「強大な母の身勝手な過保護が生んだボーの半生」ボーはおそれている ももがーさんの映画レビュー(感想・評価)
強大な母の身勝手な過保護が生んだボーの半生
ボーの困った顔に彩られた3時間でした。
冒頭の犯罪だらけの治安激悪アパートの場面は、臆病で心配性のボーからはそう見えている、ということだと思います。おっそろしい場所で日常を営んでいるボー。自分で判断するより母ちゃんの意見に頼っている印象。
仕事をしてる場面はないけど、カウンセリングは受けています。母ちゃんからお金貰ってるのかな。
交通事故に遭うと(偶然でなく仕組まれてるんだけど)、何故か加害者の家で気味悪いほど丁寧に扱われます。これも怖い。ボーの困り顔も健在。
夫も妻も笑顔が怖い。娘はまだ10代だと思うけど壊れてます。なぜか一緒に住んでいる、戦場で亡くなった息子の友人?は、戦争トラウマを連想させるぶっ壊れっぷりでした。
ボーが足止めされたのは、母ちゃんの葬儀の準備に時間が必要だったのでしょう。
森は異界的な場所。死者とも出会う境界。お父さんが出てきたのは森という場所だからかな。そして、劇の中でボーは自分のifの人生を体感したのだと思います。
ボーが自分の人生を考えるための回復の旅のように感じました。
そしてラスボス母ちゃん宅。壮大なヤラセ葬儀が終わったところでボー帰宅。
屋根裏の場面も何かの象徴だと思いましたが、考える前に爆笑で過ぎていった。
母ちゃんは、無償ではない愛をボーに過剰に注いでたということでしょう。見返りを求める愛はボーを極端に臆病にさせ、金にものを言わせて人生を奪っていった。
ただ、母ちゃんも辛い幼少期を過ごしたことが語られます。家族の物語は連鎖していく。
ボーはボートで暗いトンネルの中を脱出し、強大な母体内から自立しようとします。
最後の水上コロッセオの場面は現実ではなく、ボーの内面世界を描いてるのかな。
果たして母ちゃんの世界から自立して自分の人生を歩んでいくのか、それとも映像の通り自爆したのか。
いろんな解釈が観るものに委ねられていますが、爆発する前にボーの顔つきが変わります。もう困り顔ではありません。
私は、ボー自身の人生を歩みはじめていて欲しいと思いました。