ボーはおそれているのレビュー・感想・評価
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アリ・アスターの2時間59分の挑戦状
『ミッドサマー』のアリ・アスターが観る者に叩きつけた2時間59分の挑戦状。どう生きてきたらこんなトンデモ展開満載のお話を考えられるのか、彼の脳の構造を観てみたい…ってそれを具現化したのがこの映画か。
とにかく冒頭シーンだけで本作が一筋縄ではいかぬ内容だということが察せるが、アスターにとって“母親”は重要なモチーフ。『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』のいずれも、姿こそ現さないものの、母親の存在は主人公に大きなトラウマを与えていた。単なる帰省のつもりだったはずが一転し、母の死の真偽を確かめることとなった主人公ボーだったが、その帰路は想像を絶するものだった。家族について「煩わしくて、終わりのない義務感」と語ったアスター監督。この言葉が、本作のなんたるかを物語っている。
アスターはこうも言っている「これはスリラーじゃなくコメディだからね」。ボーに降りかかる数々の受難は、本人にとっては悲劇でも、他人からすれば喜劇。そういう点で本作は、トラジコメディ(悲喜劇)。
これほどまでに、ホアキン・フェニックスの生来の困り顔が激ハマリした映画もそうないかも。
出口のない暗闇を3時間歩く感覚になる
ハピネスファントム・スタジオさんからの招待で先行試写会お邪魔致しました!
「ヘレデタリー/継承」「ミッドサマー」に引き続き日本公開待望の3作目。
まさかの上映時間2時間59分で期待値が上がるとともに、『どん底気分になればいいな』というアスターの言葉にビビりながら挑んだ当日。
今回の作品、良く言えば”遊び心がある”、悪く言えば”作品の私物化”かなと思います。
(映画なんて監督の私物化でしかないのは分かってるけどね…笑)
ネタバレはできないので所感にはなりますが、3時間出口のない暗闇を歩くぐらい不安になりました(笑)
日常の些細な嫌なこと、強迫観念が言語化・映像化されていく爽快さがあると共に、
一切幸せな展開に落ち着かず、終着点が見えないまま進む放棄っぷりに愕然としました。
監督の言う「不安な気持ちになって欲しい」という目的は大いに達成されます。
ただ落としどころは自分で見つける必要があるので、一つの映画として読解が難しく能動的に見ざる負えないところは注意です。
監督がちりばめたメッセージを回収しパズルを完成させた先に、意味の分からない絵が完成するだけの可能性もあるのであまり深く考えないで手放しにするのもあり。
初老の男が実家に帰る家路で、右往左往している、ただそれだけのストーリーではあるのですが、えらく回り道して3時間が過ぎていきます(笑)
アリ・アスター独特の死体表現や突拍子のない演出には最初から痺れるところはあれど、
今作はかなり控え目
その人物の人生や頭の中を追体験すると考えれば、色々辻褄はあってくるのかなと思います。
最近見た作品で似た感情になったのは「君たちはどう生きるか」です。
散りばめられた導線やメッセージを汲み取って自分で完成させていく所が同じです。
個人的には「人の振り見て我が振り直せ」そんなメッセージを受け取り、自分の行動を見直し自己都合で物事を進めていないか振り返るきっかけになりました。
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