劇場公開日 2025年2月14日

「それを「愛」と呼ぶのは男の幻想」ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それを「愛」と呼ぶのは男の幻想

2025年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。カリン・アイヌーズ監督。自らの離婚を正当化するためにカトリックから抜け出して英国国教会を作ってしまったイギリス国王ヘンリー8世。その6番目で最後の妻になった女性の生きざまを描く。国王が宗教をも支配する体制において、聖書第一主義のプロテスタントに目覚めた女性はいかに権力と対峙するか。
王の留守には政務をしきる有能な女王でありながら、暴虐な王のひと声で殺されることもある立場の王妃。プロテスタントに肩入れしながら危ない橋を渡っているが、王の子を身ごもることで王亡きあとの政治力の確保を狙っている。ところが、王がなかなか死なず、逆に反逆を疑われて死の瀬戸際まで追い込まれていく。しかし、最後の土壇場で、王妃に「愛」を求める王の隙に付け込んで、、、という話。
DV夫がそうであるように、男は自らの抑圧性に無自覚であり、相手の一方的な献身を求めて、それを「愛」と呼ぶ。結婚は政治だと冷徹に認識している王妃は決してそれを「愛」とは言わない(劇中では「I love my King」とは言うが「I love you」とは言わない)。ところが同時に、前妻たちが残した子どもたちには親として愛情豊かに親切に接している。王妃に「愛」がないわけではないのだ。男の幻想的な愛と女の実質的な愛。

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