劇場公開日 2023年8月25日

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「「スマホは14才になったら」」ファルコン・レイク ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「スマホは14才になったら」

2023年10月7日
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難しい

 先生からの課題映画w
はじめて訪れた劇場で、慣れない雰囲気も手伝ってやや緊張しながら鑑賞。

 さてさて。。

 何だろう。
 ずっと「死」の不穏さが漂っている気がした。

 もうすぐ14才のバスティアン。
 クロエ16才。

 まだ少年の域は出ないものの、思春期の入り口に立っているバスティアン。
 16才のクロエはもう少女とはいえない。
すでに色々な経験をしているし、身体つきももう「女性」

 大人になった今の私なら13才と16才なんてさほど変わらない、と片付けてしまいがちだが、忘れているだけ。

 自分が13才の時の16才はすごく「大人」に見えていたし、16才の時の13才なんて、ただの「子供」だと思っていた。
 あの年代の3才差はとても大きな違いだ。

 そして、この年代の少年少女の時期といったら「若さ」「未来」「希望」といった明るいワードを連想するが、思い返すと、自分があの年代だった時って、とても刹那的だったように思う。

 性の目覚めと同等位に死に興味を持ったり、、、
 「若さ」とは真逆の「死」って実は常に側に付きまとう存在だった気がする。

 クロエも死に強くこだわっているように見えた。
 湖に幽霊がいると言ってみたり死体の真似事をしたり。。
 簡単に「死にたい」と言えてしまう未熟さが見ていて辛かった。

 バスティアンから見たクロエは自分よりも遥かに大人に映っていたが、しかし、クロエは自分より「大人」の友達とは同じステージには立てていない。

 そんなもどかしさみたいな感情を、自分よりウブなバスティアンをからかう事で優越感を得ていたのかなと思った。

 バスティアンは(恋ではなかった気がするけど)クロエを意識し始める。
 でもクロエにとっての彼は「大人の男性」との位置付けでは勿論なく、かと言って、恋愛対象としての「異性」とも、見ていなかったと思う。
 むしろ自分の気持ちを安心させたり、孤独を埋める為の都合の良い存在なのかと思えた。

 「一生独りぼっち」
 「どこにもなじめない」
このセリフには心が締め付けられた。

 あの年代の揺れ動く心情、嫉妬と欲望、居心地の悪さが丁寧に描かれていた。一瞬だけど、永遠に感じるよね。。

 バスティアンのあの発言。
あの言葉をクロエに言えるバスティアンにも驚いた。
 そしてあの流れからなら身体をまじ合わせる行為に及ぶ事の方が簡単だし、自然だと思った。
 しかし、実際はかなりショッキングで想像すら出来ない流れとなった。

 クロエの「バスティアンに、自分を傷つける大人の男性と同じになって欲しくない」と思う心の表現の仕方だったのか。。

 「進撃〜」を思わせるアニメを見るシーン。実際のアニメでも、エレンは自らの手を噛み、血を流す事で巨人になるのだが、、、その真似事をするクロエ。

 自分を傷つける行為の真似事をするクロエ。抱えている心の闇を感じた。

 嘘をついたバスティアン。
嘘がバレてクロエを追いかけて夜の湖へ。。
 泳げない彼のその選択。
又クロエと話したい一心だったのか。。

 バスティアンは、クロエの中で一生忘れられない存在としての位置を確立してしまった?と考えた。

 ケベックの森に囲まれた閉塞感漂う湖。木々の間にも何かが潜んでいるような雰囲気。目に見えないものを感じる不気味さ。
 終始感じた「死」の不穏さはこの舞台からも感じ取れた。

 そんな舞台がより一層に物語を押し上げていた。

 誰でも通るあの年代の大切な青春の1ページ。あの時期に得られる痛みや死の感覚、嫉妬や異性への興味など、初めて対峙する感情。
 生身の!自分の身体でもって体験する事。大切な経験。
 それらを持って大人になっていく。。

 本作は残酷な青春の1ページになってしまった。。
 単なるボーイミーツガールものとして括れない、一筋縄ではいかない青春映画でした。

ゆき
NOBUさんのコメント
2023年12月31日

コメント有難うございます。
 ゆきさん。良いお年をお迎えくださいね。(お互いに。)では。

NOBU
いぱねまさんのコメント
2023年10月7日

失礼します

ご覧頂き、大変嬉しく存じます 又、無理にお奨めしたこと、本当に失礼しました
中々のオープンエンド仕立ての作品に、戸惑う事も多かったと存じます
その中で、真摯で素直な貴殿のレビュー、大変清々しく、爽やかな気持で拝読させて頂きました 女性監督視点での構成にも新鮮味を感じて頂けたかと思います

ヒロインの冒頭希死念慮なシーンもさることながら、そもそも大人の事情みたいなものがちょいちょい描かれるのも今作の特徴で、ヒロインの母親の恋愛事情(不動産業的仕事で、客と恋愛関係に成りがちw)、そもそもあの住んでる家はどっちの家?、固定資産税の未払等々の大人の事情を差込む辺りに、単純なジュブナイルとは違う、不思議な世界観を醸し出していて、でもあの自然と、何故だか湖畔に集まる若人の不埒で危ないパーティ感、その設定がこの不気味感を漂わせていて、昔のスプラッター映画も包摂しているのではと感じた次第です(^_^;)
で、あのヒロインの健康的且つ小悪魔的な姿態ですしね・・・ あれは日本だけでなく世界標準なんだと興味深く捉えました いずれにせよ、観賞頂いた事、厚くお礼申し上げます

まなみ100%は、逆ベクトルの映画ですね(汗 もうドンドン上映終了が続いておりますが、もしかしたらミニシアターだと遅れてスタートするかもしれません そもそもそういう作品だと思いますし、どんなマジックを使ったのか、イオンシネマ系のシネコンに掛るのは大きな力が働いているとしか・・・大人の事情ですねw 新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具現化する音楽×映画プロジェクトであるMoosic LABが絡んでいるだけあって、とにかく劇判で持って行かれる作品です
コンセプトが上記の理由だけあって、その善し悪しは置いておいて、感情が揺さぶられるのは小賢しいとはいえ、お墨付きです(^_^;)
youtubeで『【合唱】「虹」 (映画「まなみ100%」より)』を聴いて、興味が湧いてきたらご検討下さい 勿論、決して強要ではないので興味無ければ聞き流し願います
勝手なご提案、改めてお詫び申し上げます。

いぱねま