PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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日常にあふれている温かさと冷たさを、機微に掬い取った味わい深い作品
公衆トイレの清掃員の日常を描く・・・だけなら何も惹かれることはなかったのかもしれない。しかし日本映画ながら監督は有名どころのヴィム・ヴェンダースに主演の清掃員役には日本のトップ:役所広司。それがなんとカンヌで評価され、役所広司は男優賞を獲った。この作品はいったい何なのか?その興味から本作の鑑賞に至った。
ストーリーは至ってシンプル。平山という清掃員の仕事の一日、休日の一日を数日かけて見続けるというもの。寡黙で言葉を発することが珍しい男の生活を数日かけて追っただけのようなもの。しかもルーティンが決まっているかのように同じような生活をし続けている・・・
これが実に味わい深い。
基本同じように淡々とこなす平山だが、毎日の小さな出来事に心が動いている。清掃員を冷たく見る視線、助けた子供からお礼の手振り、サボり癖のある男の実はいいところ、仕事終わりの銭湯と居酒屋の一杯・・・
日常にあふれている人の温かさと冷たさを、「喜怒哀楽」を丁寧に掬い取ったかのようなシーンの連続なんです。
それを淡々と、誇張なく、それでいてグッときたり、おぉっとなったり、じんわりときたり・・・同じ毎日のように見えて、小さなことに新鮮さを感じる。これが味わい深い。こんな撮り方、正直現時点(2024年の時点)で描ける日本人がいるだろうか?日本映画であって、日本人には到底描けないような・・・。これがヴィム・ヴェンダースか。なんと詩的な作風なんだろう。
そしてもうひとつ。主人公の平山という人は、寡黙でほぼ喋らない。だから身体で表現するしかない役柄です。だが、役所広司は素晴らしかった。それはまるで、
“カラーのチャップリン”のよう。
そこまでコメディ要素はないものの、その身体、表情、仕草に不思議なオーラがあり、見てて飽きない。あまり抑揚がないように見えるが、実は静かに大きく動きがある。まさかチャップリンと重なって見えてしまうとは。今まで役所広司出演の作品はそこそこ見てるが、個人的には本作の役所広司が最高だと思います。
ただ、何回も観たくなるかと言えばそうではなく、地味過ぎるがゆえに小品感が強く、どちらかと言えば珍味のような作品。だから好みは大きく分かれるのかもしれない。しかし、本作は一見の価値はあると個人的には思います。冬に熱燗をじっくり呑むような、そんなスタイルが好きな人には合うのかなと思います。
光と影のゆらぎ
静かな熱量
平山と同世代なので自分の生き方を映されているようで初めは居心地が悪い。
社会的に見れば下層だけど、彼の生き方にはそれが合っているのだろう。自己を主張しすぎず、社会との関りを捨て去らず、目の届く範囲を温かい視線で見守る優しい日常。
ニコとの関係性は平山がただの世捨て人ではなく、感情が通った生きている人物である証明のような時間。ミニマルな普段の生活空間ではない場所に使わないゴルフバッグがあったり、静かで余白に満ちた映像から彼の生き様がうかがい知れる。そして、久しかった妹とのハグはこの作品の一つのクライマックス。
そして石川さゆりからの三浦友和は平坦な物語り進行にとてもよく効くアクセント。
Nina Simone最高でした。
ルーティンの日々に心をつかまれる。美しいと思う。時に心がかき乱され...
ホームレスと決めつけられた男
ノイズ
前半は彼の生活を観ていると、自分がいかにノイズまみれに生きているか、ということを痛感した。
わたしだって中学生くらいまでは、音楽と小説を楽しみに、好きなものをじっくり味わいながら生きていて幸せだった。
彼の小説や音楽、写真を楽しんで味わっている姿がとても印象的。
わたしの今はいろいろなことが気になって、無駄にスマホを見てしまうこともあるし、そんなに好きなことじゃないことになんだかんだ時間を使ってしまっている。
自分が良しとすることだけでなく、世間の目、周りからどう思われるか、世の中で良いといわれているものを好きでもないのにやろうとしたりしている。
そんなことを痛感していた。
彼だってノイズだらけの街、渋谷で働いているが、自分のペース、自分で選んだ生活をしている。これは丁寧な暮らし、ともやや違う、ただ彼が彼自身のためにやっている、という感じがとてもいいな、と思った。
ところが中盤から、同僚や、突然現れた姪など、彼の淡々とした穏やかな生活を乱す。
観ていると、どうか彼の生活を邪魔しないでくれ、と思ってしまったが、彼はその時だけ少し怒ったりもすることはあるが、決して変わらない。
人を避けるわけでもなく、関係をつくろうと意気込むのではなく、ただその時のその人と向き合う。
わたしは、木漏れ日の意味もよく知らなかった。監督は日本のことが好きで、木漏れ日からインスピレーションを受けたのかなあ。
台詞も少なく、説明も少ない。
その余白がそれぞれに想像したり、いろんなことが考えられるところが素敵。
最後の表情、笑っているのか泣いているのか、その時々の自分の状況で感じ方が違うのかも。役所広司さん、やっぱりすごいなあ。人生は笑顔になること、泣きたくなることどちらもあって、それでパーフェクトであるってことなのかな。5年、10年置きくらいのスパンでみかえしてみたい。
自分が日々いかに色々詰め込み、誰に向かってかわからないけど充実しているように、みんな、と同じであるようにしているんだなと思った。
もっと自分のペースで生きよう。
かわいいキス
この映画を観ると心が引き締まる
世界への愛、世界への信頼が、この映画を通して、自分の中で取り戻された。社会の中にどっぷり浸かるわけではなく、社会との接線を持って生きる人の生活には、社会からはみ出しそうな人たちにとって、ある種の確かさと純粋さに写り、憧憬であり誘われるものだろう。姪のニコが来て去るまでのシーンが、PERFECT DAYSという映画の最たるPERFECT DAYS。この部分だけで何度も繰り返し繰り返し観たいと思うし、彼の日々の光景、些細な出来事、陳腐にならないルーティンといった、同じ世界の中で彼が住む世界の優しさを味わいたいと思う。
1回目はこのシーンまでで良いとさえ思った。後半のドラマ的要素で彼の完璧な生活が崩されていくのは、少し見てられなかったし、あまり強い感情が露見するのにも違和感を覚えてしまった。
ストーリーを全て分かった上で改めて観ると、完璧な生活は、ちょっとしたことで崩れやすい純粋な脆さがあるが、他のどんな生活よりも脆さに直面しながらも、この生活、この世界を選び取った以上は、それも含めて、それも引き受けて、とにかくも生きていく、そうした力強さと覚悟も織り込まれている、ような気がした。
ヴィムベンダースの感じた美しい日本
日本人の表情は外人には理解しずらいらしいですが、今回は自分でも理解不能でした
役所広司がカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞
日本国内のキャッチコピーは「こんなふうに生きていけたなら」
??????
え、こんなふうに生きていきたいの?
70近い男性が文化住宅に一人暮らし
仕事はトイレの清掃員
一見、とても不幸にしか見えないのに、実は幸福だって言いたいのか?
ぜんぜん理解できません
役所広司の最後の泣き笑い
あれはハッピーエンドに見えるんですか
僕にはこんな状況になってしまった人生への後悔にしか見えなかったんですが
監督の意図がこんな生活を肯定しているようには全然見えなかったけど
ラストシーン、涙を流しながら口はわらっている
あれは、三浦友和に対して自分を幸せだと感じたという浅はかな表現だとは思いたくはないんですが
そういえば、軽薄な同僚との絡みの後も訳のわからない笑い方をしてました
これが、精神状態の木漏れ日なんでしょうか
意味分かりません
年寄りの男性の一人暮らしほど惨めなものは無い
最近、おすぎとピーコのおすぎさんの不幸な記事が出ていましたよね
歳とったら、人は1人では生きていけないんですよ
その時のために、ちゃんと準備をしておかないとね
その日暮らしの主人公にはそれが全くできていません
お先真っ暗ですよ
彼は真面目で、規則正しく生活しているように見えますが、おかしい所が沢山あります
実は彼は金持ちの息子だったとわかるんですが納得できます
慎ましやかなようで、毎朝、自販機で飲み物を買う
スーパーで買いだめしとけば安いのに
自炊を一切しない
ヤカンで湯を沸かすのに、コンロに火をつけてから、ヤカンに水を入れる
ガスがもったいないですね
なんか、地に足が着いていない
トイレ清掃中に子供を保護した時は、作業していたゴム手袋をとったはいいが、子供を抱えた時、手に持ったままの手袋が子供に接触していました
色々雑なんですよ
いいかげんな若い同僚に、金を貸してしまうのもお人好しのええカッコしい
金持ちのお坊ちゃんですよね
金持ちでないうちの親父はそれで破産しました
銭湯の常連さんくらいの歳になって働けなくなるまでのマダラな時期なだけ
それが木漏れ日ですか
結局、日本のトイレが外国人にとって不思議に思うくらいキレイなのにひっかけて、底辺と思われる職業のトイレ掃除と幸福のギャップを表現したかっただけじゃないでしょうか
海外では、社会からはみだして1人で生きていける人をリスペクトしている映画が多い
でも彼らは、社会で生きていくうえでの義務を放棄しているだけです
義務を放棄すれば、人一人生きていくだけなら、たいして難しくは無い
でもそれは社会があってこそであって、なければ、のほほんと生きてはいけないんですよ
義務を放棄しながら、社会の恩恵を受けているズルい生き方です
例えば、人は育てられた恩を親の介護で帰してヒフティヒフティです
今回は、あからさまに実は”金持ちのボンボン”の設定ですから好きなようにできますが、
庶民は子供の世話にはなりたくないと言っても限度があるからね
そういう意味では、”こんなふうに生きてみたい”になるのかな
おかしな作品です
おかしいといえば
二階建ての文化住宅は上の階は別の人が住んでいるはずですよね
彼の部屋は階段があって二階にも部屋があったんだけど、どうなってるんだろう?
メゾネットタイプの文化住宅ってあるんかな
変わらないなんて事はないという変わらない日常。
木漏れ日のような大人の映画
身の丈にあった幸せってなんだろう?
公衆トイレの清掃で細々と生計を立てながら、東京の下町で一人ひっそりと暮らす中年男”平山”の日常を淡々と描いた作品。無口な彼の変わらない日常をかいま見せてくれるだけですが、それでも、見る者には、彼が訳あってこのような世捨て人のような生活をしていることが薄々分かってきます。Perfect days - 「満ち足りた日々」とでも訳したらよいのでしょうか?主人公は平凡な毎日を飽きもせずに繰り返しているようですが、それこそが、彼が探し求めていた心の安寧だったのでしょう。そして、おそらくですが、私達にとっての身の丈にあった幸せも、平凡な日常とほんの少しばかりのさざ波のようなハプニングさえあれば得られるものなのかも知れません。役所広司さんの好演が際立った、心に沁みる作品でした。(細かいことですが、自転車で飲酒はやはり微妙ですよね...)
「完璧な日々」は完璧か
この映画は、普段スポットライトの当たらないトイレ清掃員が主人公なのが特別なのではない。
淡々と繰り返される日常、丁寧に向き合う仕事、そして小さな幸せ…。
最初はそれらを通して、「働く意味」を問うているのかと思った。
しかし後半、様々な人との関わりを通じて様子は若干違って見えてくる。
毎日同じ暮らしさえ確実に守っていれば、変わらない日常は続いて行く。それは幸せな事だろう。
しかし「完璧な日々」は本当に完璧なのか…。
人は人と関わらなければいけない以上、同じ日々は一つとしてない。
「完璧な日々」は、些細なきっかけで脆くも崩れ去る。
最後は「完璧な日々」は、完璧過ぎるが故に「檻の中の日々」でもあるのかもしれないと思った。
最後に見せた、平山の泣きそうで泣けない笑顔が、
変わらない日常から抜け出たくても抜けられない、
抜ける勇気など無い自分への涙に見えた。
考えれば考えるほど奥の深い映画で、それを最小限の台詞と映像と音楽で表現した本作には、頭が下がった。
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