PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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家族で見ないほうが良い
好きだし嫌いな映画
ショーペンハウアーの「幸福について」を体現するような生活。生き様。
アパートの鍵をしめないのは、物に固執していないから。
他人とかかわらなくても、自分を楽しむことができる。写真などの創作活動もして人生の軌跡も残す。快楽もないが苦痛もない。
故に、自分は幸せである。
でも、何もわからずに多分このまま終わってゆく(死んでゆく)。
それでいいんだろうな、いいと思うことにしよう。そんな日々。
ラストシーン。平山は自分のことをきっとこう思っている。
私は優しい、思慮深く、幸せもので、どちらかというとモテて、繊細で、器用で、孤独を愛し、感性も豊かな人間だ。
と同時に、稚拙で、臆病で、短気で、インポで、短小で、甲斐性がなく、不器用で、寂しがりやな人間だ。
幸せだ、いや情けない人生だ。いや他人より幸せだ、優越感、いや劣等感か。。。
自己嫌悪=自己陶酔。全部まとめて自分。矛盾だらけが普通の人間。幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなんだ。
鑑賞後のいま、本作は素晴らしく美しい映画だなという思いと、平山はあまり好きではないなという、混沌におります。
よかった!
ストーリーは淡々と同じ毎日が進んでいくようで日々の変化やちょっとした出来事がとてもシンプルで独り身の自分と重なったりしてなんだかグッときてしまいました。麻生祐未さんを抱きしめたシーンは涙がでてきちゃいました。
やっぱり役所広司さんは素晴らしい俳優さんだなって改めて感じる作品でした。
古書店のおばちゃんが好き
私には東京の美しさはわからない。日本人の中にも酷い人間はいるし、汚い風景も隠れてる。けれど、寡黙な男平山の日常に差す緑葉の木漏れ日や人々の喧噪、窓の色、ページをめくる摩擦音、そこに紛れるラジカセの音楽、全てが彼にとって愛おしい日常なんだということが伝わってきました。
私は小説が好きなので、古書店のおばちゃんの一語一句が毎回面白くて好きだった。パトリシア・ハウスミスは私も読んだことがあったので、「不安と恐怖は違う」というニュアンスの言葉に、確かに…とたったそれだけで共感めいた喜びが湧き上がってきた。いつもの人と店がいつまであるかわからないけれど、きっとその記憶は美しい思い出として残っていく。
役所広司さんだからこそ表情で魅せる演技、睡眠時のモノクロの継ぎ接ぎ、トイレでの顔の知らないゲーム相手に想像力が刺激された。あと、清掃員の助っ人女性(安藤玉恵さん)がプロフェッショナル感がでててかっこよかった。幸田文さんの「木」も読んでみたいなぁ。
超!余韻が残る映画でした!
凄く感じるものが多い映画でした。
まず日本の日常を非常にうまく切り取ってあることにビックリしました。まだ夜明け前の街を歩く学生服に身を包んだ女の子、子供のことで頭がいっぱいになってる礼を失した女性、まだ息づいてる下町文化etc…。何でジム・ベンダースがこんなに日本に精通してるのか、パンフレット買って確認しようと思っ出たんですが、、、パンフレット買うの忘れた。そして日本の清潔なトイレ文化も上手く捉えられています。
ささやかだけど満ち足りた生活を送る平山は仕事前に、いつも夜明けの空を見上げて笑顔になります。溜まらんな〜。私なんか出勤前は、いつも死んだような表情をしてるので、空を見上げて笑顔になるなんて経験、少なくともここ数年は無いですね(笑)
登場人物の背景は平山を筆頭に細部まで描かれません。でも上手く匂わせる。だから私達は、それを手掛かりにちょっと想像する余地があります。三浦友和の「何も分からないまま終わるんだな…」と言う呟きの重さに思わず「フー」とため息が出てしまいましたが、それに対して自分は「確かめてみましょう」と声をかけられるか?「影踏みしましょう」と声を掛けらるか? 自分のキャラじゃないと自覚しつつもそう言う人に憧れますよねー。結構そう言う人多いんじゃないでしょうか。だから朝、空を見上げて微笑む事と相まって平山の人間性が良く表れてる気がしたし、ちょっと羨ましいと思ってしまいました。
そしてキャスティングでも存分に楽しませてくれましたね。
「え!これ石川さゆりじゃね?」
石川さゆりだった。
「え!これ吉田類じゃね?」
吉田類じゃなかった汗(あがた森魚だった)
他にも研ナオコや片桐はいりや、他にも挙げきれない程、意外な人が意外な所で。そこら辺も存分に楽しめる映画でした。ジムベンダースのネームバリューが成せるわざでしょうか?とても満足できた映画でした。
名作の予感 パーフェクトを超えたものを観た
良い脚本、良い監督、良いカメラワーク、そして良い役者が揃うと、こんなにも素晴らしい映画が撮れるのか!それもたった16日で!
カンヌで作品自体の評価が「極めて抑制的に過ぎる」と言われたのも分からないではありません。主人公の平山は誰の問いかけにも言葉すら発しない時のほうが多いのです。目を伏したり、顔をを上げたり、その少しの所作で彼の反応を十二分に読み取ってしまうのは、役所広司の上手さは当たり前として、僕が日本人のメンタリティを持つからでしょうか。監督ヴィム・ヴェンンダースと彼が私淑した小津安二郎の関係性を指摘する評論家の方もいますが、まさにこうしたところに良く出ていると感じます。寡黙という所に主人公の複雑性を宿させるのは出世作「パリ・テキサス」に通じる手法かなとも思います。
平山は朝起きて布団を畳み、そして一連のルーティーンをこなして、そしていつも通り朝日の射す首都高を渋谷区のトイレ清掃に向かいます。彼の几帳面さは徹底した仕事ぶりにも表れ、まさにそれはパーフェクトな毎日です。
しかし、登る朝日は毎日違う朝日なのです。毎日小さな波紋があり、変化があり、小さな喜びと悲しみがある。代々木八幡の木漏れ日の写真を毎日撮り続けるという変わった趣味を持つのもまさにそれであって、その光と影はそこにとどまっていずに常にゆらゆらと動いているから面白いのではないでしょうか。その光と影が交錯するイメージはこの映画のストーリーと映像に反復されながら貫かれていて、映画というエンターテーメントの醍醐味をとことん楽しめる仕掛けになっています。
ラストの役所広司の顔の表情の大写し・長回しは圧巻です。それはただいつも通りの出勤の描写でしかありません。それなのに木漏れ日のようにたゆたう微妙な笑みと悲しみの表情は平山の生きてきたすべてを内包しています。ストーリーはたった10日前後の出来事ですが、描かれていない彼の長い人生のドラマをそこに想像させて涙を誘います。そしてその人生のドラマはそれを見ている「自分」そのものに容易に重ね合わせることができます。この生きづらい日々、毎日起こるちょっとしたハレーション、喜怒哀楽の日常こそ自分が選び取って引き受けてきた「パーフェクトな日々」だと気づかせてくれるのです。
渋谷区のトイレをおしゃれなものにするプロジェクトのPRのための企画からこのような傑作が生まれたのならば、この映画は「パーフェクト」を超越した邦画史上の「奇跡」かもしれません。
劇場に3回足を運びました。
#02 すべてがパーフェクトじゃないけど
テーマのつかみづらい映画。
スカイツリーを中心とした東京の情景の中に几帳面な清掃員の姿が描かれているのだが、テーマが明確ではない。姪っ子との会話で言わせた、世界は一つではない。。。無数にあり、つながりがない。。。とこだろうとは思う。ちょっと難しいかもね。佳作といったところ。
美しいものは絶望を遠ざける
15年以上前に読んだ子育ての本に「美しいものは絶望を遠ざける」という言葉があり、ずっと覚えていたのだが、まさにそれを体現したような作品であった。心に染みる音楽を聴き、空を見上げ木漏れ日に目を細め、生きる力を回復させる。作品に映画らしいスペクタクルはないが、ないことに徹するのもまた映画であろうと思った。
物語の舞台として東京の最新鋭の公共トイレが次々と登場し、これはトイレの宣伝なのかと思いながら観ていたが、本当に東京の公共トイレを刷新するプロジェクトが発端となっているとのことで、その意外な繋がりがまた面白いと思った。主人公が日々掃除するトイレがこれほどスタイリッシュでなければ、物語はこうも美しくはならなかったはずで、綺麗な公共トイレは世界を救ってくれる気がした。
時に涙ぐみ、薄笑いもある日常、それと背景、孤独
幸福とは何かを考える映画
主人公は安アパートに住みトイレ掃除を仕事とする寡黙な初老の独身男性。冒頭からその男(平山)の一日の様子が繰り返し映し出される。ほとんどセリフは無く、観客は何を観せられているのかわからない感じがする。
平凡な毎日で事件は起こりそうで結局は起こらない。姪の来訪やスナックのママの元夫の出現だけが変わった出来事。平凡で退屈な映画とも言えるが最後の「木漏れ日」のテロップでこの映画の主題がわかる。
人生は木漏れ日のように光と陰(影)が繰り返しおとずれる。光(幸せ)にも陰(不幸)にも濃淡がある。それは自然なことであり、それが人生なのだとこの映画は教えてくれる。
新旧の対比が面白い。スカイツリーと古いアパート、オシャレなトイレとそれを掃除する初老の男。
男は一人暮らしで孤独だけれども、周囲には知り合いが何人もいて決して辛くはない。古本屋、DPE屋、昔ながらの銭湯、旧式のコインランドリーなど昭和に囲まれている。極め付けはカセットの音楽。その中で暮らすことは平山にとってperfect daysなんだろう。最後の平山の顔を映す長いシーンでそれがわかる。
キャラクターは全然違うが、同じ役所広司が主人公の「素晴らしき世界」とどこか似ている気がした。
どういう気持ちで見たらいいのか・・
両親が観てとっても良かった!というので映画館へ、
60代70代の方が多く観に来てた印象。
日常淡々と系と聞いて、パターソンみたいな感じかな?と思ってたらそれともちょっと違う。
(パターソンは超綺麗な奥さんがいたしね)
夜寝る時の白黒の映像が、なんだか不穏。
これが幸せ、なのだろうか・・・諦めも感じる・・・
仕事をして、繰り返しの中で少し嬉しいことがあって、お金はあまり無いけど、毎朝缶コーヒーを買ったり銭湯に行ったり100円の古本を買ったりすることが幸せ・・
姪っ子と妹さんが帰っていったあとの孤独感がたまらない・・・
これ好きだったわよね、と渡されてたのは紅谷の紙袋じゃないだろうか、くるみっこで有名な・・・
だとしたら、鎌倉の山の上の豪邸だろうか・・・
行きつけのお店で顔見知りはいるようだけど、親しく交流してる人はいなそうで、やっぱりそれは寂しいんじゃないかなぁ・・・
最後の表情は、笑っているような、泣いているような、やっぱり諦めているような・・・
追記:やっぱりこれが幸せ、とは言ってないかな、曲を考えても。60代70代の方がこれを観て癒される、というのは、何かを諦めてたどり着いた年齢的なことがあって、私はまだそこへ辿り着いて無いので、うーんというところがあるのか、外国人監督が描く日本の、みたいなところでモヤモヤしてしまうのか。
ヴェンダース著「孤独のすすめ」
ヴェンダース著「孤独のすすめ」と言った印象。
ほぼ何のドラマもなく台詞もほとんど無いただ老年の男のルーティンが丁寧に描かれる
必要最低限の事以外何も語られず音楽も無駄に足さない
しかしスタンダード画格の映像の画の切り取りだけが抜群に美しく雄弁に物語る映画
男は木の葉の光と影を見続けているのだ、誰にも知られずに…
時代と逆行する様でありながらも現代の本質をついてる気がしましたとてもいい映画です。
ロールで退席しない様に…
日々訪れる小さな喜びを積み重ねる幸福
あんなにセリフが少ない映像の中でも、表情や動きで表現出来る役所広司さんが何とも素敵です。淡々とした日常の繰り返しの中で、自分の仕事であるトイレの清掃を黙々と丁寧に務める平山さん。そんな何の面白味も無いような日常でも、小さな喜びはいくつも存在します。木々を眺め写真に収めたり、迷子の少年との一瞬の出会い。同僚の幼なじみや女友達との出来事。仕事終わりの一杯。なじみの飲み屋のママの元旦那さまとの会話など。そして姪っ子ニコが家出したことからの日々と、ニコの母である自分の妹との再会。何でもないような出来事の中にも小さな喜びはたくさん有る。そして辛く悲しい出来事の中にだって隙間から射し込む光がきっと有る。そんなささやかな喜びを見い出し日々を生きる事の幸せ。それが今の最高の日々の送り方。そんなことをこの作品から感じ、教えてもらいました。麻生祐未さんの妹との会話で「ホントにトイレの掃除やってるの?」。きっと平山さんはそれまでとは全く違う生き方を今はしているのだろうな?そして今の日々がきっと大好きなんだろうな?そんなことを考えました。別れ際妹を抱きしめた後の平山さんの涙は、心ならずも疎遠になってしまった家族への溢れる想いだったかな。素敵な映画でした。
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