PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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きれいでした
月並みですが。絵も音も。この映画の良さを、ほんの少ししか理解できていないと思いながら、世で高く評価され、いいと思う人が多くて、うれしくなりました。
東京の街をこれだけきれいに撮った作品を知りません。最後に「こもれび」とあってハッとしましたが、東京はこもれびが多い街だと思います。人工的に見えることも多いけど、住宅街では意外なほどホッとする。街に休息を与えてくれていると思います。
作り手は、何を思ってこの職業を取り上げ、こんなに個性的でキレイな公衆トイレを舞台に選んだのか。東京のトイレは多くがどこも美しい。中には、トイレをアートにしてしまってる街もあるくらい。でもそれを支える人は当然いるわけで、過度に感謝する必要はないけど、忘れてはいけない。エッセンシャルワーカーという言葉の一角に含まれるのだろうけど、どこか機械のように扱ってしまっていないだろうか。みんなに生活があり、人生がある。
なんと単調な生活、自分なら耐えられないだろうと息苦しさを覚えつつ、単調な仕事を高いクオリティでやり遂げる崇高さをうらやましくも感じた。
無口で人付き合いも下手。それでもいいじゃん、つながりってよく言われる世の中だけど、つながるかどうかはその人次第で。そんな人たち、この東京にいっぱい住んでる。淡々と生きることの素晴らしさ、どこが悪い。
そういう意味の勇気をもらう作品でもありました。登場する音楽に通じていればもっと楽しめるのでしょうが。
シンプルで美しい世界
そうなりたいか、なりたくないか
古くからの友人に勧められてお正月に妻と鑑賞した。
役所広司演じる平山のようになりたいか、そうなりたくないか。これがテーマ。
自分はそうなりたくないと思い、妻はそうなりたいと言った。
歳を重ねていくに従い同じような毎日を余儀なくされる現状に対して、あたしはどうにかして抗おうとしている。例えば新たに出会う人の多さが自分の価値になるようなイメージ。
そうしないと自分が停滞しているように感じて、まるで子供のころに自分だけ遊びに誘われなかったような感覚になり怖くなってくる。
ただこの想いは自分がいまの自分として存在する大きな原動力にもなっているし、自身の今後の成長の力にもなるはずだ。
だってそうしないとなまけちゃうもん、あたしは。
そんな想いを持たずに(持たないようにみえて)生きていく平山は生きていく意味があるのかなぁと感じた。
※あくまで自分が平山だったらという考えで自分ではないそのような人をダメと言っているわけではない。
一方で日々の中にいつもあるものが今日もそうであったことを幸せに思えるならば、そんな幸せなことはないだろう、というのが妻の言い分。
だったらそんなにたくさん服を買わなくても良いし、すぐにやめちゃった合気道用のマットも要らんかっただろうに。。アフリカンダンス用のあのカラフルスラックスも寝間着に格下げされちゃってるし。
そっかそういう自分を律したいって思っていたのかな?そうだね、なかなか思い通りにはならないもんね。
これ以上聞くとけんかになるから聞かないけど。
50歳になる年の初めにみて、自分を見直す良い機会をくれた映画でした。
もう一度観たけどやっぱりいいな〜
パーフェクトな大人の寓話
これは困った、非常にマズい。今年もあと1週間を残すばかりとなって、2023映画ベスト10もほぼ選定を終えたところへ、こんな凄い作品を観てしまうとは。ベスト作を含めて急遽もう一度考え直さねばなりません。
渋谷区の公衆トイレの清掃会社で働く60代の男の日常をビム・ベンダース監督が描いた作品です。もうそれだけで鑑賞が決定し、公開を楽しみにしていました。
男の部屋にはテレビもパソコンもなく、70~80年代のカセットテープと文庫本があるだけです。日の出前に起きて歯を磨いて、家を出て缶コーヒー買って、幾つもの公衆トイレを丁寧に洗って、仕事が終わるとちょっと一杯やって、風呂屋に行って、本を読みながら寝る。その毎日が淡々と描かれるだけで、大きな事件は何も起きません。ほぼ全ての場面で男が映りっぱなしで、彼を演じる役所広司さんの台詞も全編で脚本半ページほどしかないでしょう。しかし、彼の周りでの小さな出来事、ふと出会う人々から遠くゆっくり世界が広がって行くのが分かるのです。そして、過去に何かがあったらしい彼の悲しみがその世界を深くします。
生きて行くのに本当に必要な物だけに囲まれて都市で暮らすのは現実には難しいし、トイレ掃除も実際には様々なトラブルにも見舞われるでしょうから、これは大人の童話と言えるでしょう。でも、こんな豊かな世界が本当にあるのかも知れない、悲しみを湛えながらも穏やかに生きるこんな人になれるのかも知れない、もしかしたら・・と見る人に思わせる優しく静かな作品でした。
追伸1:石川さゆりさんが「朝日の当たる家」を唄ってくれるあんな小料理屋があったら、お酒の飲めない僕でも毎日通ってしまうなぁ。
追伸2:作品中盤で、スクリーンの右隅にビム・ベンダース監督自身が映っていたんじゃない? 気に成るなぁ。
やっと見ることが出来た
ヴェンダースの映画は80年代くらいから見始めて、それから遡ってデビュー時から辿る位ファンだった。時々とんでもない駄作を撮ることもあるけれど、それでもその青臭さも含めて好きだった。それで今作。オリエンタリズムではないリアルな東京がヴェンダースのフィルターと役所広司の演技でみられる。カンヌ映画祭で受賞もしている。見たドイツ人は皆よかったという。それでも、なかなか素直に映画館に行けない心のブレーキがあった。あまりにも身近な日常が対象として選ばれているので、それが理想化されることへの反発があったからだ。やっと配信サービスでみて、やはり先入観にたがわない感想を抱いた。ヴェンダースの「脳内理想生活」と現実の日本との乖離を感じずにはいられなかったのだ。ルー・リードのカセットを聴く60代の日本人なんてほぼいないし(日本の高齢者は演歌しか知らない)、パティ・スミスの歌詞を理解し、口ずさんで涙するガールズバーの店員なんていない。朝二時間だけの清掃業で生活はできない。平山は年金受給者なのか?不労所得でもあるのか?外から見ると1Kのボロアパートの内部がなぜ二階建てになっていて広いの?ミニマリストばりの質素な部屋には生活感がない。小津映画からタイムスリップして現代に降り立ったかのように、それでも太陽の光を避け、カーテンを閉めて植物を育てる平山は、やはり現実離れしている。この映画が映し出す東京は、ロードムービーの名手であったヴェンダースが老境に入り、辿り着いた仙人境なのだう。
平凡な人生などない
あんな生き方に憧れる自分もいる
パーフェクトデイを見た。トイレ掃除の仕事をしている男の日常のルーティンが繰り返される。淡々としている話なのに2時間弱飽きなかった。
それは、見た人は感じるであろう男の背景にあるのだろう、多く語らず小さいシーンで、この人多分こういう人と感じてくるにではないかと思う。
多分前職は大企業の御曹司だったのかなと思いながら見ていました。後でそんな匂わせ方がありますが、自分から人に絡まず、心すら開かず必要最低限の会話のみ、世間に背を向けるような生き方に過去の出来事に想像が及んでいく。
また、ランチに登場するOL、同僚?の彼女のやりとり、◯✖️など、説明を排除して観客に自然と考えさせる。多分日本人監督では違ったのでは?と考えてしまった。
きちんと整理されてる部屋、そこに目立つカセットの棚、どこの家にもあるであろうと思うPC、テレビはない。
そんな男が姪の登場に嬉しそうに会話をしている。流しで寝る彼の周りには片付けられて多分2度と開けあられないんだろうなと思う荷物の山が置かれている。
仕事中は腕時計をせず、休みの日は時間を惜しむように時計を手に取る。
時間に追われることなく、だれにも干渉されず、メールを気にすることなく、世間のニュースを見ることもなく、誰に気を使うわけでもない、仕事や世間に疲弊した男にとって、そんな毎日の生活がパーフェクトなのでしょう。
日々の自分の生活に合わせて見てました。でもまだ何もかも嫌という域には達してないと感じた。
いい映画だけどちょっと長い
淡々と繰り返される清掃のお仕事をする日常。
何かありそうで、何も起こらないのがまさにリアルでした。
隣で寝ている人に団扇をヒラヒラと扇いであげたり、神主さんに向かって「この苗木!芽吹いてますよ!素敵なので持って帰って育てていいですか!?」と手を広げたり、平山さんの一挙一動が細かくて可愛らしくて、無口な性格も相まってとても魅力的な主人公でした。
日常の細かい描写を追うのはとても楽しかったですが、映画として起承転結を求めてしまう私の感性が邪魔をして、ちょっと長めに思えてしまった事が残念です。こういったゆったりした映画を楽しむ余裕さえなくなっちゃったんだな……と悲しくなりました。
最後の影踏みはファンタジー要素(どうして平山さんのいる位置が分かったんだ?や、お酒飲んでるけどここまでコミカルな動きするかな……?)がちょっぴり邪魔して世界観が曇りましたが、最後のなんとも言えない、感情の入り交じった平山さんの笑顔で全てキレイに流されていきました。
平凡な日々の中で動かされる感情
物静かに淡々と流れる映画。
トイレ掃除として同じ毎日を送る日々だが、人間の少しの幸せ少しの悲しみが、心に響く。
セリフがほとんどないし、主人公の平山の過去は全くわからないし語られない。でも何かあった事が分かる。
前半は淡々とプロのトイレ掃除を見せられた。TOKYOの色んなトイレが、また楽しませてくれる。その中に関係してくるタカシとニコ。決して深くは語られない二人の登場人物とら平山との関係性がまた感じさせられるものがある。
そして、後半のニコの登場からは、平山の平凡な日々や感情もガラリと変わったような気がする。何か過去を振り返るような。
最後の笑い泣きのシーンは感ずるものがありました。さすが、カンヌの男優賞だと唸らせてもらった。
わからん人は置いていく働くおじさん
さすが役所広司主演作
幸せは自分で決める
素晴らしい作品でした。
余白のある映画は、映画を通して自分のことにも目を向けることができるので素敵です。
"こんな今が嫌だ、変わりたい!"というのも、人生のモチベーションとして素晴らしい。
でもイヤごとばかりに感じていたら、全然幸せじゃないよね。
平山さんの「パーフェクト」=幸せな1日。
いやいや起きる朝ではなく、1日が始まる幸せを噛み締めている。
朝のカフェオレ(ブラックじゃないのがリアル)
仕事へのこだわり
木漏れ日の入るお気に入りの場所
カメラ
植木への水やり
銭湯、居酒屋、本屋、スナック
平山さんにとっての"perfect"なルーティンが自分の日常にも確かにある。
無口な人として前半は描かれているけど、決してそうではなく、ただ不要なことを話さないだけ。コミュニケーション能力は大いにある。
後半はそんな、平穏で完璧な日常が外的な刺激によって、掻き乱されていく。
姪との再会。
家族との交流が幸せそう。
「世界は1つの様に見えるけど、たくさんの世界がある。にこのお母さんと僕の世界が繋がらなかっただけ」
そうなんだと思う。
ひとりひとりの世界があって、交わることがあって、それはすごく嬉しかったり幸せなんだけど、絶対に交われない世界観もある。
お姉さんとの再会。
最後の抱擁にドキッとした。
平山さんの切なすぎる表情。
お姉さんも嫌味の様な言葉を発しているけど、本当は愛情があってのことなんだと思う。
お金じゃなくて、好きなお菓子を持っていくあたりもすごく思いを感じた。
この場面で重なるのは、スナックのママさんと三浦友和さんのシーン。
こちらもただならぬ切ない表情が印象的だった。
そこから平山さんとお姉さんの間に、ただの家族愛よりも、もっと深い愛情を感じる。
最後のシーンはどういう感情か?
一度見ただけではわからない。
人と触れ合うことで傷つくこともある。
それもまた人生の幸せなのだろうか。
幸せとは一体何なのか。
変わること?変わらないこと?
幸せとその奥にある深い悲しみを感じる、役所広司さんの演技は素晴らしい。
とても"人間"を描いた作品である。
カセットから流れる昔の洋楽が、一気に東京の見え方を変えた。
光と影など、映像もすばらしい。
エンドロールで流れる
"KOMOREBI"の和訳です↓
「風に揺れる葉によって作り出される光と影のきらめきを表す日本語。それはその瞬間に一度だけ存在します」
何か起きそうで何も起きない。
朝は笑顔で迎えたい
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