「ゴダールの映像的実験がどのようなものだったのか、概要の理解に適した一作」ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト) yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ゴダールの映像的実験がどのようなものだったのか、概要の理解に適した一作

2023年11月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

世界で最も著名な映画作家の一人であるジャン=リュック・ゴダールの、映画作家としての人生をたどったドキュメンタリー。

ゴダールは2022年に亡くなりましたが、本作が描くゴダール像は、それ以前の、特に60年代の活動に焦点を当てています。作中である人物が語る、ゴダールの作品を観ることは1960年代の世界を見ることでもある、という証言が的を得たものであることは、数々の映像、証言からも明らかです。

ゴダールは今ではフランス映画を代表する映画作家、巨匠という評価が確立していますが、元々は既存のフランス映画に対する強い批判意識が創作の出発点となっていたことなど、確かに既存の評伝が語ってきたゴダール像をなぞる要素も多いのですが、それでも当時の映像とゴダール自身の発言は全く重みが違います。

「ゴダールとは何者だったのか?彼の作品はどのような意味があったのか?」という作品に通底する問いと、映像の編集がきちんと連動している上、いくつかの章に分かれているので、ドキュメンタリー映画にありがちな、作品の方向性が見えなくなって迷子になるという心配はしなくて済みました。

社会への反逆を謳いつつゴダール自身は富裕層出身であること、映画を通じた「革命」という主張は現実から遊離していたのでは、といった当時から起きていた批判についてもきちんと入れ込んでいる点も興味深いものでした。

とはいえ、彼が間違いなく稀代の映像作家であったことは本作を見るだけでも十分に理解でき、それだけに逝去が改めて惜しく感じます。

yui