劇場公開日 2023年12月22日

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PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価

全680件中、21~40件目を表示

4.5遠くに行った我が父に思い馳せる

2024年12月22日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

難しい

ヒラヤマの姿と生活ぶりは、今年2月に亡くなった私の父親を思い出しました。彼は妻(私の母)を早くに亡くした後は一人暮らしでした。生家は小さく古い家で、私はあまり好きではなく早々に都会に出ました。

ずっと遠く離れて暮らしていたので、一人暮らしの彼が何を楽しみに毎日暮らしていたのかわかりませんでした。いつか質問したいと思っていたが、なかなか私は帰郷しませんでした。そんな中に彼は脳卒中で倒れてしまって言葉を発せなくなり、そのまま息を引き取ってしまいました。

遺品整理すると、彼(父親)のPCとスマホから大量の草花の写真が出てきました。
それでも私はわからなかった。彼が幸せだったのかどうかを。

この映画を見て、父親の過ごしたであろう日々に私は少しだけ思いをはせることができました。だから草花の写真をたくさん撮っていたのだろうかと。

しかし、まだ私にはわからない。この映画を見ても解決はしていない。
父親が幸せに暮らし、死において後悔したのか否かを。ずっと心に引っ掛かっています。
映画のラストシーンでは、新しい人生が毎朝始まるという曲に包まれる、ヒラヤマの表情からは両方に読み取れました。だから、わからなかった。

ただ、幸せだったのかどうかはわからないけど、毎日しっかりと生きる、Perfect daysだったのだろうとは思えました。

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申酉

3.0プライムビデオで見ました

2024年12月22日
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鑑賞方法:VOD

知的

難しい

幸せ

大体のストーリーが分かっていたのと、そのうちプライムビデオかネットフリックスで見られるようになるだろうという理由で映画館上映時はスキップしましたが、今日気がついたらプライムビデオで見られるようになっていました。話題作でしたので見ました。
ポツポツとエピソードをつないで、でも全体を見てねという「詩」のような作りの映画ですが、直ぐに退屈になってしまい、何回かに区切って見終わりました。こういう映画を作りたかったんでしょうね。それは分かります。
ラストシーンの涙は分かるのですが、妹と別れた後の涙は悔恨の涙だったのか、私の理解を超えていました。

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C.B.

5.0哲学的

2024年12月22日
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学生が作ったドキュメンタリーみたいだが、そうではない。ドイツの巨匠が撮った意味があるとおもう。主人公が毎日、同じように暮らそうとも周りが変化するのだから、彼の毎日も変化はある。住む世界が違うと兄を嫌う妹。しかし、主人公は、「ここには沢山の世界がある」という。人はその世界を変わろうと普通は欲をだす。すると生活が乱れる、足るを知れば心も乱れない。これは宗教感、哲学である。パーフェクトな世界なのだ。
最後の音楽の歌詞どおり、夜明けが来れば新しい人生、そして主人公の楽しそうな顔。彼の人生に迷いはなく、人生を謳歌している。幸せな気分になれる映画だ。彼の周りには自分の欲をどう扱っていいかわからない迷い人が集まり、知らぬ間に憧れのような好意まで抱く。掃除をするということは尊く、毎日がリセットもされ、僅かな不足は足し、大きな不足はまた別の世界になる。日本が仏教、神道、儒教を混合して信じてきた国ならではであるが、最近は無宗教を口にする人が多い。日本人ならではの暮らしぶりはここの宗教感から来ているのだ。でないと他国にもこのような国が現れるはず。
主人公は、自分の部屋も、あんなに綺麗にしていて、きっと彼は毎日が晴れやかだろう。そして彼だけでなくその前にも朝早く掃除をしている人がいて、はき清められる音で起きる。若者が嫌ったトイレそうじの仕事を次の女性が頼もしくシフトを引き受ける。貰った仕事に精一杯つくす。それが日本人感なのだろう。

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スクリュ

3.5引き算の美学。説明を極力排除して観ている側の想像力を掻き立てる。「...

2024年12月22日
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引き算の美学。説明を極力排除して観ている側の想像力を掻き立てる。「手法」と言ってしまえばそれまでだが、それを超えて溢れてくる何かがある。
それがつまりは役所広司であり、役所広司の成せる業であろう。感嘆してしまう。

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KQ

3.0平山の日々を乱すこと絶対許さない

2024年12月21日
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鑑賞方法:VOD

我々おじさんはどうして日々のルーティンを乱されることをこんなに恐れるのだろう。
こんな何もない出来事の2時間を映画にしてみせる作品は本当に凄いのだけど、おじさん批評としてもかなり鋭い作品でした。
我々は何者なのか、久しぶりに思った作品でした、おじさんとして。

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あした

2.0暇なら観てもいいが…

2024年12月15日
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鑑賞方法:VOD

これ、世界的な映画監督が撮った作品なんですか? すっごい俳優を使ってすっごい丁寧に作っているけど、僕には学生映画のちょっとよくわからない部類に入る程度の作品としか思えなかった。とにかく「匂わせ」が過ぎる。次から次へと匂わせるのだが、結局何がどうなってそうなったのかが全く描かれない。核心がないのだ。いったいこの映画から何を感じろと? セリフではいろいろとそれ風なことを言うのだが、その背景に何があったのかが描かれないので、映像に感情が乗って来ない。たとえば、十何年ぶり(数年ぶりかも)に会った妹が「あなたとは住む世界が違う」と言うのだが、いくら金銭的な差があっても職業の差があっても、「住む世界が違う」とまで言えるものだろうか。平山が「反社」だとか人を殺したというのならまだ言えるかもしれないが、独身でアパートに住んでトイレ清掃の仕事をしているからといって、そこまで言ってしまう妹はどれだけ人を見下げているのだろう、と思ってしまう。やはりそこをちゃんと描かないから、よく使われる言葉ではあるが違和感を感じてしまう。そのあと、平山は妹を抱きしめるんですよ! 意味わかんないですよ!
また、挿入されるモノクロの何かの残像のようなものが何なのか、結局最後までわからなかった。夢なのだろうか? だとしたらその夢の意味とは?
で、映画の文脈からすると、それまで平穏に進んでいた日常に次々と異変が挟まり始め、平静を保てなくなった平山が、異常を来して車を運転しながら涙を流す、という映画だったと理解してよろしいか?(よろしくないんだろうけど、そうとしか解釈できないのだ)

監督が小津安二郎のファンで、主役の名前が小津作品によく出てくる「平山」ともなれば、小津作品ばりのシャレの効いた映画なのかと思った(評価高いからもしかしたらと)が、全くそんなことはなく、同じなのは画面の縦横比だけだった。

画面には次々とファッショナブルな公衆トイレが映るのだが、結局トイレの主役は建物じゃなくて便器だということがよくわかった。

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Nightmare?

4.0日常=素晴らしき世界

2024年11月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

何気ない平凡な日々。
ちょっとだけいつもと違う日。
過去から繋がる今日一日。
朝目覚めて、夜眠れる日々のなんて素晴らしい一日なんだろう。

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上みちる

3.5失われつつある日本

2024年11月15日
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鑑賞方法:映画館

駐車場付きの都心のアパートに住みのトイレ清掃員の日常。
将来どう評価されるのか分からないか、今みると切ない。

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mikyo

4.5ただのトイレ宣伝映画ではありません

2024年11月12日
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鑑賞方法:映画館

知的

自分の中で理想の人物、主人公の平山さん。多くを望まず平穏で幸せな生活は、多くの苦悩と挫折を乗り越えて来た末の結果だったと知る事になるラスト。自分の中にあった羨望の目が、一瞬でそこへ辿り着くまでの道のりの険しさを教えてくれました。今の自分に肉親まで捨てる覚悟などありませんが、幸せになる事を諦める訳にはいきません。そんな事を考える映画となりました。

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ankh

3.0下を向いて歩こう

2024年11月2日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

幸せ

主人公はチープなフィルムカメラで「木」を撮るのが日課
ただ、カメラを膝の上に置いてレンズを上向きで撮る。それを、モノクロで現像する。ファインダーは覗かない。木漏れ日すら眩しいのか、上を見上げることはしない。
根元に芽吹いた新芽を持ち帰り部屋で育てている。

眩しく、目を背けているのは自分の家族
弱々しくも、愛でているのは他人
と言うことか?

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シン

5.0静かなる饒舌。(あそこに行ってきました。)

2024年10月20日
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鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

はい。よく私のやんちゃレビューを覗きに来て頂きました。

本作も今さらジローでございます。実はこの映画は好きすぎて、何も言えねー。北島康介状態。

 それでロケ地巡りをしたんですね。聖地巡礼ってやつですね。

 まずは代々木八幡神社。限界集落に住む私にとっては渋谷区って敷居が高い高い。真美子さんの身長くらい高い。

 そんなに大きい神社じゃないんですが、立て看板を見て驚愕。なんと…

狸がいるんだと!

 狸ですよ!狸!渋谷ですよ!渋谷!

 平成狸合戦ボンボコを観てから、さらに有頂天家族を読んで、狸への愛が止まらない!オフコース状態。

 まあ狸は夜行性なんで会えなかったんですが…

会いたかった!会いたかった!YES!

けどね、猫のムーンはいたよ!

 思い切って、御朱印を貰うついでに巫女さんに聞いてみました。

 あのう… 役所広司は見ましたか?

 えっ!なんですか?

 私、メッチャ不審者‼️

 たまらず宮司さんが助け船。あっちのベンチで撮影しました。

 あーーまだ若いからねー フォローフォロー。

 待てって。当時居なくても職場がロケ地。観に行けよ!

 まあ早々に渋谷を退散。ぶっちゃけ渋谷は怖いんじゃ❗️ ただあのキノコ型のトイレは写真を撮った。

 俯瞰で見ると完全に不審者‼️

 次に向かったのは浅草。城東地区のディズニーランドじゃけん.アウェーからホームに帰った気分じゃけ、めっちゃ落ち着くのう。

 それで東部浅草の地下街にGOじゃ‼️

 もちろん、お目当ては焼きそば居酒屋の福ちゃんですよ。金髪のお姉さんはきびきびと働いています流石に恥知らずの私でも禁断の質問(役所光司は…)は言えなかった。怒られそうでね。

 こちとら撃たれ弱いんじゃ‼️

 早々に退散。浅草から曳舟、押上とね。

 逆、木根川橋状態。さだまさしファン以外の方、ごめんなさいねえ。そう言う歌があるんですよ。

 知人にそう言う顛末を語ったら知人も同じ事をしていました。代々木八幡は共通。あのアパートに行ったらしいんですよ。場所は亀戸。

 なんかメッチャローカルな話しでごめんなさい。

 しかし雑談ばっかじゃ‼️ええ加減にせえよ‼️

 とにかく静かな映画です。台詞が少ない少ない。レッドフォードのオール イズ ロストの次に少ない。

 平山(役所光司)はトイレの清掃員。押上の自宅を出て.身支度をして自動販売機で缶コーヒーを買って渋谷区のトイレの清掃に向かいます。

 前述したように寡黙。遅刻した若者にも説教はしません。ただ黙々と作業をこなします。メッチャ手垢のついた言い方だと判を押した毎日。

 映画は淡々と平山のルーチンを描写します。

 段々とわかって来ます。平山は丁寧に仕事をこなします。しかし平山の内面が伝わってくるんですね。読書と音楽、小さな実生を育てる事。実は豊かな精神世界を持っている事。周囲に対して優しい事。

 生きるってレースじゃない。戦いじゃない。主義主張を声高に叫ぶ事じゃない。一夜限りのワンナイトショーじゃない。

 単純だけど深い。そんなフィロソフィーを感じました。

 平凡なめんなよ‼️

 この映画は平山に共感出来るかどうか。そんな映画です。十人十色を認めるか、流行りの言葉だと、ダイバーシティ、インクルージョン。

 だから退屈な映画だと言う意見には反対しません。

 でも私にとっては深い映画でした。

 お付き合頂き、最後まで読んで頂きありがとうございました。

 PS カラオケ屋さんでトイレを清掃中の方にありがとうと、言うようになりました。

 大抵びっくりされます。やっぱメッチャ不審者‼️

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masami

4.0新しい夜明け、新しい日

2024年10月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」を観る。平山が何気ない木漏れ日を愛するのは、単調で孤独でも日々はそれぞれ違うし美しいし意味はあるという平山の思いを表していて、だからこそ重なる影が濃くならない訳はないという憤りのシーンは泣けた。観るのをちょっと避けてたんだけど、良かったです。

あと細かいツボだったところ。

・魅力的な浅草の飲み屋がきちんと日曜日は混んでいる
・丸にホームランを打たれたカープファンが金で勝利を買って嬉しいかと憤る
・石川さゆりの歌う「朝日のあたる家」が浅倉マキバージョン
・ラストシーンの使用曲がクワイエット・プレイス DAY 1と被る。
・平山もてすぎ

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ピンボール

4.5なんかすごい良かった

2024年10月14日
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鑑賞方法:映画館

始まってしばらく一言も発していないのに主人公の人柄が滲み出てわかるの役所さんすごすぎ。映画が進むにつれて主人公の人柄に惹かれていくのがたまらなかったっすね。
影のくだりめちゃくちゃ良かったなぁ、、

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ヌル

4.0良い映画を観た

2024年10月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

知的

 公衆トイレの清掃員をしている平山。古いアパートに独りで暮らし、朝早く目を覚まし、植物に水をやり、身支度をし、缶コーヒーを買い、寝ると夢をみるなど、規則正しい毎日。寡黙だが、行きつけの店では顔なじみ。そんな彼だが、同僚に振り回されたり、姪が訪ねてきたり、とちょっとした変化もある。
 良い映画を観た。慎ましくルーティンを繰り返す平山だけど、そんな毎日を楽しげに過ごしているよう。さらに急にやってくる変化を、ルーティンの邪魔ではなく、彩として受け入れている様子が頼もしく感じました。しかも、何か事情を抱えているようなのに。
 キーレスではない車で、カセットテープを聞いていることに親近感を抱きます。聞いているのも耳なじむ曲ばかり。石川さゆりが歌うカバー曲も良かった。さらに彼は、ガラケーとフィルムカメラを使用しています。
 どのトイレも、びっくりするくらいおしゃれ。トーキョートイレで働くのもいいかな。
 ミュージックテープって、今そんなに高いのか、結構持っています。登場する本は読んだことありません。

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sironabe

4.5あるいは禅僧、あるいは自閉症者

2024年10月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

単純

幸せ

こだわりの強い世捨て人の主人公が刻む、美しい日常生活のルーティーン。

漆黒の早朝。主人公は起床し、歯を磨き、整然と並べられた小物を手に取る。その儀式的な所作だけで観客は彼の人格を察する事だろう。朝日に照らされ始める東京の街を、彼の業務車両が滑るように走る。車載のカセットプレイヤー(そう、カセットプレイヤー)から流れる洗練された楽曲は、彼のこだわりをさらに際立たせる。
変化を拒むようなルーティーンを繰り返す日々にあっても、人も風景も変わり続け、彼自身も変化から逃れることはできない。老い、同僚、そして家族。変わらない日常など幻想に過ぎないのだ。変化と不変、新しいものと古いもの。その両極端に囲まれた東京の中に、彼の孤独が静かに浮かび上がる。

本作は、「孤独のグルメ」的な美学あるスローライフと、「パリ・テキサス」を彷彿とさせるミドルエイジクライシスの要素を融合させた傑作です。日常の些細な出来事を掬い上げるミニマルな作風ながら、都市の喧騒と静寂が交錯する映像美と、懐かしさを誘う音楽が、映画としての「間」を充実させて飽きさせません。役所広司演じる主人公の無言の演技は秀逸で、言葉以上に主人公の内面を表現しています。キャリアの晩年にこれを撮れるのだから、やはりヴィム・ヴェンダース監督はただ者ではありません。

あえて欠点を指摘するなら、主人公が作品哲学を口頭で語ってしまうシーンが、全体の繊細な筆致からやや浮いています。また、主人公の「掃除夫に身をやつしているが、実はインテリ」という意外性の薄い設定も、「インテリ視点の清貧賛美」という受け取り方をされてしまう可能性があります(これは作品に対する賛否双方に見られる)。個人的には、ポジティブに見れば世俗から離れて心の平穏を得る禅僧の物語、ネガティブに見れば孤立した自閉症者の物語、というバランス感覚に優れた映画として受け止めました。

最低でも80点は与えられる傑作だと思いますが、大きな賞を取れるような完成度(例えば90点越え)に僅かに届かなかったのも納得出来ます。それでも、この映画が映画ファンにとって必見の一作であることに疑いの余地はありません。

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フレンチクローラー

4.0一歩間違うと寝ちゃいそうだけど、そこは。

2024年9月27日
PCから投稿

冒頭15分ほど、主人公のセリフがない。
そこに描かれるのは、東京のトイレ掃除に勤しむ男の日常。
そして仕事休みの一日。

ずっと繰り返されるルーティーン。
一歩間違うと、寝ちゃいそうだけど。
役所さんの表情で、今どんな気分なのかが、ちょっとわかる。
背景等余計な説明がないのが、シンプル。

後半は姪っ子の登場で、ルーティーンが崩れ。
心乱れていく様に心配になる。
同じようでいて、日々は毎日違うものね。

ラストシーンも、泣いているのか笑っているのか。
じっと見つめて考えさせられました。

印象的だったのは、いつも目の前にあるスカイツリーと。
浅草駅の地下街。これも日常なのね。

⭐️今日のマーカーワード⭐️
「今度は今度、今は今」

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ゆき@おうちの中の人

4.5普通の日常の中の小さな変化

2024年9月25日
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まず劇中歌が良すぎる。プレイリストを作ってドライブ中に流しているくらい良い。

渋谷区の公共トイレの清掃員が主人公。プライドを持っているのか凝り性なのか、静かに丁寧な仕事とテキパキとした動きをする彼の風格は尊敬できる仕事人の風格だった。普段の生活では気にも留めないが、確かに人々の生活を支えている人に思いを馳せるきっかけになった。
また監督がドイツの方というのもあり、海外の人から見た渋谷ってこんなに綺麗なのかと新しい視点があった。渋谷は都内でも有数の汚い街だと思いながらそこで生活しているが、ちょっと見方を変えてみたら面白い街なのかも。

ストーリーは本当にこれと言って起伏は無い。ループ系の話かと疑うほど、彼の毎朝のルーティーンは完璧にこなされる。そんな変わらない日常の中でも、休日はコインランドリーと古本屋、スナックに行くという自由の時間と些細な楽しみがあったり、ちょっと良いことがあった時は車内の音楽を変えてみたり、口ずさんじゃったり。誰もが思ったことのあるであろう『変わり映えしない日常』の中の小さな変化と幸せを汲み取るのが上手な人だと思った。そういう感受性はきっと人生を豊かにするだろうな、見習いたい。
そして悲しいことがあった時も、彼は変わらずに寝て、起きたらいつものルーティーンをこなして、車に乗って仕事に向かう。ラストのシーンの役所さんの表情は刺さる。幸せなのか、苦しいのか、解釈が分かれているのも頷ける。
キャッチコピーの、こんなふうに生きて行けたなら、という言葉も肯定するか否定するか人によって違うと思う。いろんな人の意見を聞いてみたい。この主人公の生活は経済的に決して豊かではない。けど精神的に豊かであるとも言える。1人で下町に住む男の生活について、どんな感想を持つかという点でも余白のある映画だった。

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ヤマキ

2.5平凡

2024年9月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ちょっと変わってるけど平凡な男の平凡なお話。
特に大きな事件も起きず、
最後の涙の意味もわからない。
見る人の想像力に問いかける映画、とでも言いましょうか。

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ガレ

時間の無駄遣い

2024年9月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

寝られる

何も感動しなかった
それどころか腹が立った
モノクロ映像を挟んだ意味も分からないし、何を映してるかも不明
登場人物の関係性や存在意義も曖昧
何を観せられてるんだろう……
出てくる誰もが幸せに見えないし、苦痛にも似た時間がとても長く感じた

カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したから、皆さんこじつけて高評価にしてるだけでしょ

馬鹿にされてるんだよね、世界から
お前ら日本人は、この程度の幸せで十分なんだよ
これがお前らにとってのパーフェクトなんだ
いいか、高望みなんかするなよ
大国の言う通りにしてろ
あっちではノミネートしてやったんだからな
こっちでは賞も上げたんだからな
ありがたく思えよ
(こいつ等、これだけ馬鹿にされても、素晴らしい作品だといって高評価してるぜ!爆笑)
これこそが本音だし

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映画イノッチ

2.5季語を間違えた俳句のような残念な映画

2024年9月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

公衆トイレ清掃人の孤独な中年男の物語という映画紹介を聞いて、何やら訳ありの過去を秘め、心を閉ざしつつストイックな日々を送るというストーリーを想像した。その過去が映画が進むとともに明かされて、新たな人生に向かう――てなところかと考えてみたら、どうやらそれは大ハズレだったようだ。

いや、表面的にはそんな外観があるのだが、実際は全然違う。ドラマはおろか、明確なストーリーさえなく、ただ淡々と同じ日常と、その変奏曲が描かれていく。
そしてそれらのパートごとに、「丹念な日常」とか、「労働のあとの充実と解放」とか、「行きつけの飲み屋の気の置けない雰囲気」とか、「重い過去」とかの感想が、ほぼ脈絡もないままに浮かび上がる。
それらは関連性が希薄だから、ドラマも人間性も浮かび上がっては来ない。淡々と、何やら次々に俳句を読んでいるかのようだ。

それらのシーンに強いイメージを付与しているのがルー・リードやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、オーティス・レディング、パティ・スミスたちの曲。
中でも映画の表題に取られたルーの"Perfect Day"は、この映画と同様、きわめて陰翳に富んだ内容だと思う。

<ボクたちは公園でサングリアを飲み、動物園でエサをやって、映画に行き、暗くなってきたら帰宅する。何て完璧な一日。キミと過ごしていると、まるでボクは誰か良い人間みたいだし…生きていられる>

表面的には「完璧だ」と言いながら、この曲を歌うルーからはただ深い悲哀しか伝わってこないのである。

ルーの曲から主人公の人物像を組み立てていくと、孤独の深い"The Dock of The Bay"ともピタリとハマってしまう。喪失感を歌ったパティ・スミスともマッチする。

ところが、こうした孤独や悲哀といったイメージで映画を見ていくと、主人公は何故か毎日木の写真を撮ったり、飲み屋のママにチヤホヤされたり、彼女の元夫と影踏み遊びをしたり、家出した姪に気に入られて面倒をみたりと、何やらイメージがズレていくのである。

そしてラストのニーナ・シモンの「新たな夜明け 新たな一日 新たな人生の幕開け」と歌う歌詞では、もはや歌詞と人物像とはかけ離れているとしか思えなくなる。

パートごとのイメージを楽しむ映画なのに、そのイメージが途中でズッコケた、当て外れの印象。季語を間違えた俳句…そんな残念な感じを禁じえなかった。

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徒然草枕