PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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ありふれた日常のルーティンの中に見出だす幸せ
まず驚いたのはスクリーンが4:3だったこと。
そして役所広司が一切言葉を発しないこと、延々日常のルーティンが続く。
それでも視界に入る景色の変化に幸せを見出だす。スマホ片手に歩く現代人にもっと胸を張って上を見てみなよと言われてるようで、毎日繰り返しの日々の中にも些細ではあるけれど発見がありそこに喜びや幸福感が感じられる、それを感じることが人間の営みのなかで大事だよと受けとりました。
気に入った古い曲をアナログなカセットテープの音が好きという若い女と、スマホのサブスクで探そうとする子の対比も面白い。
寡黙で穏やかな人が起きて寝るまでのルーティンを崩されたときに、戸惑い苛立ちを見せるのも人間なんだと。
そんな営みも誰もが終わりを迎える。その時になにを思うのか、会いたい人は、会って何を伝えたいか、生きるってどう言うことなのか、悩むってなんの為なのか、人との関わりが生きる上で面白味を与えてくれるって教えてくれます。
自分一人で楽しめる本や音楽、けれどそれを共感する人に出会うことも幸せなんだと。
この映画はそんな人生経験を沢山積んできた人ほど共感できるのではないかな。
私も半世紀を生きてきてこの映画を理解できたフリができて嬉しい。
小料理屋の女将の歌は当たり前だけど上手いなと恐れ入りました。
映画の帰り角ハイボールが飲みたくなって買って帰りました。
木漏れ日
『パリ、テキサス』を観て、ヴィム・ヴェンダース監督のイメージって、
静かで淡々としてて、いいロケーションで美しい映像、のイメージだったんだけど、
本作も、静かめで割りと淡々としてますが眠くならなかった。
音楽が印象的で、予告編にも使われたルー・リードや、パティ・スミス、アニマルズ、など、いい音楽が使われ、
東京の風景を美しく切り取って、美しく映画に落とし込んでいます。
ロケーションは浅草の近辺がメインに使われてて、美しく色鮮やかに光るスカイツリーが頻繁に出てきます。
それが、とても良かった。
そして、少しずつ少しずつ、主人公の過去が分かってきて…
静かめでセリフの少ない映画なんだけど、引き込まれて観てました。
エンドロールは最後まで観て下さい。
本作を理解するのに重要な一文が表示されます。
良かったです。
美しい余韻に包まれます。
分からないのに感動!なんだか感謝。
テーマがあるのか、メッセージがあるのか、夢の映像の意味とか、いろいろ分からずに淡々と進んで行くんだけど、ちょっとした揺らぎに目が離せなくて、主人公が聴く曲、読む本が気になって仕方なくなってしまう。どんな映画かって説明出来る程の物語もないけど、少ないセリフが、きっと鑑賞者それぞれの境遇によって違う刺さり方をするはず。私のようなオーバー50はそれが多いので感動が大きい。なんか美しい映像もあって映画らしい映画を堪能させていただきました。年の瀬にいい物見せてもらって感謝です。
つまんないけど、悪くないドキュメンタリー
ずっと無言で生活音だけ。役所さんが扮する平山の1日をただ観るだけの映画。次の日も同じルーティンで終わり、また次の日が来る。トイレ清掃、銭湯、花に水。
でも何だか瞑想してるような感覚で案外悪くない。
都内を周るシーンはまるでドライブしてるようだった。
これは都内組の方がリアルで面白い気がした。
後半は物語が始まりやっと映画らしくなった。そろそろ飽きてきたタイミングだったからそれが救いで時間を気にする事なくエンディングまで。
若い人にはつまらないんじゃないかなー?
決して人にお勧めは出来ない映画。
自らの意思で観た人には優しい映画。
置かれた場所で咲くことの幸せ
ストーリー性を期待するとやや弱いですが、
むせかえるほどに共感させられます。
東京という街の美しい一面、
箒や畳の音、生活音や雨音、
木漏れ日や木々がそよぐ音など、
普段スルーしてしまう小さなことでも心を向ければ幸せを感じることができる、そう気づかせてくれる映画でもありました。
役所さんが最後に、長尺ドアップを表情だけで一人の男の長き人生の喜怒哀楽を表現するシーンはさすがプロ、見る価値ありです。
反復への愛
本作で、第76回カンヌ国際映画祭
最優秀男優賞に輝いた役所さん。
そのニュースを聞いた時から本当に楽しみにしていました!
ヴェンダース監督は勿論、役所さんの大ファンです!
客席も結構埋まっていて嬉しかったです
(誰?w)
東京でトイレ清掃員として働く平山
(役所さん)
毎日同じルーティンをこなし生活している。
朝まだ薄暗い時間、老女が掃除する竹ぼうきの音で目を覚ます。
布団を畳み、歯を磨き、髭を剃る。
植物に水をやり作業着に着替えて、鍵、小銭、ガラケー、フィルムカメラを持って家を出る。少し空を見る。
自販機でコーヒー(BOSS笑)を買う。
車に乗り込みいつもの角でカセットをセットし仕事場へ。。
いくつかの公衆トイレを丁寧に掃除し、昼は神社の一角のベンチでサンドウィッチと牛乳。
カメラで木々の木漏れ日を一枚撮影。
仕事を終えて自転車で銭湯の一番風呂。
その後は駅地下の居酒屋で一杯。
長居はせず、家に戻り、眠りにつく寸前まで本を読む。
休日は部屋の掃除とコインランドリー。写真の現像と古本屋。そして特別な居酒屋へ。
ママ(さゆりさん)が素敵(^。^)
そんな毎日の繰り返し。。
何だろ、見ていてね。
や!!パーフェクトデイズじゃん!!って思ったね!!
平山の淡々とした毎日が愛おしく思えた。
小さな幸せに溢れていて、平山は自分で自分を幸せにする達人だと思った。
平山は古いアパートに1人で住んでいて、質素に暮らしている。
しかし、多くを持たなくとも、不幸には見えない。むしろ、好きな本、写真、植物に囲まれて幸せそうだ。
彼にとって大切な物を慈しみながら丁寧に生きているのが伝わってくる。
そんな彼の生活に他者の起こす小さな波紋が可笑しみやスパイスをもたらすのだけれど、平山は流される事なく、近づけず、近寄らずな距離で自分を保つ。
しかし他人に無関心と言う訳ではなく、チャーミングな面も見られた。
毎日同じようで同じ日は1日もない。
同じ場所から撮る木漏れ日も、1枚として同じに写る事はないのと同じだ。
日が変わる描写として、眠る前に映し出される木漏れ日に重なり、今日1日の中で、彼の心に残ったのであろうシーンが混ざり合う。
このモノクロの印象的なカットが繰り返されるのも興味深い。
平山の過去。
ニコや妹との少しの描写で、多くは語られないが、彼にも手に入れられなかった何か、手放した何かがあったのだろうと想像が膨らんだ。
そしてあのラストに繋がるのだから参ってしまった!!
(彼が選んだ古本は、ウォークナーだったり、パトリシアハイスミスだったり、幸田文だったり。。
博学そうなチョイスで、社会的地位の高い人物だったのではないかと思った。)
東京の描かれ方もステキだった。
アングルが美しい!
スカイツリーをメインに、首都高の複雑な曲線だったり、主役?の都内の様々なオシャレトイレも見所。
私も2箇所利用した事がありました!
(ちょっと良くわからなかった所。
ルーリードは良く知らないが、
パティスミス「Redondo Beach」って!この曲、ポップなレゲエみたいな変な曲だと思っていて、歌詞だって、レズビアンのカップルの1人が自殺するって曲〜!!
ど〜ゆう意味で使ったのかな( ᐛ )
色々書いておきたいのだけど、文才が無さすぎます(°▽°)
役所さん。多くを語らずとも平山に命を吹き込む演技が素晴らしい!
大きな出来事は起こらないのだけれど、グイグイ引き込まれていきました。
久しぶりに興奮してしまった。
仕事に対する考え方や、人生観や価値観までも変わってしまうような作品でした。
「今度は今度、今は今」って良いね♪
脇も個性派の役者さんを贅沢に使っていて驚いた!
あれ?もしかして?◯さんだった?!エンドクレジットで確認。キャットレディだってよwやっぱそうだったw
そしてタカシ(時生)は、
10段階で9!の割合でお金返さないと思う〜笑
ワンオペ確実の冬休み前に、凄い作品を観られました。がんばれそう。
2月のエリセの新作も楽しみだな〜♪
それでもいいんだ。
平山の歳は知らないが役所さんとは2歳違いである。私もおひとり様である。日々黙々とルーティンをこなしている。休日は一言も発しない日もよくある。
私にもささやかなお楽しみはある。映画もそうだし、簡易ジムではひたすら音楽を聴いている。車での移動の時も。
綺麗な景色を見れば幸せだと感じる。
ただ私は平山のような境地にはなれていない。焦っている。人生の最後が刻々と近づいてるのに結果が出てない気がする。私は何をしてきたのかなぁ。
病気になったら働けなくなったらの経済的不安につきまとわれている。
劇中三浦友和が言う。「わからないまま終わるのかなあ」みたいなこと。ああ、みんなそうなんだ。すごく楽になった。
あと楽曲がすごく良かった。プレイレスト作ったけど、誰か全てわかる人教えてください。
11の物語はどこも品切れでした。
ルーティン
渋谷区の公衆トイレ清掃員の日常の幸せの話。
目覚ましいらずで早朝目覚め、植木に水をやり身支度整え、缶コーヒーを買って車に乗り込み仕事に出かける男。
そんな男の仕事と帰宅後の日課、そして休日の過ごし方をみせるだけの作品…かと思ったら、そんな日々の繰り返しの中にも様々な突発的な変化があって、それも含めて日々を楽しんでいる様にみえる主人公。
詳しくは示されないけれど、どうやら窮屈な人生を嫌い踏切りを超えて来た主人公が、生真面目さを全開にしつつも気楽で思うままに生きているということですね。
大きな波はないけれど終始素朴な幸せを謳歌している様子の主人公がとても良かった。
とても綺麗な映像に感動しました
殺人事件もラブロマンスもない、ただひたすら日常生活を映しているだけなのですが、とても新鮮で美しく思えました。
時折流れる音楽が一段と心地よく、美しい映像をより一層引き立てていました。
時折流れるモノクロの場面が最後まで理解出来ませんでしたが、それも含めて素晴らしぃ作品でした。
自分には合わなかった
すいません、この映画は自分には合いませんでした。基本的にずっと平坦でセリフもかなり少なめでこの映画のどこに面白味があるのか良く分かりませんでした。いかにも映画通が好みそうな映画で素人の私にはさっぱり理解できませんでした。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 「東京物語」ならぬ「東京便所物語」。判で押した様に同じ毎日を繰り返していけることが“PERFECT DAYS” という事なんでしょうね。
①石川さゆりも老けましたねえ(確か同い年)。石川さゆりの唄う「朝日のあたる家」も良いけれど、ここはやはり“ちあきなおみ”で聴きたかったねぇ、ちあきなおみバージョンを聴いてしまうと後は全て二番煎じに思えてしまうもの。
②出来れば役所広司のループの様な毎日(蒲団を畳む→水をやる→缶コーヒーを買う→トイレ掃除をする→近くの神社でサンドイッチを食べ写真を撮る→トイレ掃除をする→帰って銭湯に入る→駅側の居酒屋で晩飯を取る→文庫本を読んで寝る)(休みの日にはコインランドリーに行って、古本屋で文庫本を買って、石川さゆりがママをしているクラブに行って)を淡々と延々と描いてくれた方が良かった気もする。
③基本的に誰でも毎日ほぼ同じことを繰り返して生きているわけで、ただ生活パターンは同じことの繰り返しでも、勿論内面では色んな事が心に寄せては返し寄せては返ししている。見るもの遇うものに対して色んな感情がわくし、来し方行く末にも想いを馳せつつ、新しい一日を迎え、また同じ様にその日を生きていく。
役所広司扮する主人公もまさに同じで、ただ映画にするからには、この男にはどんな過去があって、どうして現在の境遇になったのかを知りたい気もするし、普通ならそこを突っ込んで描くだろう。
でも全て想像に任せるというのも一つの映画の形として良いと思う。
④良い奴のようで結局チャラい無責任男だった柄本時生のエピソードや家出した姪と数日暮らすエピソードはまだ良いとして、三浦友和のエピソードは無いかもっと別の形であった方が良かった。
仄かに好意を寄せている女性が知らない男を抱擁している姿にショックを受けて自棄酒を呑んでいるところへ件の男が現れ、実は別れた夫で癌で余命が少ないのが分かったため永遠の別れの前にせめてもう一度別れた妻に会いたかった、という在り来りな設定が映画の底を浅くしたようにも思う。
⑤独り身で生きているけれども、日々出逢う色んな事柄に対して微笑み、笑い、怒り、悲しむ、色んな想いを抱え、でも好きなもの(木、葉、木漏れ日の写真、読書)をやりながらルーティンの様に日々を過ごしている姿に、僭越ながらまるで自分の事を描いてくれている様な錯覚に陥るくらい共感してしまった(特に前半)。
だから、自分にはあまり起こりそうにないエピソードが続く後半に違和感を覚えたのかもしれない。
⑥主人公を極めて寡黙な人間と設定したのが良い。
ラスト、延々と映される役所広司のアップの表情が、ここまで生きてきた、そして今こうして生きているこの男の内面を何より饒舌に語っていたから。(後付けで知った事:バックで流れていたのはニーナ・シモンの「feelin ' good」という曲。歌詞がシンプルだけどすごく良い。主人公が朝を迎える気持ち・日々を過ごす気持ちにピッタリあっている。)
⑦様々に表情を変えるスカイツリーが頻繁に出てくるし、登場する女の子の姿なんかを見ていると確かに令和の話なんだけれども、地方人だからかも知れないが、令和の東京にあんなに昭和が残っているのに少々驚いてしまった。
特に銭湯のシーン。懐かし~です。まだ日のあるうちに湯煙の立つ風呂場に入った時の、あの大きな窓から差し込む日光。
(役所広司の衰えた裸に少々ショック。でも歳を考えたら当たり前か)
ただ、子供が沢山遊んでいる公園にホームレスを住まわせておくかなァ、とあそこだけ?だったけど(大阪でももう見ない光景…)
⑧三浦友和は髪を染めているの丸分かりでしたね。
その他、神社で猫と戯れていた老婆が研ナオコ、昼飯にサンドイッチを食べる役所広司の隣のベンチで同じように昼食を取っているOL、銭湯の二人の常連の老人、写真屋(これも昭~和)の店主、役所広司が常連の居酒屋の店主、早朝に箒で道を掃いている老婆等々、点描される人々も面白い。
⑨この映画を観た人は今後トイレをもっとキレイに使おうと思うでしょうね。
⑩60年代・70年代のカセットテープにあんな高値がつくとはビックリ。
私は恥ずかしながら今やスマホでSpotify を聴いておりますが、昔のカセットは捨てずに結構持ってます。老後の生活に困ったら売ろうかな。
⑪久しぶりにヴァン・モリソンを聴きたくなった。
今度は今度。今は今。
感想
久しぶりに
ヴェンダースの国際興行作品を鑑賞した。やはり、監督はモノクロームの映像表現が秀逸であるのだという事を再認識させられた。
但し、今回は現代日本と日本人が主人公なので色彩美や、個性的な建築群、また東京の風景を表現するには鮮やかさが不可欠であり、旅という視点からも印象的となるカラーを選択したのだろう。
だか、監督において、事の発想と映像化の基本路線はモノクロームが主体でありまた、テーマは様々な世界で生きている多様な人そのものであり、人間模様を旅として表現している事は首尾一貫している。
監督の変わらない視点にいつのどの時代の作品も感動を与えられた。今回も人間模様の旅をしている雰囲気を充分に感じることができた。
また、アジアにしか生息していない銀杏や楓の木漏れ日を主人公は好んで白黒写真に収めており、光と影の描写が、作品のいたるところに表現されていてとても感動した。
『自由』の表現と捉え方
『さすらい』ではヒッピームーブメントの名残りとモラトリアム的自由の表現が主体であったと思う。
『ベルリン天使の詩』で全ての、あらゆる、天上界、人間界を含むあらゆる世界で生きる人々が想う『自由』を映像表現し、時に世界を複雑化させる原因が『自由』である事を考えさせられた。思考も表現も成長してそれぞれの立場、世界が理解できるようになったのだ。
今回の映画では日本人が基本的に持ち合わせている信念の中にある、単なる勝手な『自由』ではない、規律を持ち合わせた『自由』をよく表現している。
多くを語らず信念を持ち、規律を苦とせず、持ち合わせて自分なりの『自由』を謳歌している主人公。
彼の生き方はむしろ時代遅れの感が如実に出ているが、ここには監督なりの人生觀のような、『生き方を常に新しくしなくても良い。温故知新の文明で人は充分に事が足り、むしろ変えなくて良いのだ。』という信仰の様な、敬虔とも言える信念を感じる。
日本人の中には新し物好きで、常に革新を求めて動くという世界観を持った人達が少なからずいて、その様な人達が現代の東京を創った。
その人達の事もリスペクトしながら、監督は温故知新を大切にする日本人も、多いのだという事を今回の作品で教えてくれたような気がする。
よく日本人を理解してなければ、ここまでの映像表現はできない。勿論、役所さんの名演も含めて。
当たり前のように今を生きることがいかに大切な事で、世界でも貴重な事であることが簡単に理解できる。というところで、
⭐️5
2023年度 新作自己最高評価となった。
目に入っても目に止まらない、知らない世界から
世界のあり方が変わったコロナ禍を経験した私たちにならわかる"現代人が忘れがちなもの"を大事に大事に拾い集めるような2020年代の人生讃歌
今度は今度、今は今…何も変わんないなんて、そんなバカな話ないですよ!例えば音楽をカセットで聴いたり、古本屋で買った本を読んだり、いつきけのお店で飲んだり、仕事終わり銭湯に行ったり -- 都度一つ一つのことに時間を使っては(自分は割と"ながら"で並行しがち) -- そんな何気ない日常の大切さをふと思い出させられる。
一周回って"エモい"と"クサい"=(思ったより)いかにも普通の劇映画っぽさを交えつつ懐かしさと新鮮さ、温故知新に我々が忘れてしまったもの。一日一日、一瞬一瞬を大事に生きると生き生きと色づき始める世界。見慣れた景色も途端に変わってくる。目を向け、耳を傾けると見えてくるものをトイレ清掃員の平山が教えてくれる。忙しない現代社会から切り離された、規則正しい生活を送る平山。一見同じ日々、そのくりかえしの中にも差異を伴う反復があって、役所広司さんの(なかなか一言目を発さないセリフの少ない)完璧な演技と佇まいがその機微を掬い取るよう。毎朝、家を出た瞬間に空を見上げる表情や、スカイツリーを見上げる仕草、昼休憩のときに写真を撮る様子、そのどれもが愛しい。
その中でも飽きさせない作り・仕掛けもあって、笑えることもあったけど、そうした海外の人から見た"らしさ"こそ、むしろこういう作品の成り立ちそのもので存在意義とも感じる。中でもルー・リード、パティ・スミス、ヴァン・モリソン…など、朝焼けと名盤カセットの相性の良さ。個人的にも好きなラインナップで、音楽の趣味が最高にツボ・ハマる主人公。従来のヴィム・ヴェンダース作品同様、鼻につく人もいると思うけど、ただ本作の"なんちゃって日本"が鳴りを潜めて、私たちの知る日常風景の中で淡々と、そして丁寧かつ繊細に紡がれるドラマは詩的で情緒豊か、かつ静かに胸を打つものがあった。しっかりとした組み立て・構成があるから、途中少し脇道に逸れたように感じられても、それもまた人生だなと思えるように、最後には感情が溢れてくる。
欲やいっときの感情に踊らされるのでなく、自分ももっとちゃんと生きたいなと。柄本時生の役柄にムカついたけど、そんな感情もまたくだらない。田中泯さんには無論踊らせる。今この一瞬あなたは本当に"生きてる"と胸を張って言えますか?
The Tokyo Toilet
おつかれさん!
木漏れ日
勝手に関連作品『すばらしき世界』『ベルリン・天使の詩』
さすが役所広司さん
2時間の作品の中、殆ど話さないですが、それでもその時の感情がよくわかるし、トイレ掃除や生活が何度も繰り返されている日常性に違和感を感じませんね。さすが役所広司さんです。大変な生活だとは思いますが、一種の憧れも感じてしまいました。
ミニマルな中のちょっとした悲しみとささやかな幸せ
ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演
東京を舞台にヴェンダース監督ということで小津安二郎のオマージュ的な感じかなあ、と観たけど、これは味わい深いいい作品だった。
側から見れば、昨日と今日、同じ生活の繰り返しのように見えるけど、よく見れば少しずつ違うちょっとした悲しみとささやかな幸せがある毎日というのをミニマルな繰り返しの中で見せる作品だった。
声をはらない役所広司と少ししか出てこない三浦友和
あがた森魚、ギター石川さゆりの歌もよかった
海外の監督が撮ってるのを途中で忘れた
おじさんたちの心優しさと、さり気ない繋がりが微笑ましい。
常連同士のアイコンタクトがある生活空間が懐かしい。
外国人監督には微細な日本人の心を写し出すのは難しいだろうことが見える。
何といっても役所さんの顔がデカい!
あの派手で彫りの深い顔は外人だわ。
しかも、カメラがより過ぎだなぁ
そして全ての所作に日本的ミニマリストしての心在らずで忙しない。
唯一楽しめたのは、
三浦友和と影を重ねると濃くなるのか?
の問いに、
西洋絵画と日本画と墨絵の謎々を影踏みで戯れたところは愉快だった。
ならば、
肝心の木漏れ日や早朝の空気、
朝日に雲間の陽光のいい情景があってもいいようだが、
ターナー以下の景色しか映し出せないのは残念だ。
そして、あのカセットテープで昭和アナログを懐かしむのは良いが、
選曲と音量バランスが映像を更に酸化するようで、
なくてもいいのではない?
それに、
モノクロで映写した方が良かったのではないか!?
まあ、こんな不気味で違和感は、
全編に鎮座するあの新東京タワーと奇抜なトイレ群の奇妙さが時代の変遷を色濃く感じさせ象徴的ではあった。
何に充足を感じるかは、
野球と宗教は自由だと飲み屋のオヤジが怒鳴っていた。
敢えて言えば、
寡黙で大人しく、
兎小屋で盆栽いじりして、
薄ら笑いしている奇妙な日本人をよく撮っていた。
それで、平山さんは何をしでかして更生生活に入っているのだろうか?
( ̄∀ ̄)
PERFECT DAYS
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、
役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。
2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、
役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。
淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。
昔から聴き続けている音楽と、
休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、
人生は風に揺れる木のようでもあった。
そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。
そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、
世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、
東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。
共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。
カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。
no music no life
隙間なく密集した無機質なビル群の隙間の中をグルグルと駆け巡る首都高速と忙しなく先を急ぐクルマたち。
人と車が行き交うどこにでもあるような情景に時折り現れるスカイツリー。
昭和の雰囲気が漂う人情味に溢れる下町の日常。リアルな東京。そして彼の存在。
どんな人間に対してもあんなに優しい表情ができるなんて、自分にはとうてい出来ないな。
彼がこれまでどんな人生を歩んできたのかはわからない。
でも毎朝空を見上げた時に見せるあの優しい笑顔の表情から伝わって来る。
彼は自分で選んだ人生を一人で生きていく時間の流れを穏やかな心で愉しんでいる。
とても穏やかな映画でした。
彼の住んでいる町に行ってみたくなりました。
そこに行けば彼に会えそうな気がして。
彼は毎朝仕事に向かう時、慌てがちに玄関の扉を開け、
外に飛び出したと同時に空を見上げ笑顔を見せる。
朝の澄んだ空気を深呼吸。
体の中が清められるような感覚。
湧き上がる幸せな気持ち。
昨日の出来事やトラブルや悩みは浄化され清々しい気持ちでまた1日が始まる。
そしてあの笑顔。
自分もそんなふうになれたらなぁ…と思いました。
追記
昭和のウイスキーのCM のようなカットがあり役所広司にしか出せないあのシブさ。
あんなふうになれたらなぁ…とまた思ったのでした。
日本がもっと好きになる、優しく、重い映画
眠くなるだろうなあと思いながら、とても、楽しみにしていた。
予想通り、途中までセリフがほぼない映画だが、役所広司の表情、動き、すべてが物語っており、ぐっと惹かれた。
そうそう、日常でそんなにたくさん、話さないことのほうが多い。
外を眺めてみたり、なんとなく音楽流したり、(理想的な)日常そのものであり、インタビューのないドキュメンタリーのようだった。
そして、もう一つのメインである、トイレ。
透明なトイレは話題になったが、東京にいながらこんな独特なトイレがたくさんあることを知らなかった。トイレを観ているだけで楽しい。
新しいものと古いもの、変わるものと変わらないもの。その象徴である浅草周辺という舞台で見事に描かれている。
日本人にとっては、というか都会に住んでいる人にとっては、ニコの母のように、「こんなところ」という感覚だった。下町を意識することも薄かったがこうしてみるととても魅力的だ。
これは海外の人から観たPR的な日本として描かれているのかもしれないが、再認識させられる。
細かい日常と話さない平山の対比として、個性的な登場人物たちがさらに印象的にうつる。どれもほっこりするキャラクターで、微笑ましく観られる。
しかし途中から、変わらないようにする平山に、様々な変化が外から訪れる。その不穏さと儚さにこちらまで心のバランスが乱れてくる。
トイレの清掃という、どこかで社会の影と捉えている、自分に対しても何かを語りかけられている気がする。
それがラストシーンへとつながっていく。
静かな映画だけど、じわっと、ずしっと心に届く、映画だった。
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〈追記〉
パンフレットや様々な批評を見てから、2回目鑑賞。
世界観、空気感は個人的には刺さっており、何回でも観たいのは間違いないのだが、やはり綺麗な面しか見せていない、というのはひっかかる。
トイレにもたくさんのお金が注ぎ込まれ、東京都による壮大なグローバルまちおこしの一環であるのは否めない。
トイレ清掃員という労働階級とを扱いながら、問題提起が足りないのもあるし、恵まれている自分が満足してしまっているのに認識させられる。
映画の社会性というのを今一度考えてしまう。
2023年劇場鑑賞113,118本目
何で高評価?
観賞する前から、特に大したことは起こらない淡々とした内容の作品なのだろうとは予想していましたが、ここまでとは思いませんでした。私の感性がおかしいのだとは思いますが、何も伝わってくるものはありませんでした。
また、ただでさえエピソードが少ないのに、その少ないエピソードから響いてくるものは何もありませんでした。全くやる気のない相棒や売る気もないカセットテープを売りに行く場面、スナックの場面、三浦友和との場面など必要だったでしょうか?かえって無い方が良かったのではと思いました。いったいこの監督は何を撮りたかったのでしょうか?私には日本をよく知らない人が、神社、トイレ、自販機、銭湯、食堂、スナックなど、日本ぽい物を撮りたかっただけにしか見えませんでした。
それと、私の身勝手な憶測ですが、この作品の主人公のような生き方を良く思う方々は、仕事で毎日トイレ掃除をしたことがない人で、結局「隣の芝生は青い」のだと思います。
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