PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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誰にでも、人生
あなたにとって、取るに足らない人にも、豊かな人生がある。
端々にいる人や場所に焦点を当てて、そのように思わせてくれる作品でした。
男の過去に何があったのかは、はっきりとは描かれません。
しかしカセットテープや、紙の本など、アナログな物を愛し、銭湯や浅草の地下街などの、時代に取り残されたような場所を好む男の嗜好から、早い段階で敷かれたレールから外れた教養の高い男性だと捉えることができます。
それは、チラリと登場する社会的地位の高そうな妹の発言からも窺うことができます。
しかしどんなレベルの生活を送っていようとも、結局のところ人間は根本的には孤独で、木漏れ日のように儚い人生を送るものではないでしょうか。
木漏れ日のように、時と場所が少し重なりあって、その時にちょっとだけ人生が交差する。
ちょっとだけ、人のことを愛しいなぁ、街の風景を見る目が変わるなぁと思わせてくれる映画でした。
個人的には苦手な分野だが
芸術性の高い作品
通好み
「よもぎ蒸しのように、静かに心を整えてくれる映画」
良さがわからない
諸行無常もFeelingGood
物語は、平山のシンプルな生活を淡々と追いかけます。毎朝決まった時間...
物語は、平山のシンプルな生活を淡々と追いかけます。毎朝決まった時間に起き、トイレの清掃に励み、休憩時間には古本を読み、音楽を聴き、木々の写真を撮る。そんな繰り返しの中に、彼の小さな喜びが散りばめられています。ルーティンの一つ一つが丁寧に描かれ、まるで彼の心の平穏を映し出すよう。渋谷の喧騒の中で、公共トイレという地味な場所が舞台なのに、そこに美しさがあることに気づかされます。ベンダース監督は、渋谷の街並みや「THE TOKYO TOILET プロジェクト」のモダンなトイレを背景に、日常の尊さを浮かび上がらせます。
特に心に残ったのは、平山の生活を通じて見せる「小さな喜びの積み重ねが幸せ」というテーマです。古いカセットテープで音楽を聴き、木の葉の揺れを愛でる彼の姿に、人生の豊かさを感じました。
そして、クライマックスの運転中のシーン。平山が涙を流しながら車を走らせる場面は、胸を打ちます。それまで感情を抑えていた彼の内面が、初めて溢れ出す瞬間です。穏やかな日常と心の奥底の複雑な感情が交錯し、喜びと悲しみが共存する人間らしさが伝わってきます。このシーンで流れる「Feeling Good」の明るいメロディと歌詞が、平山の涙と対比され、彼の人生が「完璧」でありつつも完全ではないことを示唆します。家族との過去や孤独、そして日常の美しさと儚さが、涙を通じて一気に表現されていました。
この映画は、派手な展開や劇的な事件はなく、静かな時間が流れます。それでも、平山の小さな動作や表情、渋谷の街の風景、音楽の調べが心に深く響きます。日常の中に潜む美しさや、人生の喜びと切なさを改めて考えさせられました。50代の私にとって、平山の生き方はどこか共感できるものがありました。日々の繰り返しの中で、自分なりの幸せを見つけることの大切さを教えてくれる作品です。
観終わった後、ふと木々の揺れる音に耳を傾けてしまいました。『PERFECT DAYS』は、そんな風に日常を少し違った目で見つめ直させてくれる、素晴らしい映画でした。
タイトルに込められた深い意味
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されたことで有名になりましたが、いままで見ていませんでした。
いやぁ、カンヌに出るだけの事はありますね。っていうか、間違いなくアカデミーでは無く、カンヌの作品だなと思いました。
タイトルの『PERFECT DAYS』ですが、どこをもってして“完璧な日”と考えればいいんでしょうかね?何事も無く平凡に過ぎていく日常が良いのか、あるいは、波瀾万丈な色々巻き起こる日が良いのか。なんか、この作品では、どちらも“完璧な日”と言っているような気がしました。
気になったのは、主人公の平山に関する説明が全く無い事。そう言う意味では、出演しているそれぞれの人物についての説明がほぼないんですけどね。まぁ、普通の日常ってそう言うものですかね。とはいえ、終盤、平山に関してはちょっとだけ何やら彼の事が仄めかされます。あくまでも仄めかしですが、それはそれで、なぜ彼がトイレ掃除をやっているのかという謎も付いてきます。
いやぁ、しかし、この平山は役所広司以外では成立しなかったんでしょうね。渡辺謙とか、真田広之とか、他にもできそうな俳優が思い浮かばないわけでは無いですが、それでも、その二人はちょっと圧が強すぎますからね。役所広司ほどの力を抜いた感じが出せないかもしれません。
なかなか面白かったです。
ラストカットの解釈を
おじさん定点観測
人間という生き物そのもの
日本人が日本人であることとは?
perfect days
2023年 日独合作
ヴィム・ヴェンダース監督
淡々とした日常、ストーリーがないようであるような超薄味
それでも、観終わった満足感はずっしりとありました
日本人が日本人であることとは?
それがテーマのように思えました
判で押したような日々の繰り返し、誰も見ていなくとも仕事の責任を満足できるまで果たす平山
登場する若い世代の男女も日本人だけども、これから日本人になろうとしています
平山だって日本人だけども、いつの頃からか、日本人になったのでしょう
日本に生まれたから、はじめから日本人になれる訳じゃない
両親が日本人だからそれだけで日本人になれるわけじゃない
日本人という存在になろうとして、初めて日本人なれるのだということを本作は言いたいのだと思いました
公衆トイレのクリーンさ
大都市なのに静かさがある
公衆トイレのクリーンさを守るために真面目に仕事をする人がいる
本作には、クラクションも盛んに聞こえず大声で話す人々もいません
日本人には当たり前過ぎて気付きもしません
本作はただ普通無意識にそれを撮ったようにみえます
でもインバウンド観光客が語る日本の印象に、クリーンさ、静かさを語ることがとても多いようです
監督の目にも奇異に見えています
だからそれを撮っています
それはどうしてそうなのか?
それが本作なのだと思います
平山は衣食住すべてにミニマムな生活です
なのに彼は満ち足りています
なぜ独り暮らしなのか?
訳ありのようです
なぜ高い教育のある人間と思われるのに、今の生活に甘んじているのかは語れません
もっとより良い生活への意欲を失っている?
人生に諦めている?
外国人にはそう見える人が多いでしょう
でも日本人にはそうではないと普通に思えます
自分を律して自分の責任を果たすそれだけの毎日で必要十分
でもそれなら何故平山は泣くのでしょうか?
今の生活が屈辱だから?
そうではないことは彼の生活から分かります
平山の語られない訳ありの理由が彼の涙の理由なのだろうと思えました
低賃金なのだから、それに見合う適当な仕事で十分
しかし日本人はそうは考えません
だからと言って日本人が全員平山のような人間ではないのも当然です
それでも平山のような人間が数多く集まっているから、東京はこのように成り立っているのだと、そのことを説明しようとしているように思えました
今度は今度
今は今
(過去は過去)
(欲を求めればきりがない)
平山の過去は語られません
居酒屋のママの元夫のお話はそのヒントだったのかも知れません
影と影が重なって濃くならない訳が無い
少なくとも平山は自分を影と思っているようです
それでも与えられた責任は確実に果たす
アヤは平山から少し学んだようです
家出して来たニコは平山から日本人になるとはどういうことかを懸命に学ぼうとしています
タダシは知的障害のある少年に優しくできる良い面を持っていますが、日本人にはまだまだ、なっていないようです
もう少し時間がかかるようです
ラストの朝日に向けてバンを走らせる平山の笑顔
今日も自分の役割を果たすぞという満ち足りた泣き笑いの顔です
社会に関係して貢献する喜びです
自分は、決して影じゃない
より良い社会は自分を律する生活から始まる
それが結論のラストシーンであったと思いました
外国人監督が撮った「邦画」
渋谷の公衆トイレの刷新プロジェクト「THE TOKYO TOILET」をモチーフにした映画。このプロジェクトについては何度か報道も目にしており、いかにも「日本らしい」取り組みだと感じていた。映画はその「日本らしさ」、とりわけ「TOKYO」らしさが上手く詰め込まれている。近代的で華やかで賑やかな大都会の隙間にある庶民的な下町・銭湯・古アパート。ハイテクな公衆トイレの側にある穏やかな日常、そういった一見相反する性質のものが器用にミックスされている様子がよく表れている。この映画に限らず、多くの映画や写真などでも表されるものでもあるが、だからこそやはりそれが「TOKYO」なのだろう。
ストーリーは小さな起伏がありながらも淡々とした主人公の日常を淡々と描いている。
その雰囲気はもはや「邦画」であり、監督の感性が日本に合っているというのが窺える。
ストーリーの起伏が小さいながらも画面に見入ってしまうのはやはり主人公を演じる役所広司の力量が大きい。ちょっとしたしぐさ・表情がその人物の感情の些細な起伏を表す。トイレ清掃の様子・部屋の佇まい等々、彼の性格を表現する設定は随所にありよく練られているが、それ以上に役所広司の存在が役を雄弁に語るのである。
物語としては小さな起伏の詳細が「雰囲気」で伝えている感もあり、それに関しての感動はないが、見終わったあと「一人の人間を見た」実感が残る。
(ただ、そういう「役所広司ショー」と言う意味では「すばらしき世界」の方がより優れていると思う)
他の役者さんについても地に足の着いた実力のある役者が揃っている。
(石川さゆりと田中泯は本来の才能が生かされた役)
特筆したいのはアオイヤマダ。この人は本業はパフォーマーとのことだが物凄く存在感がある。また、役柄としても「ド派手でガールズバーで働く女の子が案外良い子」というのもなんだか「TOKYO」らしくて良いと思う。
淡々と淡々と
悪友の2023ベスト映画で「本当に何も起こらないけどそれがいい。ラストの役所広司の顔のアップがいい」とのこと。
何も起こらないと聞かされているがゆえに1年以上食指が動かずようやく鑑賞。
良く言えば現代の雨ニモマケズ。
悪く言えばヤマなし意味なしオチなし。
あまりにも話をしないから口が聞けないのかと思ってしまったぐらい喋らない役所広司。
トイレのパターンと浅草あたりの飲み屋の紹介のようでもあり、TOKYO下町ガイドのよう。
話になんの進展もないから感想としては以上。
もっと尺が短くても成立すると思う。
この中の役所広司のように質素で無欲な生活を美徳とすると、この30年成長しないニッポンを肯定しているようで氷河期世代としてはなんか嫌。
きれいでした
月並みですが。絵も音も。この映画の良さを、ほんの少ししか理解できていないと思いながら、世で高く評価され、いいと思う人が多くて、うれしくなりました。
東京の街をこれだけきれいに撮った作品を知りません。最後に「こもれび」とあってハッとしましたが、東京はこもれびが多い街だと思います。人工的に見えることも多いけど、住宅街では意外なほどホッとする。街に休息を与えてくれていると思います。
作り手は、何を思ってこの職業を取り上げ、こんなに個性的でキレイな公衆トイレを舞台に選んだのか。東京のトイレは多くがどこも美しい。中には、トイレをアートにしてしまってる街もあるくらい。でもそれを支える人は当然いるわけで、過度に感謝する必要はないけど、忘れてはいけない。エッセンシャルワーカーという言葉の一角に含まれるのだろうけど、どこか機械のように扱ってしまっていないだろうか。みんなに生活があり、人生がある。
なんと単調な生活、自分なら耐えられないだろうと息苦しさを覚えつつ、単調な仕事を高いクオリティでやり遂げる崇高さをうらやましくも感じた。
無口で人付き合いも下手。それでもいいじゃん、つながりってよく言われる世の中だけど、つながるかどうかはその人次第で。そんな人たち、この東京にいっぱい住んでる。淡々と生きることの素晴らしさ、どこが悪い。
そういう意味の勇気をもらう作品でもありました。登場する音楽に通じていればもっと楽しめるのでしょうが。
シンプルで美しい世界
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