし、監督が彼女のことを間違えて呼んだ名前が、後に、監督の亡くなった娘の名前であることが明らかになるくだりでは、彼らの関係性の深さが実感できて、思わず胸が熱くなった。
ただ、監督が、自分の辛い過去を打ち明けるそのシーンは、衝撃的ではあるものの、前後のシーンとの脈略があまりなく、唐突な感じがしないでもない。
よく考えれば、監督が、試合中に物に当たったり、職を投げ出そうとするほどイラついていたのは、自分の不幸な身の上を試合展開に重ねていたからなのかもしれないし、選手達に「勝つことに囚われずに試合を楽しめ」とアドバイスできたのは、恵まれない境遇を嘆いてばかりいた自分の姿に気がついたからなのかもしれない。
ただし、そうしたことは、明確な説明がある訳ではないので、脳内で補完するしかない。
物語の鍵となるエピソードだっただけに、そんなところにモヤモヤしてしまったのは、少し残念だった。
【アメリカのサッカーコーチが世界最弱だった米領サモアのコーチに就任した訳。今作は哀しき過去を持つコーチと多様性溢れる負け犬根性が染みついた選手たちとの交流と再生を、笑いと共に描いた作品なのである。】
■舞台は太平洋に浮かぶ島国、米領サモア。
ワールドカップ予選でオーストラリアに0-31で大敗した過去を持つ世界最弱チームを立て直すために来た米国人ロンゲン(マイケル・ファスペンダー)は就任早々、余りにマイペースなメンバーと衝突し、キレまくる。
◆感想
・今作が優れた指導者が、弱小チームを栄光へと導くというステレオタイプな作品になっていないのは、ロンゲン自身が(後半、彼自身の口から言われるのであるが。)2年前に愛する娘を交通事故で失って居たり、フォワードのジャイヤが”第三の性”を持つ選手であったり、他の選手たちも過去の大敗にトラウマを持って居たり、登場人物夫々が問題を抱えている点だと思う。
・今作ではそれをユニークに表現している点が良いと思う。島の車の速度が異様に遅かったり、(クスクス。)サモアの人達のマイペースな生き方に、最初は苛苛しつつも徐々に抱えた傷を癒されて行くロンゲン。
- この物語はロンゲンが、愛する娘を亡くした過去を再生し、人間としても成長する物語なのである。故に彼は念願の一勝を上げたチームに別れを告げ、新たなるアメリカチームのスカウトになる決心をしたのである。-
・彼は案内された海岸沿いの家に、妻(エリザベス・モス)と娘と自身の写真を飾る。そして、携帯電話に残された娘が残した、彼女の明るいメッセージ。
”パパ、携帯電話のかけ方知ってる?忙しいかもしれないけれど、連絡してね。”
ー 何気なく見ていたこの数シーンが後半に効いてくるとはなあ・・。沁みたなあ。ロンゲンが選手の皆に娘の死を告げ、後悔する気持ちを告げたシーンは泣けたなあ。-
・ロンゲンは、最初はチームを引っ張るフォアードのジャイマヤにキツク当たるが、彼が”第三の性”の人間であると知り、彼の生き方を認めていく姿。
ー ジャイマヤが泣きながらホルモン剤注射を辞めた事を告白するシーン。”何だか、どんどん醜くなっていく気がして・・。”ロンゲンはそんな彼を優しく抱きしめるのである。-
・ロンゲンは自分の意志通りに動けない選手たちを見て、試合中に椅子はぶん投げるし、クーラーボックスまでぶん投げる。
ー だが、彼はアメリカのチームの監督だった頃からキレるようになっていたのである。娘の死が切っ掛けだろうか。それを見てサモアの選手たちがビビる姿も何だか可笑しい。-
・W杯予選の一回戦。相手はトンガ。お互いにラグビーのシバタウで威嚇しあい(イマイチ、揃っていない所も可笑しい。)試合開始。ジャイマヤの活躍もあり、初得点を挙げ、屈辱の31得点を献上したゴールキーパーのニッキーが見事なセイビングをする。
・だが、前半の試合ぶりを見て激怒するロンゲンを、米領サモアのサッカー会会長のタビタ(この人、色んな役割をしている。一生懸命なのだろうが、何だか可笑しい。クスクス。)は必死に説得し、選手ルームに戻ってロンゲンが行った事。
それは、ホワイトボードに書いていた試合作戦の図を消し去り、ニッコリマークを書いた事。
ー それまで、プレッシャーでガチガチだった選手たちの表情がその絵を見て変わるのである。-
<今作は、ほぼ実話だそうだが、ステレオタイプ的な”勝利、それは努力、友情に支えられたもの”と言う描き方ではなく、互いを尊重する”多様性”をキーワードにした素敵な様々な葛藤と心に傷を抱えた人達が再生して行く様を可笑しく描いた逸品なのである。>
ややわかりにくい点はあるが(後述)今週おすすめ枠。Jリーグのファン等もぜひ
今年77本目(合計1,169本目/今月(2024年2月度)30本目)。
(ひとつ前の作品「犯罪都市 NO WAY OUT」、次の作品「マッチング」)
史実をもとにとった映画なので、あることないこと描くことができない、一種のドキュメンタリー映画です。
また、監督の視点から描いたサッカー映画ですが、「サッカー映画」である点は間違いないので、Jリーグでも何でもサッカーというルール自体を知らないと理解自体がハマります。
ドキュメンタリー映画という事情はあるので、ある程度の改変はあるとしてもあることないこと描けないし、淡々と進んでいきます。最初に描かれる31点差というのが衝撃的で、実はこちらも「何もいきなり予選からそんな試合が組む必要ないんじゃないのか」という意見が続出したのも事実で、現在では発展的に「FIFAの上位ランキングの1次免除、1~2次免除…」といった形でバランスがとられる形になっています。
英語圏であることから英語で話されるのもゆっくりであること、また、現地のキリスト教の文化も示されはしますが基本的に最低限であり(それらの深い知識は一切要求されない)、その点について深い理解が求められなかったのは良かったです(せいぜい、応援しているJリーグのクラブがあるかないかだけでもある程度違う、といったところです)。
ただ、そうした属性…つまり、Jリーグ等「ある程度サッカーのルール等を知っている」観客は字幕上混乱する部分があります。ここは何らか補足が欲しかったです。
ストーリーについてはほぼほぼドキュメンタリー映画という事情があるほか、実はこの映画、ヨコハマ・フットボール映画祭(名前の通り、サッカーを専門にした映画祭り)で2015年という相当前の作品であることからVODなども存在する可能性があることも考慮してネタバレは少な目にしています。
採点は以下を考慮したものです。
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(減点0.3/サモアがトンガ戦でとった「ある行為」が何の意味を持ったか理解が難しい)
このことと、「サモアは次戦の結果により…」という部分(いわゆるドキュメンタリー映画にある「結末はこれです」という部分)からくる問題です。
実際の選手でなくても、Jリーグのクラブのサポ程度であれば、サモアがトンガ戦で取った「ある事項」については極めてリスキーな行為であることは誰しもわかると思います。それは、自分も相手も「選手生命」という観点から、あるいはサモア自体の成績にも関わることであることは自明です。
ところがそのあと「次戦の結果により…」という部分が出ることから、このときの予選はいわゆる「一発ノックアウト式」で行われていたのかな?と類推することは可能です。一般的なW杯、Jリーグで採用される勝ち点方式を取る限り、この映画の趣旨である「1ゴールでも」ということを考えた場合、「サモアの選手のとった行為」は極めてリスクのある行為です(一般的なW杯の試合は延長等がない(決勝一発ノックアウトは除く)ため、両者に勝ち点1がつくものと思われます)。ところが「サモアの次戦の結果により…」の表示から「一発ノックアウト方式で、勝ち負けを絶対に決めなければならなかった」というように類推可能ですが、実はそれもトラップで、当時の試合はホーム・アウェイの概念がない4チームによる3試合制で「「1チームだけが」2次予選に進める」ものだったのです。つまり、「次戦の結果により…」は、正しい部分も間違っている部分も存在することになります。
この部分は、日本でこうしたサッカー映画を見る場合、日本はもちろん、日本や隣国の韓国ほか、一般的に日本がよく戦う国はたいてい予選(1回戦)が免除されているのでわかりにくい部分がある(これらの1次予選の運営がどうなのか、触れる機会がまずもってない。せいぜい言えば、台湾を応援するサポーターくらい?)ので、そこは何らか説明が欲しかった(調べればわかるが、映画の放映時間内に調べることはできない)といったところです。
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