PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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役所広司が素晴らしい
事件や事故のようなドラマチックな事を描かなくても映画は成立する手本のような作品でした。
トイレの清掃員として働く平山という男の日常のルーティーンを淡々と描いていますが、日によってさまざまな変化があり
偶然のハプニング、出会い、天候、家族等々を上手に見せてくれているので最後まで飽きることはありませんでした。
ビム・ベンダース監督の映像センスも素晴らしく小津安二郎監督に影響を受けたというのも頷けます。
エンディングクレジットの”木漏れ日”の解説がテーマというのもわかりやすくて好きな作品になりました。
ラストの長回しの平山の表情が印象的でした。
どの年代の方にもお勧めいたします。
いつもの街が違って見える
気づかないでいたこと、見過ごしていたことを教えてくれる。
『パターソン』を見た時にも感じましたが
映画館を出た後、いつもの街が違って見えるなんて、ものすごい映画だと思います。
ビム・ベンダース監督には、渋谷がこんな風に見えているのか!
すぐそばにある小さな楽しさ、小さな不思議、小さな幸せに気づける目。
この世はこんなにも美しいのか。
無機質に見えていた都会にも自然があり、日々のルーティンの中にも様々な驚きと冒険がある。
公衆トイレを美しく保つということは、文化的な人間の尊厳を守るということだと感じました。
カセットテープの選曲が良い。
ちあきなおみの『朝日のあたる家』が好きなので、もし出演されていたら…と妄想が止まりませんでした。
無名塾の芝居が苦手なので…すみません
そこだけ。
劇場で拍手が
淡々とした日常に浸るための映画でした。
一瞬のリズムを慈しむ
2023年。ヴィム・ヴェンダース監督。東京の下町でトイレ清掃員として暮らす男。自らを律して単調な毎日を孤独に生きているが、音楽と光のリズムが男に降り注ぎ、男の人生を励ましている。「孤独に耐える」的な感じになっていないのがすばらしい。
亀戸あたりに住む男の10日間ほどの生活は寝ているときに見る夢も含めて極めて単調だが、カット割りには独特のリズムがあって楽しい。というか、事態は逆で、実は単調な行動の繰り返しと思わせて、起伏に飛んだ出来事がたった10日余りの間に次々に起こっていると見るべきだろう。音楽と光と編集によって複雑になっているだけではなく、実際に複雑な出来事が起こっているのだ。同僚が狙っているホステスになぜかキスされたり、昼食場所の神社の境内で若い女性に注視されたり、不思議な舞踏を舞うホームレスと遭遇したり、姪が家出したり、行きつけのバーのママの情事を覗き見てしまったてその相手の男に声をかけられたり、、、。だから、それなのに、「単調」と言いたくなるようななにげなさを作り上げているところがすごいのだ。
男が就寝前に読む本の選択がすばらしすぎる。フォークナー、幸田文、ハイスミス。これだけでただの単調な生活の男とは言えない凄味を感じる(きっと音楽の趣味もいいのだろう。門外漢だからわからないが)。だからこそ、世間に背を向けて「孤独に耐える」感じになりそうなところを、自然と世界を受け入れて、毎朝を空を見上げて笑顔になれるところが感動的なのだ。
ノマドランドのような感覚
映画版「時代おくれ」
素晴らしかった。
何もない日々、いつもと同じ日々の中の
喜怒哀楽、嫉妬、不安や恐怖、
きっと満ち足りてない完璧じゃない日々の
結集がパーフェクトデイズになるんだと
人生の一本級に感動しました。
役所広司1人を撮ってる時はとても日本人的で
なんでこんなに日本人を日本人らしく撮れるんだ?
と思ってたら、
他のキャラクター、柄本時生の狙ってる女の子や
姪っ子、三浦友和と絡むと急にファンタジーっぽく
なるところもヴィムベンダースらしいなと思いました。
私も毎日仕事場と家の往復の毎日だけど、
それをつまらない人生だなと思うのではなくて、
一つ一つを丁寧にやって行く事で人生に深みが増して
愛せて行けるのかなと思いました。
(そんな説教臭い映画ではないけど)
すぐ影響を受ける僕は
近くに公園があって、銭湯があって、飲み屋もある。
すでに良い人生を送れてるじゃない!
と思ったのと、アパート借りようかなと思いました。
とにかく素晴らしかった。
ヴィムベンダースにオファーした人に心からの拍手を
送りたいです。
わりとこんな風に生きてます。
12月は忙しくてほとんど休めず、日銭稼ぎに都内や横浜市内を行ったり来たり。仕事の準備なんかもあって映画もあんまり観てません。そしてずーっと気になってたこの映画を、漸くできた休日、今日大晦日に漸く観てきました。
ヒラヤマさんが流す音楽がストライクです。朝日のあたる家、ドックオブベイ、そしてパティ・スミスのカセットテープから流れる音楽(題名わからん)、懐かしい。ヴァン・モリソンの茶色の目をした女の子、ルー・リードの名曲パーフェクト・デイ、最後はニーナ・シモン姐さんのjazz numberフィーリンググッド(気持ちいい!サイコー)。そして東京の美しい映像。僕もこの風景の中で生きてます。パーフェクトでした。一年の締め括りに佳い気分になれました。
日銭稼ぎながら、軽く一杯やって、音楽聴いて、古本読んで…。これって僕のこと?そう思って観たおじ(い)さん沢山いますか?
※アヤ、姪っ子のニコ、ホームレスのじいさん、スナックのママの元夫、いかにもヴィム・ベンダースの映画っぽい登場人物でしたね。
何で解るの〜?!かんとく〜?!
60代女、ダブルワークで清掃業をしています。
50代でこの業界に入ってから約10年、毎朝4時起き。トイレ清掃も必須。家を出る時は平山さんと同じく空を見上げます。星が綺麗。今日も行ってくるかと決意しながら。職場に着いたら作業着に着替え缶コーヒー、これも同じ。
もれなく汚い仕事だと人は言うでしょうが、私は「人の心ほど汚いものはない」と思っているから。
休みの人がいるので今日はトイレ5フロア。4時間で男女5フロアはキツイ。平山さんの様に連日だったら死ぬ。本社に泣きつけば人を何とかしてくれる。助かった!!ここもしっかりと描かれていた。
14階からの夜景と富士山が綺麗。平山さんは木漏れ日と風、等感じられるから公園トイレ清掃を選んでるんだよね。
便器、洗面台をガッツリ清掃するとピカピカになるし、達成感ハンパない。心の垢とホコリを拭って、釈迦仏の一弟子、周利槃特の境涯になれる。
平山さんが眠りにつくときユラユラと影絵の様に今日あった出来事を夢見てる。私もよくある。眠りが浅いんだよね。朝起きれないかもという不安からかぐっすり眠れない。使う人がいる限り、トイレ清掃は連日続く。ラストの平山さんの悲喜交交の表情。
毎日ハンドルを握り、清掃道具を積んで現場に向かう。清掃は道具が命。
トイレ清掃の毎日が全て中心。何があっても。
こんなに素敵な映画をつくって下さってヴィムベンダース監督、スタッフキャストの皆様、有り難うございました~又リピートします。
細かい描写、美しい映像、素晴らしい演技をもっと見つけたいです〜✨
ラストシーンの凄味
サニーアフタヌーン
久々のヴィム・ヴェンダース監督作品。渋谷のトイレプロジェクトを映像化する企画から、一本の長編劇映画に発展したとのこと。
60年代・70年代のロックナンバーを使用するのは、ヴェンダースならではの持ち味だが、今作での選曲も絶妙。特に、主人公自身の選曲という形で、早朝出勤途中の「朝日の当たる家」、休日午後の「サニーアフタヌーン」(お馴染みキンクス!)、ラストの朝焼けでのニーナ・シモンと、まさしくシーンにぴったり合わせているのが面白い。
単調に繰り返される日々の行いを丹念に描いているが、ちょっとした出来事や人との触れ合いで、全く同じ日というものはない。
ヴェンダース作品では、小津安二郎からの影響をよく言われるが、今作では特に、「死の影」の存在について共通するものが感じられた。さらに言えば、小津安作品では酒場シーンも見どころだが、今作での石川さゆりの歌唱シーンは、日本の観客へのサービスとも言えるだろう。
ラストの役所広司の表情は絶品。カンヌでの評価を決定付けたのもこれだろう。
東京の原風景を優しさで映す
正にわびさびの世界
中年男・平山の日常を淡々と綴る物語は平板で面白みに欠けるが、ここまで徹底されると、まるで環境ビデオでも観ているような心地よさを覚える。正に”わびさび”のような映画である。
何と言っても、ラストの平山の表情が印象に残った。
彼のバックストーリーは時折挿入される夢や、後半から登場する彼の縁故者との関係から色々と想像できる。しかし、その詳細については謎が多く、そのせいで感情移入しがたいキャラクターとなっている。ただ、何らかの事情を抱えた男であることは間違いなく、このラストを見ると決して今の人生に満足しているわけではないということも分かってくる。それに気付いた瞬間、自分は何だか泣けてきてしまった。
平山は日々に芽吹く小さな奇跡に時折柔和な笑みをこぼすが、それもどこかで無理をしていたのではないか。本当は悲しいはずなのに、それを忘れようとして無理に笑っていたのではないか。そう思えてならなかった。
これは孤独な人間の物語だと思う。平山は他者との繋がりを極力持たず、自分が決めたルーティンの中に閉じこもって生きている。まるで外の世界に踏み出すことを恐れているかのようである。
そして、翻ってみると自分も似たような日常の繰り返しの中で生きていることに気付かされる。だからこそ、最後の彼の表情に共鳴してしまったのかもしれない。
「PERFECT DAYS」というタイトルも実に皮肉的である。”完璧な日々”とはこれ如何に。平山の孤独な生き方を見て憧れる人は余りいないのではないだろうか。
確かに人生は映画のように劇的なことは起こらない。そういう意味ではこの映画はリアルと言えるが、これを”完璧な日々”と認めてしまうと何だか自分自身がわびしく思えてしまい複雑な気持ちになってしまう。
ちなみに、劇中で流れるルー・リードの楽曲「PERFECT DAY」はドラッグ中毒について歌った曲というのが通説であるが、これも実に皮肉的な内容の歌詞である。本作の平山の日常にこれが被さると少し残酷なものに見えてくる。
監督、共同脚本はヴィム・ヴェンダース。
ヴェンダースと言えば、小津安二郎を敬愛してやまないことで有名だが、所々に小津オマージュのようなカットが見られるのが興味深かった。例えば、平山の部屋を捉えたローポジションのカットなどは正に小津的である。
また、平山を演じた役所広司の温もりに満ちた眼差しには、小津作品の常連・笠智衆が連想させられた。飄々とした表情にユーモアを滲ませながら、人間味あふれる人物像を見事に創り上げている。繊細で懐の深い演技が堪能できるという意味では、本作は正に役所広司を代表する1本になっていると思う。
撮影も見事だと思った。平山が住むアパートは東京の下町にあり、すぐ傍には東京の新たなシンボル、スカイツリーが立っている。雑多な下町と近代的な高層ビル群の対比が画面に良いアクセントをつけている。
また、渋谷のユニークな公衆トイレはガジェットとしての面白みに溢れており、浅草地下のディープな飲み屋街や場末のスナック、古本屋、コインランドリー、銭湯等、昭和の匂いを感じさせる風景も面白い。前川つかさの漫画「大東京ビンボー生活マニュアル」のような趣が感じられた。
かつて「東京画」でパチンコ文化をフィーチャーしたヴェンダースだけあって、今回も通り一辺倒な有名観光地ではなく、敢えてマニアックなスポットを選定したセンスが素晴らしい。
作為的
トイレ清掃員として働き、裕福でもなく特段の変化があるわけでもないが豊かで満ち足りた、男の日常の「幸せ」が淡々と描かれている、そして同じように見えても、毎日何かしら起きて、一日たりとも同じ日はないことが分かった、などの評価、というか感想を想定して作られたような映画と思いました。平山のような生活は、理想の生き方のひとつでしょう。
映画そのものに関して、辛辣になってしまって申し訳ないですが、いろいろ、あり得ない。
強引にきれいごとを並べただけ、な気がする。
リアリティーが感じられなく、いちいち作為的で、なんか鼻につく。
主人公が住んでいるアパートがこれでもかとボロい(取り壊し待ちのレベル)、相棒に金を貸したらガス欠になり大事なカセットを売りに行くとか(どう考えても位置的にムリがある)、姪を迎えに来た妹が、運転手付きの高級車を使っていたり(今どきこんな人いる?)、いい加減なやつと思った相棒が障害者に優しい、(実はいいところもある、の描写に障害者を出してくるんだ?)とか、なんかもう、作為的です。
役所広司の年代なら、年金をもらいながら清掃業すれば、風呂なし洗濯機置き場なしだが都内に立地するボロアパートの家賃を支払い、自家用車を持ち、駐車場を借りて、銭湯へ行き、コインランドリーで洗濯、毎日コンビニでお昼を買い、その上行きつけの居酒屋で毎日のように一杯やって、時々美人のママのいる飲み屋にも行くような生活ができるかもしれない、とそこだけは妙に納得しました。
何度も挿入される木漏れ日の映像、ただ木漏れ日を撮るのが好きなだけ?
主人公が眠りについたときに現れる心象風景のような映像も、特に意味もなく肩透かしでした。
トイレ掃除するのに素手で始めるのにびっくりした。手袋しないのか? 特に、コロナ禍を経た今、素手というのはありえないと思う。汚れた作業着を洗わずに吊っておくだけっていうのも、衛生観念上大きく違和感があり、こういう人がいたら本人的には完璧に幸せかもしれないが、あまり近づきたくない。
毎日の描写が延々続くが、いつになったら終わるんだろうかと思ってしまった。
そもそも、日常の小さな幸せに満足して満ち足りて生きている人を描写するのになんで「トイレ清掃員」なんだろう。底辺に見られがちだが実は満ち足りて幸せです、というテンプレみたいだけど、トイレ清掃員の何を知ってるんだろう。上から目線で失礼な感じがする。
そこそこのお年を召した外国人映画監督が思い込んだ美しい日本と日本人な感じで、私には違和感が多々ありました。
(追記)
星をつけたときになにかのはずみで1.5になっていました。
大変失礼しました。
多くの人にとって、PERFECTな日々を送るには生活の心配がないことだと思うので、意外と浪費家な平山の生活を支える収入の点で説得力のある描写があれば、それと掃除するトイレがあんなにおしゃれで綺麗じゃなくてありがちな汚さ臭さの描写があったら、もっと星多くつけられるのにと思いました。(トイレプロジェクトの一環なのでそれはムリでしょうが)
うーん、いまひとつスッキリしない。
ヴィム・ベンダースが描く外国のシーンはなんかオシャレで好きです。
が、日本人なので今回の作品はいまひとつスッキリしませんでした。
作品の合間に定期的に流れる夢なのか木漏れ日なのかよく分からない映像。
神社から持ち帰った苗に毎朝水をかけてるけど、苗がそんなに成長してないリアリティの無さ。
缶コーヒーのプルタブを開けるのが早すぎるとこ。
三浦友和が河川敷に突然現れて「私は癌です」と告白した後、平山と影踏み遊びをする不自然さ。
ニコを迎えに来た妹を平山が唐突に抱きしめるシーンはそこはあえて抱きしめない方がよりリアリティがあったのではなかろうか?
と、つらつら細かいことを挙げて批判してきましたが、全体としては良作だと思います。
飲み屋の大将の仕草や古本屋の女性店主のコメントは思わずほっこりさせられました。
音楽と東京の風景も良かったです。
あと、最後に一言だけ。
トイレ掃除する時、マスク着用は必須ではなかろうか?
え?「お前はいろいろうるさい」って😆
木漏れ日のような光と影の素晴らしさ
トイレ清掃員の日常を描いたヒューマンドラマ。どこにでもいるような平凡な男の日常の姿だけで引き込まれるのは主演の役所広司に魅力に尽きるのではないでしょうか。木漏れ日のような光と影にの素晴らしさを表現している良作です。
2023-210
光と影にこだわったカメラワークと何気ない日常を映画として描く監督の力量
トイレ清掃員の日常という、一見地味なテーマも、監督の力量でこんな素晴らしい作品になるんだなーというのが率直な感想。
まず、光や影、日常の何気ない風景の中のきらめきというか、美しい瞬間を、役者の演技とともに切り取るカメラワークが素晴らしい。
何気ないけど、相当考えて撮ってるんだろうなと思わせられる。ヴィム・ヴェンダースが東京を撮ると、こうなるんだ、という目線で見るのも面白かった(余談ですが、首都高の走行シーンって、海外の監督は好きですよね‥)
ただカメラワークだけじゃなく、ストーリーも良かった。
近所のおばちゃんの竹ぼうきの音で毎朝目を覚まし、トイレ清掃の仕事をしながら、趣味の読書や写真、そして音楽、銭湯、行きつけの飲み屋に通う日々。
孤独だけど、ちゃんと生きる楽しみを持っている主人公と、それに関わる人達。トイレ清掃の仕事の後輩、姪っ子
、そして妹との関わり。
なぜ今のトイレ清掃の仕事に行き着いたのか、その根本に、父との確執があった事を匂わせるシーンがあって、涙が‥
ほとんどセリフの無い役所さんの演技が素晴らしい。
誰が相手か最後までわからないけど、トイレの鏡の隙間に挟まれた紙の上で日々、○×の陣取りゲーム?が繰り広げられていくという、サイドストーリー的な要素も良かったし、
それと飲み屋のママ役が石川さゆりと、豪華!ママの生歌が聞けるなら、そりゃ通っちゃうよね〜。
見ていて暖かい気持ちになれる良い映画でした。
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